立ち上がり動作を使った筋力評価~筋力測定機器が無くてもOK~

理学療法評価
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前回は筋力測定機器が無い場合に使用できる動作を使った筋力測定方法についてご紹介いたしました.今回は動作を使った筋力評価の中でも最も使用頻度が高い立ち上がり動作を使った脚伸展筋力の評価方法についてご紹介したいと思います.環境によっては筋力測定機器が使用できないといった場合も少なくないと思いますので,立ち上がり動作を使って筋力測定を行うことができれば有用です.非常に簡便に測定が可能ですので,介護予防における筋力評価や訪問リハビリにおける筋力評価にも生かせると思います.

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目次

立ち上がり動作を使った筋力評価の歴史

実は立ち上がりを使った筋力評価というのは,かなり古くから使用されているのです.椅子からの立ち上がりを使ったSit-to-stand test(STS test)は簡易な下肢筋力測定法として1980年代に報告され,現在も広く使用されております.STS testは下肢筋力との関連性が報告されており,STS testと転倒との関連についても報告があります.

 

Time protocolとnumber protocol

立ち上がり動作を使った筋力評価にはTime protocolとnumber protocolによる評価があります.time protocolというのはT回の起立-着座動作に要する時間を計測するものです.

5回立ち上がりテストなどがこのTime protocolに該当します.number protocolとういのはS秒間に可能な起立-着座回数を計測するものです.CS-30(Chair-standing 30seconds)やFrail CS-10等がこのnumber protocolに該当します.これらの方法には利点・欠点がそれぞれあります.Time protocolの大きな欠点として,床効果(T回繰り返せない対象者には使用できない)が生じやすいこと,集団を対象として同時に測定できないといった点が挙げられます.一方でNumber protocolは床効果が無く同時測定が可能なので集団指導に適する,高齢者の自己評価が容易といった利点があります.Number protocolの欠点としては時間が長いと高齢者には過負荷になるといった点です.CS-30は虚弱高齢者にとっては運動負荷が強すぎると感じることもしばしばです.

 

Chair Standing-30seconds(CS-30)

CS-30はJonesらが考案したテストであり,レッグプレスを用いた下肢筋力測定結果との相関が高く(r=0.71-0.78),下肢筋パワーの評価が可能であるとされております(ここで重要なのはあくまで筋力ではなく筋力に速度を乗じたパワーを測定する指標であるといった点です).日本人高齢者においても,その妥当性および信頼性が確認されております.また転倒予測におけるカットオフ値についても14.5回と報告されており,年代・性別毎の標準値も示されています.

前述したようにCS-30は運動負荷が強い場合が少なくありませんので,近年ではFrail CS-10が用いられることも増えております.CS-30では胸の前で手を組んで立ち上がり動作を行いますが,CS-10では膝の上に手を置くことが許されており,時間的にも3分の1なので運動負荷も軽く,虚弱高齢者にも実施しやすいのでお勧めです.

 

5回立ち上がりテスト

5回立ち座りテストでは立ち上がり5回に要する時間を測定します.5回立ち上がりテストに関しても下肢筋力測定結果との高い関連性が報告されており,5回立ち上がりテストが14秒または15秒以上かかる高齢者では転倒の危険性が高くなると報告されております.

年齢別の標準値も示されておりますので参考になります.

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今回は動作を使った筋力評価の中でも最も使用頻度が高い立ち上がり動作を使った脚伸展筋力の評価方法についてご紹介いたしました.これらの評価は標準値やカットオフ値が示されているので,評価を行った後の解釈もしやすいです.筋力評価の一つとしておさえておきたいですね.

 

参考文献

1)Csuka M, et al: Simple method for measurement of lower extremity muscle strength. Am J Med 78: 77-81, 1985
2)Lord SR, et al: Sit-to-stand performance depends on sensation, speed, balance, and psychological status in addition to strength in older people.. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 57: M539-43, 2002
3)Nevitt MC, et al: Risk factors for recurrent nonsyncopal falls. A prospective study. JAMA 12: 2663-2668, 1989
4)Goldberg A, et al: The five-times-sit-to-stand test: validity, reliability and detectable change in older females. Aging Clin Exp Res 24: 339-344, 2012
5)Jones CJ, et al: A 30-s chair-stand test as a measure of lower body strength in community-residing older adults. Res Q Exerc Sport 70: 113-119, 1999
6)中谷敏昭, 他: 30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30テスト)成績の加齢変化と標準値の作成. 臨床スポーツ医学 20: 349-355, 2003
7)村田伸, 他: 虚弱高齢者用10秒椅子立ち上がりテスト(Frail CS-10)の有用性の検討. 理学療法科学 25: 431-435, 2010
8)Buatois S, et al: Five times sit to stand test is a predictor of recurrent falls in healthy community-living subjects aged 65 and older. J Am Geriatr Soc 56: 1575-1577, 2008
9)Ikezoe T et al: Physical function screening of institutionalized elderly women to predict their risk of falling. jpn J Phys Fit Sport 58: 489-498, 2009

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