膝蓋骨骨折の手術療法~ひまわりとお皿の関係とは~

下肢骨折
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前回は膝蓋骨骨折の特徴についてご紹介させていただきました.今回は膝蓋骨骨折に対する手術療法についてご紹介いたします.理学療法を行う上では膝蓋骨骨折に対する手術療法について十分に理解しておく必要があります.

目次

膝蓋骨骨折に対する手術療法

膝蓋骨骨折例に対する手術療法はさまざまな方法が考案されておりますが,頻度の高い横骨折や非転位型の粉砕骨折に対しては,Zuggurtlmg(ツークツガーツング)法が適応となります.

Zuggurtungはドイツ語でtension bandを意味します.

Zuggurtung法の基本原理は,骨折部に働く張力を圧迫力へ変換させる点です.Zuggurtung法では膝蓋骨上面の大腿四頭筋腱と膝蓋靱帯近位をワイヤーで縫合します.膝関節を屈曲すると膝蓋骨に離開方向への張力が加わるのですが,この張力がワイヤーを介して骨折部への圧迫力に変換され,骨折部位に圧迫力が加わります.また大腿骨の膝蓋骨関節面からは膝蓋骨に軸方向の圧が加わり骨折面が圧迫されることになります.これにより骨癒合が促進されるため,骨折部が不安定な場合を除いて,外固定の必要はなく,後療法では早期からの関節運動が可能となります.

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最近はひまわり締結法と呼ばれる方法による骨接合術が行われることもあります.Zuggurtung法では挿入したスクリューを縛って固定するのが一般的でしたが,粉砕した膝蓋骨は上下方向からの固定だけでは十分な固定性が得られない場合が多く,膝蓋骨周囲からさまざまな方向にスクリューを挿入して固定し,このスクリューにワイヤーを通して縛り上げて固定する方法がひまわり締結法です.つまりお皿をひまわりで固定してしまうわけです.

Zuggurtung法やひまわり締結法では基本的に抜釘が必要となります.膝蓋骨は皮膚からの距離も近くて浅いところに位置しておりますので,挿入した金属が接触し疼痛や違和感の原因になってしまうことも少なくありません。骨癒合の状況にもよりますが術後6カ月を目安に抜釘が行われることが多いです.

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Zuggurtung法・ひまわり締結法における膝関節屈曲角度と圧迫力

Zuggurtung法・ひまわり締結法では膝関節屈曲角度によって骨折部への圧迫力が変化します.膝関節屈曲0~30°では大腿四頭筋の作用が離開力として働きますが,屈曲30°以上になると圧迫力に変換されはじめ,60°以上になると大腿四頭筋の作用が圧迫力として働きます.したがって膝蓋骨の離開を防止しながら大腿四頭筋の運動を行わせるには,骨折面に圧迫力が加わる屈曲60°以上で行うことが重要となります.

 

参考文献

1)加藤竜一, 三上隆三, 他: 膝蓋骨骨折に対する機能的骨接合術 臨床および生体力学, 両側面からの検討. 整形外科 38: 936-941, 1987

2)大西弓恵, 他: 膝蓋骨骨折に対するZuggurtung法施行後の理学療法治療成績についての検討. 整形外科リハビリテーション研究会誌 8号: 64-66, 2005

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