目次
なぜ介護予防に体操なのか?
介護予防に向けて全国の多くの地域の通いの場で,様々な体操が行われております.
理学療法士の視点からすると,特に音楽に合わせて運動するような体操では,正しく運動ができないのではといった思いを抱く方も多いと思いますし,DVDを流してしまえば終わってしまうような状況の中で,われわれ専門職としての理学療法士の役割は何なのかと私自身も考えたりしました.
従来の介護予防事業ではわれわれ理学療法士が住民に個別指導を行っておりましたが,今後求められる介護予防事業の形は,右のような住民主体の介護予防の形です.
つまりわれわれ専門職は住民サポーターを要請し,住民サポーターが体操を広めるといった形です.
なぜ介護予防に体操が用いられるかというと理由は簡単です.
高齢者自身でも取り組むことができるからです.
現在の国・市町の財政状況を考えますと,数多く存在する通いの場に毎回われわれ理学療法士が出向いて運動指導をするというのは現実的ではありません.
また高齢者の方々には自身の意思で介護予防に努めるといった意識を持っていただくことが非常に重要だと考えております.
現在行われている通いの場では,小さい集落の高齢者が複数人集まり,そこで活動が行われております.
高齢者だけで運動に取り組めるというのは経済的に考えても非常に効率的です.
DVDプレイヤーとテレビがあれば体操ができますし,グループのリーダー格の方が体操をある程度習得されれば,音楽だけでも体操ができるわけです.
通いの場の役割とは?
通いの場の役割というのは何も運動をすることだけではありません.
通いの場に参加することで,普段一日中テレビを観て過ごしている高齢者にも交流の場が生まれたり,何より住み慣れた地域に居場所があることを実感できることは健康で幸せな暮らしを継続していくためには,何より大切なことです.
実際に通いの場で運動指導を行っておりますと,運動が終わった後も残って,皆が笑って話をして過ごされております.また通いの場で仲間と触れ合うことで様々な役割を得ることができます.
私が関わっている通いの場でリーダーをされている方は本当に生き生きされております.さらに通いの場が充実したものとなれば,住民間での支え合いの関係(互助)ができていきます.
このように,通いの場というのは単に運動を行う場にとどまるものではなく,さまざまな役割をもった場であることを理学療法士も認識しておく必要があります.
いきいき百歳体操とは?
通いの場で行われる体操には様々な体操があります.
最近ではご当地体操も多く作成されており,高齢者が暮らす地域に根付いた体操が高齢者の体操に取り組む意欲を向上させております.
そんな中でも最も広く使用されている体操がいきいき百歳体操です.
いきいき百
柔軟体操と筋力運動を2本柱とした運動ですが,非常に単純でゆっくりとした体操であるというのが大きな特徴です.
特別な運動は無く初めての高齢者でも取り組むことができるというのが,ここまで体操が普及した理由の一つだと思います.
通いの場の本質的な意義を考えれば,体操は何でもよいのかもしれません…
ただ運動の専門家である理学療法士としてはどうせ実施するのであれば効果的な体操を行ってほしいといった思いがあります.
以前の記事でもご紹介いたしましたが,科学的には筋力トレーニング単独では転倒予防効果は得られませんので,様々な種類の運動(特にバランストレーニング)を行うことが重要だと思います.
いきいき百歳体操は筋力トレーニングが主体の運動ですので,この運動を主体に何かしらのバランストレーニングを加えることができれば,転倒予防を図る上でも効果が高まるのだと思います.
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