目次
転倒予防にはバランス運動・バランストレーニングが重要
前回は転倒予防を図る上では複合的なトレーニングが有効であるということをご紹介いたしました.
またバランストレーニングが特に重要であることをご紹介いたしました.
転倒予防におけるバランス機能評価
筋力トレーニング・ストレッチ・有酸素運動など単一の種類の運動では十分な転倒予防効果は得られないというのが現在のところの結論となっておりますが,バランストレーニングに関しては唯一,単独でも転倒予防効果が確認されております.
つまり転倒予防を図る上ではバランストレーニングを実施することが必須であると考えられます.われわれ理学療法士の介護予防事業におけるIdentityの1つは対象者の評価をきちんと行えるというところだと思います.
バランストレーニングを行うからには,当然ながらバランスの評価も並行して行うことが重要となります.
実は世界的にも転倒スクリーニングにおいてはバランス評価は非常に重要視されておりまして,米国老年医学会(AGS)の転倒スクリーニング・米国疾病予防管理センター(CDC)の転倒スクリーニングのいずれもがスクリーニングの中に多くのバランス評価を含めております.
米国老年医学会(AGS)の転倒スクリーニング
バランス機能評価は上位に挙げられており, 評価法はTimed up and go test(TUG), Berg balance Scale(BBS), Performance oriented mobility assessment(POMA)を推奨
米国疾病予防管理センター(CDC)の転倒スクリーニング
バランス評価を転倒スクリーニングの上位に挙げ, TUG, 4 stage balance testを評価方法として推奨
バランス機能は低下しやすい
運動機能には柔軟性・筋力・敏捷性・持久力・瞬発力・平衡機能など様々な能力が含まれます.
様々な運動機能の中で最も加齢に伴う低下が著しいのがバランス機能なのです.
上のグラフを見ていただくとわかるように,バランス機能は他の運動機能に比べて低下の程度が著しいわけです.
ですので加齢に伴うバランス機能を正確に評価することが重要となります.
バランス機能の評価 単一動作課題と複数動作課題
バランス機能評価には数多くの方法が報告されております.
大きく分類すると単一動作課題を使ってバランス評価を行う方法と,複数動作課題を使って評価を行う方法に分類できます.
当然ながら単一動作課題については検査が短時間で終わりますが,複数動作課題については検査に時間がかかるといった特徴が挙げられます.
一方で複数動作課題についてはバランスを様々な観点から評価でき,総合的にバランス評価ができるといった利点があります.
単一動作課題・複数動作課題を使用したバランス機能評価のカットオフ値・感度・特異度を表にまとめました.
これだけ多くの評価方法がありますので,それぞれの特徴を十分に把握した上でバランス機能評価を選択することが重要だと思います.
どのバランス評価が使用されることが多いか?
ちなみに日本でどのバランス評価が用いられているかを望月久先生が調査されております.
臨床では評価に時間がかからない単一動作課題が用いられることが多いといった結果でありますが, あくまでバランス機能の一側面しか評価できないという点に注意が必要です.
今回は転倒予防におけるバランス評価の重要性についてご紹介いたしました.
介護予防・転倒予防において理学療法士が介入する場合には,バランス評価は必須となります.
どのバランス評価を選択するかについては対象者の機能レベルによっても異なりますが,まずはどういったバランス評価方法があるのか,バランスの捉え方について十分な知識を持っておくことが重要だと思います.
次回はバランスの捉え方についてご紹介したいと思います.
参考文献
1)木村みかさ:高齢者への運動負荷と体力の老化変化及び運動習慣.J J Sports Sci 10: 722-729, 1991
2)望月久: 臨床的バランス能力評価指標に関するアンケート調査報告. 理学療法科学24: 205-213, 2003
コメント