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理学療法士・作業療法士も知っておきたい病院・病棟・病床の種類の違い
理学療法士・作業療法士の中にも何となく仕事をしていて,医療機関にはどんな種類があるのか,病院とクリニックの違い,さまざまな病床区分についてあまりご存じない方も多いと思います.
今回は理学療法士・作業療法士も知っておきたい病院・病棟・病床の種類の違いについてご紹介させていただきます.
病院とクリニックの違い
まず病院とクリニックの違いですが,これは医療法によって病床数で分類されています.
具体的には,20床以上の病床を持つ医療施設が病院で,0~19床がクリニックということになります.
厚生労働省の「令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると,2019年の施設数は病院が8,300施設,クリニックが102,616施設となっております.
ちなみにクリニックのうち6,644施設が有床で,95,972施設は無床です.
このデータを見てもクリニックの多くが,無床施設であることが分かります.
なおクリニックのなかには○○診療所とか○●医院といった名称のものもありますが,基本的に医療施設としての違いはありません.
一般病院
一般病院は医療法人や社会福祉法人,公益法人が運営している病院です.
地域密着型の病院が多い傾向にあります.
病床数は病院の定義である20床以上ということ以外,決まりはありません.
人員配置は病床区分によって異なり,一般病床は医師が16:1,薬剤師が70:1,看護師が3:1で,療養病床は医師が48:1,薬剤師が150:1,看護師が4:1となっております.
精神科病院
精神科病院というのは,精神疾患を抱える患者の治療を目的とした専門病院のことを指します.
精神保健福祉法によって,都道府県は精神科病院を設置しなければならないと定められています.
特定機能病院
特定機能病院とは,高度医療の提供が可能な病院のことです.
高度医療技術の開発や研究も行っています.
病床数や人員配置,構造設備,診療科目数などの要件をクリアして,厚生労働大臣に承認されることで特定機能病院として機能できます.
以下が特定機能病院の承認要件の一部です.
高度医療の提供,開発および評価,並びに研修を実施する能力を有すること
ほかの病院やクリニックから紹介された患者に対して,医療を提供すること
400床以上の病床を有すること
医師は通常の2倍程度の配置が最低基準で,半数以上がいずれかの専門医であること
薬剤師は入院患者数÷30が最低基準
看護師等は入院患者数÷2が最低基準
栄養管理士を1名以上配置すること
集中治療室,無菌室,医薬品情報管理室があること
16の診療科を標榜していること
2021年4月1日時点で,87の病院が特定機能病院として承認されています.
地域医療支援病院
地域医療支援病院は都道府県知事からの承認を得ている病院で,地域の中核的役割を担っています.
地域医療支援病院として承認されるには,いくつかの要件を満たす必要があります.
以下は地域医療支援病院の承認要件の一部です.
開設主体は原則,国や都道府県,市町村,社会医療法人,医療法人のいずれかである
紹介患者中心の医療を提供している
救急医療を提供する能力を有すること
200床以上の病床を有すること
2018年12月時点で607の病院が,地域医療支援病院として承認を受けています.
病棟の種類一般
病棟には「一般病棟」「療養病棟」「回復期リハビリテーション病棟」「地域包括ケア病棟」といった種類があり,役割や対象の患者などが異なります.
各病棟の特徴や対象疾患は,以下のとおりです.
一般病棟
一般病棟は内科や外科,整形外科など複数の診療科からなる混合病棟です.急性期や回復期,慢性期,終末期など,さまざまな段階にある患者が入院しています.
療養病棟
療養病棟は急性期の治療を終えて病状は安定したものの,長期にわたって療養を必要とする患者に医療と介護を提供する病棟です.
おもに,慢性疾患のある患者が入院しています.
回復期リハビリテーション病棟
回復期リハビリテーション病棟は,急性期治療を終えた患者の在宅復帰をめざす病棟です.
厚生労働省により,脳血管疾患や脊髄損傷,頭部外傷,脳腫瘍など,対象の疾患が定められています.
なお入院日数上限も疾患によって異なり,最長日数は180日です.
地域包括ケア病棟
地域包括ケア病棟は,急性期治療を終えた患者や在宅療養中に悪化した患者の在宅復帰をめざす病棟です.
回復期リハビリテーション病棟と同じく在宅復帰をめざす病棟ですが,地域包括ケア病棟には対象の疾患がありません.
また入院日数上限が回復期リハビリテーション病棟よりも短く,最長60日です.
病床の種類一覧
医療法によって,病床は「精神病床」「感染症病床」「結核病床」「療養病床」「一般病床」の5つに分類されています.
以下では,各病床の特徴や病床数を紹介させていただきます.
精神病床
精神病床は病院の病床のうち,精神疾患をもつ患者が入院する病床のことです.
2020年10月の時点で,精神病床は324,921床あります.
アメリカやイギリス,ドイツといった諸外国と比べて,日本は精神病床数が多いのが特徴です.
感染症病床
感染症病床は病院の病床のうち,感染症に罹った患者や新感染症の所見がある人が入院する病床のことです.
2020年10月の時点で,感染症病床は1,886床あります.
ほかの病床と比べて数が少なく,2019年の年末から発生した新型コロナウイルス感染症による病床ひっ迫が問題視されています.
結核病床
結核病床は病院の病床のうち,結核に感染した患者が入院する病床のことです.
2020年10月の時点で,結核病床は4,147床あります.結核の患者数は年々減少していますが,2020年には12,739人が結核患者として登録されています.
療養病床
療養病床は病院またはクリニックの病床のうち,精神病床・感染症病床・結核病床以外の病床で,長期療養を必要とする患者が入院する病床のことです.
2020年10月の時点で,療養病床は299,078床あります.
一般病床
一般病床は病院またはクリニックの病床のうち,精神病床・感染症病床・結核病床・療養病床以外の病床のことです.
一般病床には集中治療を行うためのICUやNICUのほか,ホスピスや緩和ケア病床なども含まれます.
2020年10月の時点で,一般病床は967,318床あります.
今回は理学療法士・作業療法士も知っておきたい病院・病棟・病床の種類の違いについてご紹介させていただきました.
基本的なところですがよく知らなかったという方も少なくないのではないでしょうか?
自分が勤務する病院や病棟の元来の位置づけを改めて考える機会になれば売れいしいです.