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深部静脈血栓症の予防
大腿骨近位部骨折に限らず深部静脈血栓症は整形外科における手術後に起こりやすい合併症の1つです.
また深部静脈血栓症は致死的な肺血栓塞栓症を引き起こす可能性があるため,整形外科領域の合併症の中でも最も怖い合併症の1つです.
看護やリハビリテーション(理学療法・作業療法)を行う上でも,その予防が重要となります.医師以上に看護師や理学療法士による予防的介入が重要となります.
今回は深部静脈血栓症について考えてみたいと思います.
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代表的な整形外科手術後の深部静脈血栓症の発症率
大腿骨近位部骨折・人工股関節全置換術・人工膝関節全置換術の3つの手術における深部静脈血栓症の発症率は以下の通りです.
大腿骨近位部骨折:46~60%
人工股関節全置換術:42~57%
人工膝関節全置換術:41~85%
実は人工膝関節全置換術後の深部静脈血栓症が最も発症率が高いとされておりますが,これは人工膝関節全置換術では手術部位の近位・遠位をともに駆血するため,血流がより鬱滞しやすく血栓が形成されやすいとされております.
先日の記事にも書きましたが深部静脈血栓症は予防がとにかく重要です.
深部静脈血栓症予防のためのアプローチとして,以下の6つが挙げられますが,理学療法士にとっては⑤足関節自動運動と⑥早期離床がとりわけ重要となります.
①弾性ストッキング
②間歇的空気圧迫法
③抗凝固療法
④脱水予防
⑤足関節運動
⑥早期離床
足関節運動による深部静脈血栓症の予防的リハビリ
足関節運動の深部静脈血栓症の予防に有効だということは多くの論文で明らかにされております.
足関節運動を行う場合には,他動運動よりも自動運動が,自動運動(負荷無し)よりも自動運動(等張性負荷あり)が有効だとされております.
実際に足関節運動を行ったと際の大腿静脈流速は自動運動(等張性負荷あり)で最も速くなることが明らかにされており,深部静脈血栓症を予防する上では,徒手にて軽い負荷を加え底背屈運動を行わせることが有効です.
また足関節自動運動というと背屈運動ばかりが強調されがちですが,ヒラメ筋静脈の流速を上げる上では,ヒラメ筋を活動させることが重要です.
つまり底屈運動をしっかりと行わせることが非常に重要となります.深部静脈血栓症を予防するために足関節自動運動を指導する時によくあるのは,「足首しっかり動かしておいてくださいね」といった指導が多いと思います.
しかしながらこれでは底屈筋群はほとんど活動しません.
また運動が足関節ではなく足趾のみに限定されている場合も少なくありませんので,距腿関節を大きく動かすことが重要であるといった点を強調して指導する必要があります.
早期離床による深部静脈血栓症の予防的リハビリ
深部静脈血栓症を予防するためには,ヒラメ筋静脈の流速を上げることが重要ですが,術後は早期に離床・荷重歩行を進め,下腿三頭筋の筋収縮による筋ポンプ作用を働かせることが最も効果的な深部静脈血栓症の予防戦略となります.
立位や歩行によって足底部への荷重負荷によるvenous foot pumpが活性化されますので,足関節運動よりも重要なのは立位・歩行による荷重刺激だということを忘れてはなりません.
足関節運動(他動)<足関節運動(自動)<足関節運動(抵抗)<荷重歩行
術当日の離床による深部静脈血栓症予防に有効
深部静脈血栓症の予防に関して面白い論文があります.
簡単に説明いたしますと,人工膝関節全置換術後当日に立位保持を行うと,坐位・臥位の群よりもDダイマーが有意に低値であり,深部静脈血栓症の発症率が有意に低くなったといったものです(歩行獲得や在院期間といったアウトカムには差は無いようです).
術後当日に離床を行うのはなかなか難しいと思いますが,この論文から学べることはできるだけ早く立位・歩行を開始するといったことが非常に重要だということです.
最近,あまり早い時期から立位や歩行を進めると,筋緊張が増大するとか,誤った動作パターンを学習してしまうといったような考え方をする理学療法士もいるようですが,深部静脈血栓症の予防を考える上ではとにかく早く離床が必要であるということですね.
また早期に離床を行うためにも,術前待期期間を短縮させる取り組みも重要ですね.
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血栓ができてしまったときには,どこに血栓があるかを確認することも重要ですね.
また血栓の存在部位によって近位型(中枢型:腸骨型と大腿型、膝窩は中枢に含む)と遠位型(末梢型:下腿限局型)に分類されますので,理学療法を行う上では血栓の存在部位を確認することも重要ですね.
参考文献
1)Greerts:Prevention of venous thromboembolism: American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines.CHEST133(6 Suppl):381S-453S,2008
2)飛山義憲,人工膝関節置換術当日における立位保持が運動機能の改善や深部静脈血栓症の予防に与える影響,理学療法学,2014
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