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人工膝関節全置換術と人工股関節全置換術の違いって?
最近は海外ではTotal Joint Arthroplastyという表現で人工膝関節全置換術と人工股関節全置換術の対象をまとめて扱った論文が増えております.
ただ人工膝関節全置換術と人工股関節全置換術ってかなり違いますよね?
関節の部位が異なるだけでなく病態や経過もかなり人工膝関節全置換術と人工股関節全置換術では異なります.
今回は人工膝関節全置換術と人工股関節全置換術の違いについて考えてみたいと思います.
圧倒的に人工膝関節全置換術の理学療法が難渋する?
人工膝関節全置換術と人工股関節全置換術ではどちらの理学療法で難渋することが多いでしょうか?
もちろん症例によってさまざまだと思いますが,おそらく人工膝関節全置換術の理学療法が難渋することが多いのではないでしょうか?
全国レベルの調査結果を見ても人工膝関節全置換術の方が在院期間が長い状況です.
人工股関節全置換術の場合には3日の自宅退院パスがあるほど在院期間が短縮化しておりますが,が人工膝関節全置換術の場合には術後3日での退院というのはなかなか厳しいものがあるでしょう.
術後の満足度で見ても人工股関節全置換術に比較して人工膝関節全置換術の方が患者満足度が総じて低いことが多いでしょう.
手術に至るまでの経過の相違
変形性膝関節症の場合には疼痛が身体活動量の低下を引き起こし,筋肉量の減少,Sarcopenic obesity,肥満細胞の増加による炎症の増悪といった負のループに陥ります.
手術までの経過が長い症例も多いので完全にこういった負のループが形成されてしまっている症例が少なくありません.
手術に至るまでの経過で考えても人工膝関節全置換術の原因となる変形性膝関節症は慢性経過をたどることが多いです.
人工股関節全置換術の原因となる変形性股関節症についても慢性経過をたどる方はいらっしゃいますが,増悪から手術までのタイミングが早いことが多いのが人工股関節全置換術例の特徴です.
全身性疾患と局所性疾患
人工膝関節全置換術は人工股関節全置換術の方が全身性の障害を抱えた方が多いです.
そもそも人工膝関節全置換術は人工股関節全置換術に比較して対象者が高齢なことが多いので,身体機能が低く,フレイル,低栄養,サルコペニアを合併している症例が多いです.
最近では変形性膝関節症を肥満をベースとした炎症性の全身性疾患としてとらえる考え方が主流となってきております.
本邦では変形性股関節症の場合には,寛骨臼形成不全をベースとする二次性変形性股関節症が多いので,若年者が多く合併症が少ないことが多いです.
さらに近年では変形性股関節症に関しては関節炎による病態発症機序が否定されている現状もあり,関節症そのものの病態の相違が術後の病態の相違と関連している可能性もあります.
今回は人工膝関節全置換術と人工股関節全置換術の違いについて考えてみました.
理学療法士・作業療法士であれば人工膝関節全置換術と人工股関節全置換術を同一疾患と考える方は少ないかもしれませんが,まったく異なる病態として改めて認識する必要があるでしょうね.