変形性膝関節症例のX線を診る際のポイント

変形性膝関節症
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前回は変形性膝関節症の分類についてご紹介いたしました.今回は変形性膝関節症例に理学療法を行う上ではX線から正確な情報を得ることが重要となります.今回は正面像・側面像・膝蓋骨軸位像・Rosenberg像の診方についてご紹介したいと思います.

目次

変形性膝関節症例における正面像の特徴

変形性膝関節症例における正面像の特徴としては以下のような特徴が重要です.

①骨棘形成

骨棘は変形性膝関節症例の代表的な骨構造の変化の1つですが,適応的な反応だということが重要です.骨棘が形成されることで関節面が広がり,関節の動揺性が少なくなります.よくある誤りですが骨棘があるから疼痛が出現するといった考え方は大きな誤りです.

②関節裂隙の狭小化

関節軟骨は画像上には写りませんので,通常は関節裂隙の広さを診ることで関節軟骨の厚さを推測します.正常では,関節裂隙は5~10mm程度ですが,5mm以下になると軟骨が摩耗していると考えることができます.また裂隙幅が2mm以下の場合には膝関節伸展可動域制限を生じている場合が少なくありません.臥位では関節裂隙が広がっていることがありますので,必ず荷重位での撮影が必要となります.

③軟骨下骨の骨硬化像

軟骨が摩耗し軟骨下骨に荷重に伴う力学的負荷が繰り返し加わると軟骨下骨が硬化します.X線上は輝度が高くなって現れますので,軟骨下の骨の輝度を確認することが重要です.

④FTA(大腿脛骨アライメント)

正面層からはFTA(Femorotibial angle)を測定することができます.FTA(大腿骨中央軸と脛骨中央軸の成す角度)を測定することで内反膝・外反膝といった脛骨大腿関節の静的アライメントを評価することが可能です.正常では166~179°ですが,180°以上となると内反膝165°以下になると外反膝と判断します.

⑤膝蓋骨の位置

正面像から膝蓋骨の位置をみることができます.大腿四頭筋の機能低下が続くと膝蓋骨低位を呈しますし,大腿四頭筋に短縮があると膝蓋骨高位を呈します.膝蓋骨高位・低位は膝関節可動域制限の原因にもなります.さらに膝蓋骨高位で大腿四頭筋が短縮位となると膝関節伸展筋力発揮も低下します.このように膝蓋骨のマルアライメントは様々な機能低下をもたらしますので,画像上でも膝蓋骨の位置を確認しておくことが重要です.膝蓋骨高位・低位の評価にはInsall-Salvati法が用いられますが,これについては側面像でご説明いたします.

 

変形性膝関節症例における側面像の特徴

①関節裂隙(膝蓋大腿関節)の狭小化

側面像では正面像では見ることのできない膝蓋大腿関節の関節裂隙を評価することができます.膝蓋大腿関節の変形性関節症を評価する上では側面像の評価が重要です.

②骨棘

正面像と同様に骨棘の有無を評価します.

③軟骨下骨の骨硬化像

これも正面像と同様ですが軟骨下骨の輝度変化を評価します.

④LT/LP ratio

Insall-Salvati法ではLT(length of tendon)とLP(length of patella)の比によって評価します.LT/LPの正常値は1.02±0.13ですが,LT/LPが1.20以上になると膝蓋骨高位,LT/LPが0.80以下になると膝蓋骨低位と判断します.

【新品】【本】極める変形性膝関節症の理学療法 保存的および術後理学療法の評価とそのアプローチ 斉藤秀之/常任編集 加藤浩/常任編集 山田英司/ゲスト編集

変形性膝関節症例における膝蓋骨軸位像の特徴

軸位像は正面像や側面像に比較して撮影されることが少ないですが,Skyline viewを使用した撮像が用いられます.撮影されていれば膝蓋骨の側方安定性を確認することができます.

①関節裂隙(膝蓋大腿関節)の狭小化

側面像と合わせて確認しておきたいです.

②膝蓋骨アライメント

膝蓋骨の脱臼傾向を評価することができます.若年女性に多い反復性膝蓋骨脱臼例では外側へ膝蓋骨が偏位していることが多いです.

③骨棘の有無

正面像・側面像と同様です.

 

Rosenberg像

変形性膝関節症例に対するX線撮影の中でRosenberg像といった特殊な撮像が行われることがあります(左上図).単純X線における正面像では内側関節裂隙の狭小化が明らかでないにもかかわらず,Rosenberg像では内側関節裂隙の狭小化が明らかです.実は変形性膝関節症が軽度な時期には半月板や残存軟骨によって膝関節伸展位では関節裂隙の狭小化ははっきりしないことが多いのです(軟骨摩耗は脛骨内側関節面の中央やや後方から始まる)が,Rosenberg像では残存軟骨や半月板の影響を受けにくく,膝関節の顆間窩部および関節裂隙の観察に有用とされております.

運動療法に役立つ単純X線像の読み方 [ 浅野昭裕 ]

今回は変形性膝関節症例に理学療法を行う上では必須となるX線の診方についてご紹介いたしました.画像から得られる情報は非常に多いので,画像から得られた情報を理学療法に生かせると良いですね.

 

参考文献
1)Insall J, et al: Patella position in the normal knee joint. Radiology 101-104: 101, 1971

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