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理学療法士・作業療法士の給与は安いのか?
われわれ理学療法士・作業療法士は給与のためだけに働いているわけではありませんが,適切な報酬を頂けないと勤務意欲も低下してしまいますし,離職する人も増えてしまうでしょう.
日本の理学療法士・作業療法士の給与は海外の理学療法士に比較するとかなり安いといった議論がなされますが,そもそも資格を取得するに至るまでの過程も全く異なるので比較すること自体が難しい気がします.
今回は誰もが気になる理学療法士・作業療法士の給与について2016年の理学療法白書を元に考えてみたいと思います.
理学療法士の給与
このグラフは2年目以上の理学療法士の給与をヒストグラムにまとめたものです.
最も多いのは401万円~450万円ですが,そもそも年齢や勤務年数が明らかにされておりませんので,このグラフの数値をどうとらえるかというのは非常に難しいところです.
ただ全ての理学療法士の中で最も多いのは400万円台の給与で勤務している理学療法士であるといった事実です.
200万円未満の給与の理学療法士も散見されますが,これはパート等の勤務体系も含むためです.
一方で少数ですが1000万円を超える給与をもらう理学療法士もいるわけです.大学教授が大半だと思われます.
他職種の給与
海外の理学療法士と日本の理学療法士の給与を比較すること自体に無理があると思いますので,他職種との給与と比較しながら考えてみたいと思います.
医師の給与
医師の給与は言うまでもなく医療の中でも最も高く,36~40歳で100万円強となっております.
そもそも6年制の過程を経ておりますし,医師の過酷な働き方を見ていれば理学療法士・作業療法士よりも給与が多くとも当然だと思ってしまいます.
ですので医師と単純比較するのも無理があると思います.
看護師の給与
看護師の給与は36~40歳で35万円弱です.
看護師の仕事の大きな特徴は夜勤があるといった点です.
月の夜勤手当だけで5万円給与が上乗せされるといった場合も少なくないと思います.
理学療法士や作業療法士には夜勤が無いわけですので,これまた理学療法士・作業療法士と看護師の給与を比較すること自体に無理があると思います.
薬剤師の給与
薬剤師の36~40歳の給与は38万円程度です.
薬剤師の場合には看護師のように一月に何回も夜勤があるといったことはないと思いますが,薬剤師の養成課程は現在は6年制教育課程となっておりますので,やはり単純比較はできません.
診療放射線技師の給与
診療放射線技師の養成課程は専門学校・4年制大学と理学療法士や作業療法士の養成課程によく似ています.
また夜勤の頻度も月に数回ということを考えれば比較対象としては適切だと思いますが,36~40歳で38万円程度と,先の薬剤師と同等の給与となっております.
これは養成課程が短いといった点を考えれば給与が高いという見方もできると思いますが,実は危険手当や被曝手当が含まれている場合も多く,これが診療放射線技師の大きな特徴であります.
臨床検査技師の給与
これは臨床検査技師の給与です.臨床検査技師の夜勤の頻度も薬剤師や診療放射線技師と同程度です.
養成課程も専門学校・4年制大学と理学療法士・作業療法士と類似しておりますので,比較対象としては最も適切だと思いますが,36~40歳で33万円程度となっております.
理学療法士の給与
さて気になる理学療法士の給与ですが,36~40歳で32万円程度で,先の診療放射線技師よりも5万円少なく,臨床検査技師と同等といった状況です.
作業療法士の給与
作業療法士の給与は理学療法士よりもさらに安く36~40歳で31万円となっております.
しかしながらここ数年は作業療法士は全国的に不足しており,首都圏では作業療法士の雇用を確保するために作業療法士のみに資格手当を高く設定する医療機関も増えてきております.
理学療法士・作業療法士の給与は安いのか?
まとめると勤務体系や養成課程が類似した診療放射線技師や臨床検査技師と大きな差は無く,個人的な意見ですが理学療法士・作業療法士の給与は決して安いというわけではないと思います.
そもそも医療職の給与が安いのかどうかといった議論もあると思いますが,ノルマや結果に終われる企業で働くサラリーマンに比較すれば明確なノルマがあるわけではなく,比較的ストレスなく働ける職業だと思います.
そういった意味も含めて考えると理学療法士・作業療法士の給与は妥当だと考えます.
このグラフは理学療法士養成校数と収容定員の推移を示したものです.
養成校数は平成21年に伸びが一段落しております,それ以降も収容定員は増えている状況です.
ここ数年は専門学校や短期大学からの大学への移行が目立ちます.
われわれが薬剤師や医師のような給与を獲得するということであれば養成課程を変化させる必要があると思います.
まずは全養成校を4年制大学へ移行し,最終的には6年制といったところまでもっていかないと,社会的な評価というのは得られないと思います.
日本理学療法士協会でも養成校のあり方についてはいろいろと議論がなされております.
実際に来年度から変更となるカリキュラムでは取得単位数がかなり増えておりますので,既に3年生の専門学校は週休2日のスケジュールで養成を行うこと自体が難しくなってきております.
まずは3年生の専門学校の4年制化,その後に大学化と段階を追って順に進めるほかないと思います.
その他に理学療法士・作業療法士の処遇改善を図る上では,やはり国政に理学療法士や作業療法士のようなリハビリテーション専門職をといった話になるのでしょうか.
最後はまとまりのない話になりましたが,理学療法士・作業療法士の給与は安いのかといった点について考えてみました.少なくとも頂いている給与に恥じない仕事をしたいものです.
参考文献
1)理学療法士白書2016
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