MMTに関する誤解~これを知らないと恥ずかしいかも~

理学療法評価
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今回は徒手筋力測定における結果の解釈に関するよくある誤解についてご紹介いたします.

臨床実習生はもちろんですが免許を取得している理学療法士の方もこういった誤った解釈をされていることが多いので,短編ですがぜひ読んでいただきたいです.

 

目次

 MMT(Manua Muscle test):徒手筋力テストの判定方法 

MMTによる筋力の判定方法についての詳細は成書に譲りますが,MMTでは抗重力位で四肢を挙上できるかどうかで,筋力を判定していきます.

抵抗を加えることなく抗重力位で四肢を保持できればMMTが3(Fair)となるわけですが,このMMT 3というのは測定筋群によっても難易度が異なるといった点に注意が必要です.

例えば右大腿骨転子部骨折症例を対象にMMTを使用して筋力測定を行った際に,上の表のような結果が得られたとします.学生さんのためにですが,MMTの英語表記はおさえておきましょう

Z:Zero⇒0
T:Trace⇒1
P:Poor⇒2
F:Fair⇒3
G:Good⇒4
N:Normal⇒5

さて話は戻ってこの表を見て皆さんはどう解釈されるでしょうか?

右の股関節外転筋群の筋力が低下していると誰しもが思うと思います.

右の股関節外転筋力がPoor levelで左の股関節外転筋力がFair levelですので,低下しているといった解釈に間違いありません.

ここでよくありがちなのが他の筋群と比較して,この症例は左右ともに股関節外転筋群が弱いといった解釈をすることです.

確かに股関節外転筋群は左がPoorで右がFairで,他の筋群はGood~Normal levelですので左右ともに低いように見えます.

 

 

 MMTの結果は筋群間で比較できない 

ここで重要なのはMMTでは筋群間で比較を行うことができないということです.

MMTの測定を体験した方であれば経験があると思いますが,足関節背屈筋群のMMT Fair levelってそんなに頑張らなくても抗重力肢位を保持できますよね?

膝関節伸展筋群のMMT Fair levelに関しても抗重力位を保持するためにそんなに力は必要ありません.

しかしながら股関節外転筋群って健常者でもMMT Fair levelで抗重力位を保持するのにかなり大変だったと思います.

なぜこういったことが起こるのかといいますと,MMT Fair levelにおける筋活動の割合が筋群間で異なるためです.

足関節背屈筋群や膝関節伸展筋群はレバーアームが短いのでMMT Fair levelにおける抗重力肢位の保持に要する最大随意収縮に対する割合(%MVC)が10~20%程度で済むわけですが,股関節外転筋群に関しては対象者によっては40~50%にも達するわけです.

そもそもMMT Fair levelの筋活動割合つまり難易度が筋群間で違うのですね(足背屈<膝伸展<股外転).

 

したがって左右を比較して弱い強いといったことを考えることはできるわけですが,そもそも難易度が異なるので筋群間で比較して特に股関節外転筋力が弱いといった解釈をすることは難しいわけです.

上の表のようにさまざまな筋群におけるMMTの結果が並んでいるとついつい筋群間で比較をしてしまいがちですが注意が必要です.では筋群間で比較をするにはどうすればよいかという話になりますが,結論から言うとMMTでは筋群間での比較は難しいと思います.

Hand Held Dynamometerなどの筋力測定機器を使用して正常値と比較した際に,股関節外転筋力のみが正常値と乖離していれば,特に股関節外転筋力が弱いということができるでしょう.

今回はMMTの結果の解釈における誤解についてご紹介いたしました.今から実習が始まる学生さんはもちろん有資格者の方にも是非知っておいていただきたい内容です.

 

参考文献
1)平木幸治, 山崎裕司, 他: 膝伸展筋の徒手筋力検査値と膝伸展ピークトルク値の関連. 総合リハビリテーション 31: 785-790, 2003

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