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今後,回復期リハビリテーション病棟はかなり縮小される?
昨今の診療報酬改定で多くのメスが投入されているのが,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の勤務先の大部分を占める回復期リハビリテーション病棟です.
今回は再生医療との関連から今後の回復期リハビリテーション病棟について考えてみたいと思います.
診療報酬改定による回復期リハビリテーション病棟への影響
皆様もご承知の通り,診療報酬改訂の度に回復期リハビリテーション病棟の施設基準というのは大きな変化があります.
流れとしては人的資源を投入して手厚く介入をしている回復期リハビリテーション病棟が評価される一方で,こじんまりと運営をしているいわゆる「なんちゃって回復期リハビリ病棟」に対する評価は厳しくなっております.
また大きな変化としては,回復期リハビリテーション病棟は量的には増加が著しく充実が図られていることから,質の評価(アウトカム)が問われています.
平成30年度診療報酬改定では回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリのアウトカム評価の推進を図る観点から,①基本的な医療の評価部分と②診療実績に応じた段階的な評価部分を組み合わせた評価体系に再編・統合が図られました.
日常生活動作能力の変化量(FIMで評価)によって算出される実績指数27を基準として,実績指数を下回る場合は6単位以上を実施した場合には包括となります.
入院料も6段階となり,大手の回復期リハビリテーション病棟と小規模に運営をしている回復期リハビリテーション病棟とで差別化が図られたわけです.
つまりこれまで回復期リハビリテーション病棟の主対象疾患であった脳血管障害に対しては医療保険で9単位までの請求が認められていたわけですが,この実績指数が条件を満たさない場合には,6単位までしかリハビリテーション料を算定することができなくなったわけです.
もっとわかりやすく言えば,この実績指数の条件を満たせなければ,3分の1の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の仕事がなくなってしまう,正確には仕事をしても収益にならないということになります.
実際に法人内で訪問リハビリテーションを拡充し,施設内にあったマンパワーを訪問リハビリテーションに移行した回復期リハビリテーション病棟は少なくありません.
施設内の仕事がなくなったから外への事業を拡充し,マンパワーを移行したということです.
実はこれは回復期リハビリテーション病棟での過剰なサービス供給と訪問リハビリテーションにおけるサービス不足とのバランスをとりたいといった厚生労働省の思惑通りだったりします.
このように現状でも回復期リハビリテーション病棟における理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の置かれた立場は以前に比較すると厳しいものになっていると考えられます.
再生医療の進歩
回復期リハビリテーションの今後を決定付けそうなのが再生医療の進歩です.
私自身も一昨年の日本理学療法学術大会で講演を拝聴いたしましたが,札幌医科大学神経再生医療科が開発した骨髄幹細胞静脈投与は脳梗塞や脳梗塞後遺症に対する医療を根本的に変化させる可能性が高いです.
これまで理学療法・作業療法の領域では,さまざまな運動麻痺の促通法が報告されてきましたが,私が拝聴した講演を見る限りそういったテクニックによる改善なんて比ではありません.
完全麻痺で随意性の無い上肢が点滴治療によって数日で随意性を取り戻します.
イメージ的にはBrunnstrom Recovery StageがⅠレベルであったかたの上肢機能がⅣレベルまで改善するといったイメージです.
これって今までの後遺症ありきであった今までの脳卒中のリハビリテーションの医学モデルでは考えられません.
この骨髄幹細胞静脈投与では,自分の骨髄の中にある幹細胞を培養して増やし,通常の点滴の要領で静脈内に戻すことで運動麻痺や言語障害などの後遺障害の軽減を目指すとされており,治験も進んでおります.
これまでに無作為化比較試験もいくつか行われておりますが,効果もめざましく,驚くべきは発症から数か月が経過している脳梗塞例であっても急速に運動機能の改善が得られるといった点です.
こういった再生医療の進歩は何を意味するでしょうか?
理学療法・作業療法・言語聴覚療法は必要なくなるか?
こういった再生医療が進むと理学療法・作業療法・言語聴覚療法は必要なくなるでしょうか?
答えはNoです.
再適応するまでの支援は必要でしょうから,理学療法・作業療法・言語聴覚療法が全く不要になるということは無いと思います.
しかしながら確実なのは理学療法・作業療法・言語聴覚療法が必要な期間が劇的に短くなるということです.
現在は診療報酬では発症や手術から最大で180日間リハビリテーション料を算定できるわけですが,こういった長い期間は不要になると考えられます.
厚生労働省は再生医療の普及とともに脳血管疾患のリハビリテーション料が算定可能な期間を短縮させ,大きく医療費を軽減できると考えているに違いありません.
今のところ脳卒中リハビリテーションの流れは,急性期⇒回復期⇒生活期といった流れになっておりますが,急性期⇒生活期の流れになる可能性が高いと考えられます.
また生活期も以前ほど重度なクライアントが少なくなれば,保険サービスではなく最近増えている自費サービスでということになる可能性もあると考えます.
つまり医療保険適応となるのは急性期のみといった可能性も将来的には考えられます.
現在のところ,理学療法・作業療法・言語聴覚療法の最も多い対象は脳卒中後遺症です.
再生医療が進むということは・・・そういうことです.
われわれの仕事はかなり減ってしまうでしょうね.
実はこの部分と理学療法士養成数が過剰であることや介護福祉士が不足していることが介護福祉士とのダブルライセンス制なんかと絡んでくるわけですが,今回はややこしくなるので割愛いたします.
特に回復期リハビリテーション病棟へ勤務されている方は,再生医療の進歩にも着目し,今後を見直す必要があるかもしれません.
回復期リハビリテーション病棟からの転職も
再生医療の進歩は予想以上です.
そう考えると今後,最も運営が厳しくなるのは回復期リハビリテーション病棟であることは間違いありません.
回復期リハビリテーション病院って理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の数も多く,教育体制もしっかりとしているところが多いので,数年前までは新人理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の人気就職先の第1位であったと思います.
比較的ゆっくりとクライアントに対応できるというのも回復期リハビリテーション病棟の魅力だと思います.
ただ今後を考えると,改めて急性期・生活期への転職を考える必要があると思います.
年度末になりましたが退職者が出ることが年明けにわかり,今から求人情報を出す施設も少なくありません.
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もちろん急性期・生活期の求人も多くあります.
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ここは非常に求人数も多く,希望する転職先の情報を細かく登録できるのでお勧めです.
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急性期・生活期の求人を希望するとチェックしておけば,自分の働きたい病期の求人情報を紹介してくださいます.
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回復期リハビリテーション病棟が完全になくなるというのは言い過ぎかもしれませんが,回復期リハビリテーション病棟の需要が減少することには間違いありません.
そうなると当然ながら回復期リハビリテーション病棟へ勤務する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は職を失うことにもなりかねません.
余計なお世話かもしれませんが,これを機会にご自身の身の振り方を考えてみてはいかがでしょうか?
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