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どうしてプラットフォームで寝かせてマッサージする理学療法士が多いのか?
以前から脳卒中片麻痺症例に対して理学療法士が促通運動やコンディショニングと称してダラダラとプラットフォームに寝かせて運動をして,起立・歩行練習にあてる時間が短すぎるといった問題があります.
脳卒中治療ガイドラインでも起立・歩行練習の量を増やすことは有効とされており,一方でボバース法やPNFといった治療手技の科学的根拠が明確でないことも記述されております.
また場合によっては意味の分からないマッサージを繰り返している理学療法士もいます.
どうしてプラットフォームで寝かせてマッサージする理学療法士が多いのでしょうか?
今回はどうしてプラットフォームで寝かせてマッサージする理学療法士が多いのかについて考えてみたいと思います.
せっかく離床したのにリハビリテーション室では40分臥位姿勢に
よくあるのが病室で臥床状態であった脳卒中片麻痺症例を離床させて,リハビリテーション室へ誘導するとすぐにリハビリテーション室のプラットフォームで寝かせてしまうパターンです.
せっかく離床したのに実際に起きている時間は移動時間の3分間で,リハビリ室では40分以上も臥位姿勢となっているケースが少なくありません.
病棟の看護師はリハビリテーション室でクライアントが体を起こして運動していると思っているかもしれませんが,実質はほとんどプラットフォーム上で臥位姿勢をとっているなんてことも少なくないわけです.
これってどうなのでしょうか?
プラットフォームでの練習は不要か?
私自身はプラットフォームでの練習は全く不要とは思いません.
臥位姿勢だからできる練習もありますし,場合によっては寝返りや起き上がりの練習を行う必要があることもあります.
問題なのは起立・歩行練習時間とプラットフォーム上での練習時間のバランスです.
後者が長すぎるとクライアントにとってあまりメリットは無いというのは明白です.
もちろん対象者の状況にはよりますし,3単位をすべて起立・歩行練習というのも高齢者の体力が持たない場合も少なくないでしょう.
起立・歩行練習20分⇒プラットフォーム上での運動20分⇒起立・歩行練習20分
対象者の状況にもよりますがこんな組み合わせで行えば,耐久性の低い高齢者でもプログラムに耐えることが可能でしょう.
要は時間のバランスが重要だと思います.
起立・歩行練習の量を増やさなければ
理学療法の場合には目標が起立・歩行能力の向上となる場合が多いわけですが,起立・歩行動作を獲得するうえではやはり起立・歩行といった練習を反復する必要があります.
もちろん漫然と起立・歩行練習ばかりを繰り返すような思考停止のプログラムはどうかと思いますが,プラットフォーム上でのトレーニングの繰り返しだけで起立・歩行が可能になるなんてことは考えにくいです.
課題志向型トレーニングのエビデンスは確固たるものですし運動学習理論を考えても,脳卒中片麻痺症例の場合には臥位姿勢で理学療法士がいうところの「促通運動」を繰り返していても起立や歩行が可能になることはまれでしょう.
どうしてプラットフォームで寝かせてマッサージする理学療法士が増えるのか?
上述した話は理学療法士であれば誰しもが理解できる話ですが,ではなぜプラットフォームで寝かせてマッサージする理学療法士が増えるのでしょうか?
考えてみてください.
1日18~20単位取得と考えた時に,長下肢装具での介助歩行ばっかりやっていると理学療法士も体がもちません.
若ければよいですが年齢を重ねると数か月で体はボロボロになってしまうでしょう.
プラットフォームでマッサージするのって結局のところ理学療法士も休憩を取りたいということが多いのではないでしょうか?
マッサージしてる方が楽ですからね.
50分間はプラットフォームで運動をして,最後に10分くらい長下肢装具歩行練習して終わりみたいなパターンが多くなってしまうわけです.
今回はどうしてプラットフォームで寝かせてマッサージする理学療法士が多いのかについて考えてみました.
プラットフォームをリハビリテーション室から完全に排除してはなんて話もありましたが,プラットフォームそのものは不要な物品ではないと思いますし,対象者によっては必要です.
問題なのは練習時間のバランスだと思います.
コンディショニングが必要な場合もあるかもしれませんが,コンディショニングが理学療法時間の半分以上という場合にはプログラムを見直した方が良いかもしれませんね.