Stiff knee gaitってどんな歩容か知ってますか?

投稿者: | 2018年9月9日

Stiff knee gaitは変形性膝関節症に限らず,人工膝関節全置換術後にも頻繁に見られる異常歩行です.

膝蓋骨骨折例や膝関節周囲の外傷後の症例にも多く見受けられる歩容ですので,Stiff knee gaitの原因やアプローチについておさえておくことは重要です.

今回は変形性膝関節症例における矢状面の歩行で見られる代表的な異常歩行であるStiff knee gaitについて考えてみたいと思います.

 

極める変形性膝関節症の理学療法 保存的および術後理学療法の評価とそのアプローチ (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス) [ 斉藤秀之 ]

 Stiff knee gaitとは? 

Stiff knee gaitというのは,歩行遊脚期の最大膝屈曲角の減少と遅延を特徴とする歩容で,足を棒のように固めて歩くような歩容です.

従来はStiff knee gaitという言葉は脳性麻痺(痙直型)の歩容として使用されていた言葉ですが,先天性の脳損傷患者などの中枢神経疾患で用いられる用語でもあります.

この異常な歩行パターンは変形性膝関節症例においても頻繁に見られます.臨床では変形膝関節症例が,「うまく歩けない.足が棒のようになって曲がらない」といった表現で歩きにくさとして表出されることが多いです.

 

 

 

 

 

 

 変形性膝関節症例におけるStiff knee gait 

変形性膝関節症例のStiff knee gaitを調査した報告によると,変形性膝関節症例は健常例と比較して遊脚期の膝関節屈曲角度が小さいことが明らかにされております.

さらに変形性膝関節症の重症度が高くなるに従って,遊脚期の膝関節屈曲角度が少なくなることも明らかにされております.

実はStiff knee gaitは変形性膝関節症例に限らず,人工膝関節全置換術後にも頻繁に起こります.人工膝関節全置換術例を対象とした報告では,術前・術後1週・術後2週で遊脚期の膝関節最大屈曲角度を比較した結果,術前に比較して,術後1週後では遊脚期の膝関節最大屈曲角度が有意に低く,術後2週では術後1週に比較するとわずかに改善したものの改善は十分ではなかったと報告されております.

すなわち変形性膝関節症例においては人工膝関節全置換術を行っても,手術だけでStiff knee gaitが改善するわけではないということです.

 

臨床実践変形性膝関節症の理学療法 (教科書にはない敏腕PTのテクニック) [ 橋本雅至 ]

 Stiff knee gaitの何が問題か? 

Stiff knee gaitが身体に与える影響として最も問題となるのが,歩行におけるエネルギー効率低下です.

これは力学的要因と生理学的要因によって起こるとされております.

力学的要因としては,下肢が伸展した状態で振り出すことにより,下肢にはより大きな慣性が働きますので,大きな股関節モーメントが必要となります.

加えて下肢が伸展した状態ではfoot clearanceが低くなりますので,転倒危険も高くなります.

さらにつまずきを防ぐために股関節の分回し運動や体幹傾斜などの代償戦略を用いることが多くなりますので,これもエネルギー効率を低下させる要因となります.

生理学的要因としては,遊脚期に膝関節屈曲に遅延が起こるということは,歩行周期を通じて大腿四頭筋が持続的に収縮していることになりますので,これもエネルギー効率低下の原因となります.

このようにStiff knee gaitは力学的・生理学的にみると,エネルギー効率を著しく低下させる歩容であることがわかります.

 

 

 

 

 

 

 

 Stiff knee gaitの原因は? 

Stiff knee gaitを有する症例は膝関節屈曲可動域制限があるために,歩行遊脚期に膝関節が屈曲しないのでしょうか?歩行遊脚期に必要な膝関節屈曲可動域は60°にすぎません.

膝関節屈曲可動域が90°であってもStiff knee gaitを呈さない症例もいれば,膝関節屈曲可動域が130°であってもStiff knee gaitを呈する症例も存在します.

すなわちStiff knee gaitの原因は膝関節屈曲可動域制限ではないのです.

変形性膝関節症例は荷重位での膝関節屈曲運動に伴い疼痛が出現することが多いので,Stiff knee gaitによって膝関節を屈曲せずに代償的な歩行動作を行っている場合が多いのです.

術後は手術によって膝関節痛が取り除かれるわけですが,長年かけて出来上がった術前からの歩行パターンというのはそんなに簡単に修正できるものではありません.

Stiff knee gaitを呈する変形性膝関節症例は,大腿直筋が過剰に活動していることが多いのですが,この過活動を軽減できないStiff knee gaitに改善が得られないわけです.

さらにStiff knee gaitを呈する変形性膝関節症例は前足部への荷重コントロールが不良な場合が多く,そのために立脚終期~遊脚期にかけての膝関節が屈曲しないといった症例が多いです.

したがって変形性膝関節症例および人工膝関節全置換術例におけるStiff knee gaitを改善させる上では,膝関節屈曲可動域運動のみを行っていても改善が得られないわけです.

大腿直筋の過活動を改善するとともに,膝関節屈曲を伴う前足部での荷重支持パターン,すなわちForefoot Rocker機能の改善を図ることが重要となります.

 

上の図はForefoot Rocker機能改善を目的としたトレーニングの一部です.

 

今回は変形性膝関節症例におけるStiff knee gaitについてご紹介いたしました.

多くの症例がこういった歩行パターンを呈することが多いので,Stiff knee gaitに伴う歩行効率の低下や,その原因について理解しておく必要があるでしょう.

 

 

参考文献
1)倉林準: 変形性膝関節症患者における歩行の特徴-Kineticsによる解析-.臨床バイオメカニクス 32 : 413-419, 2011
2)Benedetti MG, et al: Muscle activation pattern and gait biomechanics after total knee replacement. Clin Biomech 18: 871-876, 2003
3)CataniF, et al: Muscle activity around the knee and gait performance in unicompartmental knee arthroplasty patients : a comparative study on fixed-and mobile-bearing designs. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc 20: 1042-1048, 2012
4)Lewek MD, et al: The influence of mechanically and physiologically imposed stiff-knee gait patterns on the energy cost of walking. Arch Phys Med Rehabil 93: 123-128, 2012
5)山田英司, 他: 膝関節術後早期の筋力回復に伴う運動単位の活動様式の変化. 理学療法科学25: 317-321,2010
6)MoritaS, et al: The relationship between muscle weakness and activation of the cerebral cortexearly after unicompartmental knee arthroplasty. J Phys Ther Sci25: 301-307. 2013

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です