浮腫と腫張の違い,癒着とは?

大腿骨近位部骨折
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目次

 大腿骨転子部骨折のリハビリ・看護における浮腫 

大腿骨転子部骨折の看護やリハビリを行う上で大きな問題になるのが,浮腫や腫張です.浮腫や腫張が続くと疼痛の原因になるばかりか,可動域制限を引き起こす癒着の原因にもなりますので,リハビリ(理学療法・作業療法)を通じて浮腫の改善を図ることも非常に重要です.

今回は大腿骨転子部骨折例に起こりやすい大腿部の浮腫とそれに伴う癒着について考えてみたいと思います.

 

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 大腿骨転子部骨折例は大腿部の浮腫が強い 

以前の記事で大腿骨転子部骨折は,骨折に伴う出血量が多く,この出血の大腿部への浸潤によって大腿部に浮腫が生じやすいということをご紹介いたしました.

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骨折直後は骨折に伴う出血成分は骨折周囲にとどまりますが,時間経過とともに大腿部へ浸潤します(下腿は弾性ストッキングを装着することがほとんどですので大腿部へ出血成分が貯留し大腿部が腫れた状況が起こります).

骨折後は臥位姿勢を強いられることがほとんどですので出血成分は大腿部の中でも後面へ浸潤していることがほとんどです.

ですので大腿骨転子部骨折例の内出血の状況を確認する場合には大腿後面を確認すると良いでしょう.

 

 大腿骨転子部骨折例の腫れは浮腫?それとも腫張?原因は? 

どちらでもいいじゃないかと思われる方もおられるかもしれませんが物理療法(温熱療法)を実施する上では「浮腫」と「腫張」の違いをきちんと理解しておくことが重要です.

はじめに浮腫というのは血液中の体液が血管外に漏れ出るなどし,血管外皮下組織に溜まった状態を指します.

血管外に血漿成分が漏出する原因は様々ですが,低栄養や心臓・腎臓・肝臓などの機能低下によっても浮腫が生じます.

大腿骨転子部骨折例の場合は多くが,骨折による出血が大腿部まで浸潤して,血管外の皮下組織に血漿成分が貯留しているということがほとんどです.

ここで重要なのは浮腫の場合は血管外の反応であるといった点が非常に重要です.

 

一方で腫張というのは炎症の5徴候(疼痛・発赤・熱感・機能障害・腫張)の1つであったと思いますが,血管が拡張し血液が血管内に貯留した状態を指します.

つまり血管内の反応ということになります.

一般的な見分け方としては腫張の場合には,熱感・発赤・疼痛等の他の炎症症状を合併していることがほとんどなので,他の兆候を確認することが重要となります.

浮腫にも様々な種類がありますが,一般的には皮膚に光沢を持ち,皮膚を圧迫すると皮膚がへこんで圧痕ができるというのも浮腫の大きな特徴です.

大腿骨転子部骨折例の腫れについて考えてみますと,骨折部周囲は当然炎症症状を伴っておりますので急性期には血管が拡張し腫張が生じていることになりますが,大腿部は出血に伴う血漿成分により腫れているだけですので血管外の反応であり,これは浮腫としてとらえることができます.

 

 腫れに対する物理療法 

理学療法士が頻繁に用いる温熱療法ですが,腫張を合併している時には基本的には禁忌となります.

これは温熱刺激が血管拡張を増強し,炎症反応を助長してしまうからです.

ですので当然急性期には骨折部周囲に温熱療法を実施することは少ないわけですが,大腿部に関しては浮腫ですので血管が拡張しているわけではありません.

ですので温熱療法を大腿部に施すというのは間違いではないということになります.

 

 腫張・浮腫が起こっている時には癒着にも注意 

浮腫が起こっている時に気を付けなければならないのは線維化が進んで組織間の癒着が生じやすいといった点です.

骨折や手術によって侵襲を受けた軟部組織は炎症過程を経て修復されます.組織の修復過程では線維芽細胞が増殖して損傷部位の隙間を埋めながら接着することで肉芽組織が形成されるのですが,最終的に瘢痕組織へ置換されることで修復過程は終了します.

 

 

 

 

この過程で生じる組織間の瘢痕形成を癒着とよびます.

隣接組織間で癒着が生じると,組織間の滑走性の低下を招き,関節可動域制限の原因となる.また組織間に癒着が存在すると筋収縮による張力が遠位部へ伝搬しないため筋力低下の原因ともなります.

浮腫は線維化を助長させ癒着を進行させる原因となりますので,早期から浮腫に対してアプローチすることが重要となります.

 

 癒着って何? 

癒着というとイメージがわきにくいかもしれませんが,簡単なのは手掌部と手背部の皮膚の動きを確認することです.手掌部は手掌腱膜で皮膚が結合されておりますので,皮膚が骨の上で動きにくいのがわかると思いますが,一方で手背部は皮膚が骨の上で上下左右に動くのがわかると思います.

 

 

 

 

 

通常大腿部の皮膚は筋肉の上で動くのですが,浮腫に伴い癒着が進行すると大腿部の皮下組織(膝蓋上嚢・大腿骨前脂肪体・膝蓋骨上脂肪体等)の滑走性が低下し,可動域制限や筋力低下を引き起こしてしまいます.

今回は浮腫・腫張そして癒着について紹介させていただきました.

 

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大腿骨骨折に限らず,運動器疾患の理学療法を行う上ではこのあたりの知識を整理しておくことは重要だと思いますので,きっちりとおさえておきたいですね.

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