変形性股関節症例の脚長差について~下肢長が同じなのに脚長差が出現するのはなぜ?~

変形性股関節症
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目次

変形性股関節症例の脚長差について~下肢長が同じなのに脚長差が出現するのはなぜ?~

前回の記事では変形性股関節症例における筋力低下の特徴についてご紹介させていただきました.

今回は変形性股関節症例における脚長差の特徴について考えてみたいと思います.

変形性股関節症例の脚長差には左右の下肢長そのものが異なるX線学的脚長差(構造的脚長差)と,左右の下肢長は同等にもかかわらず骨盤傾斜,股関節・膝関節の屈曲,足部の回内外等によって生じる機能的脚長差に分類されます.

脚長差を考える際には,現在生じている脚長差が構造的脚長差によるものなのか,機能的脚長差によるものなのかを判断することが重要となります.

 

 

 

 

 

 

 

構造的脚長差(X線学的脚長差・レントゲン上の脚長差)

変形性股関節症例は大腿骨頭の圧潰や外上方偏位によって罹患側の下肢長が短縮していることが少なくありません,特に高位脱臼が著しい症例では,3cm以上の脚長差を認める場合すらあります.


構造的脚長差の評価の方法として用いられるのが涙痕-小転子間距離です.

これは変形性股関節症例におけるX線の診方の記事でもご紹介いたしましたが,両小転子の最突出部を結ぶ直線を引き,両涙痕への垂線の距離の左右差を測定するといったものです.

構造的脚長差を測定する場合には,X線の全長を用いる方法が最も正確に脚長差の測定を行えるわけですが,簡易的な方法としてはこの涙痕-小転子間距離の測定が有用です.

涙痕-小転子間距離は股関節内外転の影響を受けにくいことも報告されており,我が国における構造的脚長差の測定方法としてはGold standardになっている方法だと思います.

 

 

 

 

 

 

 

機能的脚長差(自覚的脚長差)とは?

機能的脚長差というのは上述したように骨盤傾斜,股関節・膝関節屈曲,足部の回内外等によって生じる見かけ上の脚長差のことです.

ここでは変形性股関節症例に最も多く見られる股関節内外転拘縮による骨盤傾斜に伴う脚長差について考えてみたいと思います.

左上の図では股関節内転可動域制限(外転拘縮)によって骨盤が罹患側へ傾斜しているために,罹患側の下肢が延長していることが分かります.

一方で股関節外転可動域制限(内転拘縮)を有する変形性股関節症例の場合には,外転可動域制限によって骨盤が非罹患側へ傾斜してしまいますので,罹患側が相対的に短縮していることが分かります.

このように股関節内外転方向の可動域に制限があると,骨盤が傾斜し見かけ上の脚長差が生じてしまいます.

このような脚長差を機能的脚長差と呼びます.

 

 

 

 

 

 

 

 

機能的脚長差(自覚的脚長差)の測定方法は?

機能的脚長差の測定方法については様々な方法が報告されておりますが,背臥位で測定する場合には臍果長による脚長差測定が一般的です.

また立位で両上前腸骨棘の高さを確認する方法や,Block testと呼ばれる方法も有用です.

Block testでは足底に木製板を挿入していき,対象者が自覚的に同じ高さだと感じる高さを機能的脚長差としたり,両上前腸骨棘の高さが等しくなるところを機能的脚長差とするといった方法が一般的です.

 

 

 

 

 

 

 

 

脚長差をどのように代償しているか?

生じている脚長差をどのように代償しているかを見極めることも重要です.

脚長差の代償の仕方には以下の3つの戦略が挙げられます.
①骨盤を短縮側へ傾斜する
②短縮側の足関節を底屈・回外する
③非短縮側の股関節・膝関節を屈曲する
このような代償姿勢がきっかけで二次的障害が発生する場合も少なくありませんので,必要であれば補高の使用などを検討する必要があります.

 

 

 

 

 

 

 

 

下肢長の評価・測定方法

下肢長の測定方法には転子果長(TMD),棘果長(SMD),臍果長(UMD),大腿長,下腿長等があります.

変形性股関節症例は大腿骨頭の圧潰や外上方偏位によって脚短縮が生じていることが多いので,TMDには大きな左右差は無く,股関節をまたいで測定を行うSMDに左右差が見られる場合がほとんどです.

 

TMDに左右差が見られる場合には,大腿長・下腿長を測定して総合的に脚長差の原因を考える必要があります.仮に大腿長・下腿長が同等にも関わらずTMDに左右差が見られる場合には,股関節や膝関節の屈曲拘縮によって下肢が相対的に短縮している場合や,膝関節の内反変形等によってTMDが短縮している場合があります.

 

SMDに左右差が見られる場合にも,TMDを測定して総合的に脚長差の原因を考える必要があります.

仮にTMDが同等にもかかわらず,SMDに左右差が見られる場合には,大腿骨頭の圧潰や外上方偏位等の股関節の問題によって脚短縮が生じていることが考えられます.

 

UMDに左右差が見られる場合には,SMDを測定して総合的に脚長差の原因を考える必要があります.

仮にSMDが同等にもかかわらず,UMDに左右差が見られる場合には,下肢長は同等にも関わらず脚長差が生じているということになりますので,骨盤傾斜による機能的脚長差が生じていることに考えられます.

今回は変形性股関節症例における脚長差についてご紹介いたしました.次回は脚長差の補正についてどう考えるべきかをご紹介したいと思います.

 

コメント

  1. […] 前回の記事では変形性股関節症例における脚長差の特徴についてご紹介いたしました. […]

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