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回復期リハビリテーション病棟におけるFIM評価に第3者評価が組み込まれる?
以前から回復期リハビリテーション病棟におけるFIM評価については入棟時のFIMを低く評価するといったFIM操作の問題が指摘されておりました.
このFIM操作の問題に対してこんかいまた新たな提言がなされました.
今回は回復期リハビリテーション病棟におけるFIM評価に第3者評価が組み込まれるかもしれないといったお話です.
回復期リハビリテーション病棟におけるFIM評価
回復期リハビリテーション病棟では「質の高いリハビリを効果的に提供し,患者のADL等を改善させ在宅復帰を促す」ことが求められます.
「質の高いリハビリ」を評価する指標として,2016年度の診療報酬改定で「リハビリテーション実績指数」の考え方が導入されました.
このリハビリテーション実績指数というのはわかりにくい概念ですが,「入棟時のADL」(FIMで評価)と「退棟時のADL」(FIMで評価)を比較し,その差(つまりADL改善の度合い,FIM利得という)を指標に、回復期リハビリテーション病棟の「リハビリテーションの効果」を把握するものです.
この改善度合いが一定以上でなければ点数の高い入院料を算定できないことから,どの病院でも高い入院料を目標としてFIM利得を上げることに躍起になっている医療機関が増えました.
FIM操作の疑念
この回復期リハビリテーション病棟におけるFIMの評価ですが,以前から「入棟時の患者状態を操作し(低く評価する),ADL改善度合いを大きく見せているのではないか」という疑念が生じています.
高い入院料を取得するには「ADL改善度合い」(FIM利得)を大きくしなければならないわけですが,退棟時のADL状態を向上させるには限界があり,入棟時のADL状態を低く見積もるという不適切な行動をしている可能性が指摘されているわけです.
2020年度の診療報酬改定における入院時FIMの過小評価対策
正しいFIM評価に向けて,2020年度の前回診療報酬改定で「患者の視点による適正性の確保」が導入されました.
評価結果を患者・家族に提示することで,仮に不適切にFIMが低く測定されていれば,患者側から「私は●●は自分で,介助なしに行っています」などのコメントが入り,結果として「正しいFIM評価になる」と期待されたのです.
しかしこれはほとんど効果がありませんでした.
そもそもFIM評価の結果を真剣にみているクライアントや家族っていませんよね?
第3者評価の導入が提案される
この2020年度の改定における失敗を踏まえて,次回の改定では第3者評価の導入が提案されたのです.
病院機能評価では,受審病院が正しい評価を病院の組織として行っているかについても調査および評価がなされます.
少なくとも高点数を設定する回復期リハビリ病棟では,リハビリテーション実績指数によるアウトカム評価に加えて,病院機能評価などの第3者評価をプロセス評価として組み込んでいくべきではないかといった提案がなされました.
さらに正しいFIM評価を担保するために,さらに第3者が当該病院は組織として正しい評価を行っているかをチェックする仕組みを導入することが提言されました.
第3者評価がどこまで厳しいものか次第ですが,こういった第3者評価が導入されれば不正をはたらく病院は少なくなるでしょう.
今回は回復期リハビリテーション病棟におけるFIM評価に第3者評価が組み込まれるかもしれないといったお話でした.
FIM操作問題については以前から話が出ているものの現状では大きな変化はない状況ですので,また新たな仕組みや書類が増えることで業務が煩雑にならないことを祈るばかりです.