今回からは代表的な高齢者の骨脆弱性骨折として大腿骨近位部骨折と同様に非常に多い脊椎圧迫骨折についてご紹介させていただきます.
まずは脊椎圧迫骨折の疫学的なデータについてご紹介いたします.
目次
脊椎圧迫骨折がどのくらい多いのか?
日本人の脊椎圧迫骨折の有病率は60 歳代では 8~13%,70 歳代は 30~40% と年齢とともに増加していきます.
特に70 歳を越えると急激に増加し,多椎体の骨折例の割合も増えるのが特徴です.
実は脊椎圧迫骨折に関しては全国的な大規模疫学調査が存在しません.
なぜかというと脊椎圧迫骨折を受傷しても医療機関を受診せず済むことも多いこと,「いつの間にか骨折」と呼ばれるように,気付かないうちに骨折をしてしまっていたということがしばしばだからです.
しかしながら骨粗鬆症を基盤とする骨折のうち,実は脊椎圧迫骨折発生率が最も高いのです.
一方で無症状で骨折を起こしている場合が全骨折の2/3を占めるため,大腿骨骨折に比較すればあまり多いといった印象をけないかもしれません.
人種間の比較では,アジア人は欧米白人に比べて有病率は低いという報告がある一方で,あまり変わらないといった報告もあり,一定の見解が得られていません.
これは調査により診断基準が異なるのも一つの理由だとされております.
また骨折リスクは既存椎体骨折が1椎あると3倍,2椎あると10倍に上がるとされており,受傷した椎体の隣接する上下の椎体骨折のリスクが非常に高いことが明らかにされております.
なぜ隣接する上下椎体骨折のリスクが高いかというと
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レバーアームが長くなる
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椎体骨折後に椎体間の不動化が起こる
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上下椎体に過剰な運動が強いられる
特に胸腰椎移行部や中位胸椎部には,圧迫骨折が続発して生じることも少なくありません.
体重と骨折との関連も重要で,体重が増加するにつれて骨棘の面積は増大し,変形性脊椎症になりやすいのです.一方で体重が減少すると,骨量が減少し骨粗鬆症を合併しやすいのです.つまりやせている方は特に注意が必要です.
好発部位は?
脊椎圧迫骨折の好発部位は第11胸椎~第2腰椎の間ですが,中でも第12胸椎・第1腰椎の骨折が最も遠いと言われております.原因としては以下の3つが挙げられます.
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脊椎の生理的弯曲の移行部であるため
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脊椎回旋の可動域が大きい部位であるため
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脊柱起立筋の保護作用の脆弱部であるため
骨粗鬆症を原因とした脊椎圧迫骨折の病態理解と運動療法 [ 赤羽根良和 ]
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参考文献
1)SakumaM: Incidence and outcome of osteoporosis fractutures in 2004 in sado City, NIigata prefecture in Japan. J Bone Mine rMetab26: 373-378, 2008
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