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リハビリテーション料が包括されることのデメリット
数年前から今後リハビリテーション料が包括化されるといった話が出ております.
地域包括ケア病棟における疾患別リハビリテーション料の包括化なんかはその第一歩目でしたね.
確かに理学療法士・作業療法士の働き方って単位に縛られてしまっているところがありますし,1単位20分という縛りの中では本来のリハビリテーションサービスを提供しにくいといった側面もあります.
そのためリハビリテーション料の包括化を望む声は以前から多いです.
でもリハビリテーション料が包括化されることによるデメリットがあるのも実際です.
今回はリハビリテーション料が包括されることのデメリットについて考えてみたいと思います.
リハビリテーション時間の減少
リハビリテーション料の包括化によるメリットが大きい一方でデメリットも考えておかなければなりません.
まず最も危惧されるのは包括化によるリハビリテーション時間の減少です.
例えば地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟では2単位が最低の取得単位数となっておりますが,包括化されると最低基準よりサービスを提供してもしなくとも医療機関における収入は同じということになってしまいますので,提供するリハビリテーション量が少なくなってしまう可能性があります.
もちろん地域包括ケア病棟なんかでもコストを度外視してリハビリテーションに力を入れている病院もあります.
ただ最低限の量を確保して運用することで提供されるサービスの量が少なくなってしまう可能性の方が高いでしょうね.
FIM利得の減少
リハビリテーション量が減少すると何が起こるでしょうか?
一番に考えられるのはFIM利得の減少です.
FIM利得の減少というのは結局のところADL改善度の低下です.
ADLの改善というのはリハビリテーションの主たる目的の1つですので,包括化によってADLの改善が不十分となるということでは本末転倒です.
自宅復帰率の低下
多巡に考えてFIM利得つまりADLの改善が不十分になれば在宅復帰率も低下することになります.
従来であれば在宅で生活できるクライアントが在宅で生活できなくなる可能性があります.
また在院期間が延長してしまうことも予測されます.
包括化によって医療・介護資源を浪費することにもつながりかねませんので,そういった意味から考えると包括化のデメリットも大きいのではないかと感じる次第です.
リハビリテーション料を包括化するにしても何かしらの工夫が必要
上述したような問題を解決するにはどうすればよいでしょうか?
これは話としては多巡ですが,既に下腹期リハビリテーション病棟で行われているような在宅復帰率やFIM利得で入院料をコントロールするといった法制度の整備が必要でしょう.
一般病床でもこういった法制度を整備したうえで包括化を進めないと上述したような問題が多く出てくる可能性があります.
理学療法士・作業療法士の介護福祉士化
さらに包括化によって危惧されるのが理学療法士・作業療法士の介護福祉士化です.
コストに結びつかないリハビリテーションの提供であれば,理学療法士・作業療法士をケアスタッフとして活用するといった施設が増える可能性もあります.
今回はリハビリテーション料が包括されることのデメリットについて考えてみました.
個人的には今年は氷山の一角と思われる単位不正のニュースが世間を騒がせましたし,リハビリテーションの本質を考えると,そろそろ包括化に移行する流れが妥当だと思います.
しかしながら包括化にあたっては法制度上の工夫をしなければ,リハビリテーション医療が衰退してしまうことにもなりかねません.
来年度の診療報酬改定で包括化ということはないと思いますが,いずれくる包括化に備えてり理学療法士・作業療法士も準備をしておく必要があるでしょうね.