理学療法(リハビリ)に活かす大腿骨骨幹部骨折例に対する手術療法の知識

下肢骨折
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前回は大腿骨骨幹部骨折の特徴について紹介いたしました.

今回は大腿骨骨幹部骨折例に対する手術療法についてご紹介させていただきます.

大腿骨骨幹部骨折例に対する手術療法についてはここ数年で使用されるインプラントにも変化がありますので,理学療法を行う上でも最近の手術療法に関する考え方をおさえておく必要があります.

 

 

 

 

目次

 大腿骨骨幹部骨折例に対する手術療法 

若年者の骨折ではほとんどが保存療法の適応となり,牽引によって骨癒合を図ることが多いです.

一方で成人の場合には,骨癒合が得られるまでに長期間を要しますので,拘縮の発生や廃用性の筋力低下が懸念されるため,手術療法が選択されることがほとんどです.

成人における牽引治療は短縮・回旋変形・膝関節拘縮等の欠点がありますので,術前の待機期間に一時的に用いられる場合がほとんどです.

 

 

手術療法は髄内釘プレートによる固定の他に創外固定による骨接合術が行われます.

プレートによる固定では,手術侵襲が大きくなる傾向にあり,拘縮が重篤化しやすいといった特徴があります.

また骨膜を剥離して固定した場合には,骨癒合が得られにくくプレート除去後の再骨折が懸念されます.

加えて髄内釘に比較してプレートによる固定では骨癒合も不良であるとされます.

近年ではプレート固定による骨接合術は少なくなっておりますが,人工股関節全置換術後のステム周囲骨折の後などに使用されることがあるのでプレート固定の特徴も把握しておく必要があります.

 

 

骨折の機能解剖学的運動療法 その基礎から臨床まで 体幹・下肢

 

 

近年は大腿骨骨幹部骨折例に対する手術療法として髄内釘による骨接合術を推奨する報告が多く,特に横止めスクリューのあるInterlocking Nailが使用されることがほとんどです.

古くから用いられてきたKuntscher(キュンチャー)法による骨接合術では,横止めスクリューがありませんので回旋に対する制動性は低く,骨癒合が得られるまでは回旋ストレスに注意した運動療法が重要となります.しかしながらInterlocking Nail は回旋安定性が高く,関節可動域運動や荷重を考える上でも有利です.

Interlocking Nailに関しては骨折部の高さと骨折型によって,順行性髄内釘または逆行性髄内釘が用いられます.

現在のところ,順行性髄内釘と逆向性髄内釘を比較すると長期成績には明らかな差は無いと報告されております.

大腿骨骨幹部骨折治療においては,順行性髄内釘がgold standard でありますが,異所性骨化,外転筋力低下,牽引手術台使用に伴う煩雑さ,坐骨神経障害の可能性,他部位同時手術が困難であるといった問題があります.そのため近年では逆行性髄内釘の使用が増加しております.

逆行性髄内釘の明確な適応は今のところ明らかではありませんが,一般的な適応としては以下のようなものが挙げられます.

 

  • 大腿骨遠位部の骨折(関節内骨折の有無にかかわらず)
  • 同側の大腿骨骨幹部骨折・頚部骨折合併例
  • 肥満患者(梨状窩へのアプローチが困難)
  • 妊婦(放射線被爆時間の減少)
  • 同側の寛骨臼骨折,骨盤骨折合併例(近位へのアプローチは好ましくない)
  • 膝関節・脛骨骨折合併例(膝関節への同一のアプローチで可能)
  • 人工膝関節置換術後の大腿骨遠位部骨折,あるいは人工股関節置換術後の大腿骨骨幹部骨折等

髄内釘による骨接合術では骨折部位によって固定性が変化します.

大腿中央1/3と大腿遠位1/3・大腿近位1/3では髄腔の大きさが異なるので,同じ髄内釘を使用しても手術療法による固定性に差が生じます.

大腿中央1/3では髄腔が比較的狭いので,髄内釘による固定性は良好ですが,大腿近位1/3・大腿遠位1/3では髄腔が広がっておりますので,回旋力に対する安定性が低いといった特徴があります.

したがってまだ骨癒合が十分でない時期には,運動療法実施時に回旋ストレスを加えないように注意する必要があります.特にKuntscher法が実施されている場合には回旋安定性が低いので注意が必要です.

髄内釘による骨接合術では,骨皮質の50%以上が接触していれば術直後より全荷重が可能です.特にロッキングスクリューが2本使用されていれば,術直後からの全荷重歩行が可能なことが多いです(Interlocking Nailを用いた髄内釘治療では,荷重は骨折部の仮骨形成を促進し,骨癒合にとって有利に作用する可能性があります).

 

 

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 Dynamization(ダイナミゼーション)とは 

骨癒合が遅延していると判断される場合には,遠位あるいは近位の横止めスクリューを抜去し,骨折部に圧迫力を加える追加し骨癒合を促進する治療法(Dynamization)が行われることがあります.

術後10~12週と早期に行うことによって骨癒合率が高まるといった報告があります.

横骨折ではよい適応となりますが,斜骨折や粉砕骨折では不安定性が強くなることもあります.

 

 

 

今回は大腿骨骨幹部骨折例における手術療法についてご紹介いたしました.

術後の理学療法を考える上でもどういった手術が行われたのかを理解しておくことが重要です.

プレート固定,Kuntscher法,Interlocking Nail法では回旋安定性や荷重に対する考え方も異なりますので,今回ご紹介させていただいた知識を十分に整理しておくことが重要です.

 

 

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