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理学療法士・作業療法士の人工股関節全置換術・人工骨頭置換術後の脱臼に関する理解が危険
理学療法士・作業療法士って人工股関節全置換術・人工骨頭置換術後のクライアントに対して過度に脱臼予防のための制限を課す方が少なくありませんよね?
最近ではインプラントの改良や手術手技の進歩によってかなり脱臼率そのものが低下しているわけですが,なにも理解せずとにかく制限すればよいといった認識の理学療法士・作業療法士が多いのも実際です.
今回は理学療法士・作業療法士の人工股関節全置換術・人工骨頭置換術後の脱臼に関する理解が危険だといったお話です.
前方アプローチによるTHAでは後方脱臼しない?
パターン化された理学療法士・作業療法士教育の弊害だと思いますが,
前方アプローチ:伸展・内転・外旋
後方アプローチ:屈曲・内転・内旋
こんな感じで脱臼肢位に関して勉強された方って多いと思います.
確かに間違いではありませんが,そもそも前方アプローチによるTHAやFHA(BHA)でも後方脱臼も起こらないといは言えませんので場合によっては屈曲・内転・内旋を制限する必要がある場合もあります.
前方アプローチでも後方アプローチでもインプラントの設置位置はほぼ同じですから,前方へも後方へも脱臼するリスクはあります.
THAやFHA(BHA)の場合には,脱臼というのはカップとネックのインピンジメントで起こるわけですから,インピンジメントが起これば前方だろうが後方だろうが脱臼は起こりうるわけです.
前方アプローチだから屈曲・内転・内旋はOKなんて考え方はナンセンスすぎます.
もちろん関節包や軟部組織の侵襲を考えると後方アプローチでは後方脱臼が,前方アプローチでは前方脱臼が多いわけですが,過度にカップやステムが前捻していてcombined anteversionが大きい場合には後方アプローチでも前方脱臼の可能性だってあり得るわけです.
ここは勘違いされている理学療法士・作業療法士は多いと思いますので注意が必要です.
術中可動域を超えると脱臼する?
そんなはずありません.
そもそも術中可動域って医師がゴニオメーターを用いて測定していることはほとんどありません.
目視による測定がほとんどです.
また単一方向での可動域測定がほとんどですので,複合運動ではないといった点もポイントです.
術中可動域以上に動かすと脱臼するなんて話ではありません.
もちろんどの方向に〇°可動させた際に易脱臼性が観察されたといったような所見があればその角度は注意が必要ですが,そもそも易脱臼性があればステムやカップの設置角度を修正するなり,リップライナーが用いられるなど何らかの対処がなされるはずです.
理学療法士・作業療法士の無知がクライアントのADL・QOL制限につながる
結局のところ知識のない理学療法士・作業療法士にとっては何でもかんでも制限しておけば良いみたいな風潮がありますよね.
とりあえずそれで自分自身を守れますからね…
ただ意味の無い過度な制限はADLやQOLを制限するだけなんですよね.
画像からオフセットや骨頭径,カップの前方開角,ステムの前捻角,カップの外方開角を確認するのは必須ですし,最近だとヘッドとネックの比率やcup opening angleも脱臼に関連することが示されております.
理学療法士・作業療法士もこういった知識をきちんと勉強したうえで症例に応じて脱臼に関する指導を行うべきですね.
何でもかんでも制限するのは無責任すぎますね.
今回は理学療法士・作業療法士の人工股関節全置換術・人工骨頭置換術後の脱臼に関する理解が危険だといったお話でした.
理学療法士・作業療法士は画像や手術所見,術後経過日数に加えて症例毎の性格や活動の特性をきちんと評価したうえで脱臼予防のための指導を行う必要がありますね.