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令和に目指すなら理学療法士よりも作業療法士か言語聴覚士がよい?
理学療法士は年間1万人を超えるペースで増加しております.
このままの勢いで理学療法士が急増すると,理学療法士の新しい求人というのはかなり少なくなってしまうことが危惧されます.
そういった中で比較的養成数の増加が落ち着いているのが作業療法士や言語聴覚士です.
今回は令和に目指すなら理学療法士よりも作業療法士か言語聴覚士がよいのではないかといったお話です.
理学療法士の急増
理学療法士数の今後の推移ですが,2040年には人口10万人に対する療法士数は約3倍に増加する見込みとなっております.
現在のところ日本理学療法士協会が養成校の定員を制限することは困難な状況であり,現在の養成定員数が将来も維持された場合には,2040年時点の18歳人口に占める理学療法士養成施設入学者数の割合は約1.35倍に増加することが見込まれております.
単純計算で毎年1万人前後の理学療法士が増えていることになりますが,累計すると2021年には約19万人の有資格者が存在する状況です.
10年前の2011年の累計数では9万人程度であったことを,10年で理学療法士数は倍になっており,今後もさらに増加する可能性が高いです.
なぜ作業療法士がお勧めなのか?
なぜ作業療法士がお勧めかというと,多くの養成校で作業療法士は定員割れしている状況ですし,理学療法士ほど供給過多に陥ってないところが大きなポイントです.
医療機関としては施設基準の中に作業療法士の人員基準が設定されているため,一定数の作業療法士を確保する必要があります.
また作業療法士の場合,精神分野のリハビリテーションはほぼ独占している状況です.
最近は精神科を標榜する医療機関でも理学療法士を雇用する医療機関も増えてきてはおりますが,まだまだそういった医療機関が少ないのも実際です.
一般的な医療機関では理学療法士・作業療法士の線引きが曖昧なところもありますが,精神科の場合には作業療法士が業務独占の状況です.
身体面へのリハビリテーションでは理学療法士と同じことができ,精神的なアプローチもできるといった強みがあるでしょう.
なぜ言語聴覚士がお勧めなのか?
言語聴覚士の場合には特に希少性が高いといった点がポイントです.
言語聴覚士の数は、2021年現在でも約36,000人程度です.
理学療法士のここ数年の国家試験合格者数が10,000人を超えているのに対して,言語聴覚士の場合には毎年の国家試験合格者は2,000人未満です.
これは需要と供給バランスの崩壊を迎えている理学療法士数で考えると2005年の理学療法士協会会員数とほぼ同等です.
つまり言語聴覚士の場合には,理学療法士と同じ末路を辿ったとしても今後15年は大丈夫ということになります.
今の状況からすると言語聴覚士が急激に増加することは考えにくいでしょう.
また言語聴覚士の職務は医療にとどまらず,福祉や教育にもまたがっていますので,理学療法士や作業療法士のように「医師の指示の下に」業を行う者とは定義されておりません.
身体に危害を加えるおそれのある行為(嚥下訓練,人工内耳の調整,その他厚生労働省令で定める行為)を除いては医師の指示なく行なうことができるといった点も言語聴覚士の職域を広げる上での大きなポイントです.
言語聴覚士が所属する勤務先は2020年現在の内訳は,医療機関・老健・特養で全体の84%を占めます.
都心では作業療法士・言語聴覚士のみに資格手当が設けられている
理学療法士よりも作業療法士や言語聴覚士が勧められる理由は上述した通りですが,最近は作業療法士や言語聴覚士のみ資格手当を設けている施設もあります.
もちろん理学療法士は手当をつけなくても集まってくるので資格手当はありません.
言語聴覚士や作業療法士の人員確保に苦労している地域もありますし,まだまだ作業療法士や言語聴覚士には希少価値が高い職種と言えるでしょう.
離職者が多いのも作業療法士・言語聴覚士
もう1つ重要なのが理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の男女比です.
理学療法士の場合には,作業療法士・言語聴覚士に比較して男性の割合が明らかに高いです.
男性の割合が高いということは離職者が少ないということにもつながります.
女性が多い作業療法士・言語聴覚士では離職率が高い傾向にありますので,資格を持っていながら働いていないといった方も少なくありません.
こういった側面から考えても作業療法士・言語聴覚士の希少性が高いのは明らかです.
今回は令和に目指すなら理学療法士よりも作業療法士か言語聴覚士がよいのではないかといったお話でした.
結局のところ何を目標にしてリハビリテーション専門職を目指すかですが,なんとなくリハビリテーション専門職になろうという方については作業療法士・言語聴覚士を目指した方が現在のところは無難と言えるでしょう.