目次
足関節捻挫後のアイシングって本当に必要なの?
先日,アイシングの弊害を示唆する基礎研究論文が理学療法士・作業療法士界隈でもちょっとした話題になりました.
ただあくまで基礎研究ですのでアイシング=弊害といった解釈は拡大解釈だと思います.
基本的には疾病ごとに多くのサンプルを用いた質の高い介入研究を行って,そのうえでメタ解析を行ってという流れが無ければ結論は導けないわけです.
今回は理学療法士・作業療法士が足関節捻挫後のアイシングの必要性について考える上で参考になる論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Review Phys Ther Sport. 2021 May;49:243-249. doi: 10.1016/j.ptsp.2021.03.011. Epub 2021 Mar 26.
Effectiveness of cryotherapy on pain intensity, swelling, range of motion, function and recurrence in acute ankle sprain: A systematic review of randomized controlled trials
Júlio Pascoal Miranda 1, Whesley Tanor Silva 2, Hytalo Jesus Silva 3, Rodrigo Oliveira Mascarenhas 4, Vinícius Cunha Oliveira 5
Affiliations expand
PMID: 33813154 DOI: 10.1016/j.ptsp.2021.03.011
今回ご紹介する論文は2021年に掲載された論文です.
研究の目的
Objective: Investigate effectiveness of cryotherapy on pain intensity, swelling, range of motion, function and recurrence in acute ankle sprain.
この研究では急性足関節捻挫における疼痛強度,腫脹,可動域,身体機能および再発に対する寒冷療法の有効性を明らかにすることを目的としております.
研究の方法
Methods: Searches were conducted on six databases for randomized or quasi-randomized controlled trials (RCTs) evaluating effectiveness of cryotherapy for pain intensity, swelling, range of motion, function and recurrence in acute ankle sprain. Selection of trials, data extraction and methodological quality assessment of included trials were conducted independently by two reviewers with discrepancies resolved by a third reviewer. Estimates were presented as mean differences (MDs) with 95% confidence intervals (CIs). The quality of the evidence was assessed using the Grading of Recommendations Assessment (GRADE) approach.
急性足関節捻挫後の疼痛の強さ,腫張,関節可動域,身体機能,再発に対する寒冷療法の有効性を評価した無作為化または準無作為化比較試験(RCT)を6つのデータベースで検索しております.
比較試験の選択,データの抽出,および組み入れられた試験の方法論的な質の評価は,2人のレビュアーが独立して行い,矛盾点については3人目のレビュアーによって評価が行われております.
推定値は平均差(MD)と95%信頼区間(CI)で示されております.
エビデンスの質については,GRADE(Grading of Recommendations Assessment)アプローチを用いて評価がなされております.
研究の結果
Results: Two RCTs with high risk of bias were included. Both evaluated the additional effects of cryotherapy, comparing cryotherapy combined with other intervention versus other intervention stand-alone. Uncertain evidence shows that cryotherapy does not enhance effects of other intervention on swelling (MD = 6.0; 95%CI: 0.5 to 12.5), pain intensity (MD = -0.03; 95%CI: 0.34 to 0.28) and range of motion (p > 0.05).
最終的に選択された論文のなかにはバイアスのリスクが高い2つのRCTが含まれておりました.
いずれも寒冷療法の追加効果を評価したもので,寒冷療法と他の介入を併用した場合と,他の介入を単独で行った場合を比較しておりました.
不確実なエビデンスによると,寒冷療法は腫脹(MD = 6.0; 95%CI: 0.5~12.5),疼痛強度(MD = -0.03; 95%CI: 0.34~0.28),可動域(p > 0.05)をアウトカムとした場合,他の改善効果を増強しないといった結果でありました.
研究の結論
Conclusions: Current literature lacks evidence supporting the use of cryotherapy on management of acute ankle sprain. There is an urgent call for larger high-quality randomized controlled trials.
結論としては,現在の文献では急性足関節捻挫の管理に寒冷療法を使用することを支持する証拠はありません.
より大規模で質の高い無作為化比較試験の実施が急務であります.
今回は理学療法士・作業療法士が足関節捻挫後のアイシングの必要性について考える上で参考になる論文をご紹介させていただきました.
現状のエビデンスから考えると足関節捻挫後のアイシングの必要性についてはまだわからないというのが本当でしょう.
理学療法士・作業療法士であれば足関節捻挫=RICE処置といった公式を頭に浮かべる方も多いと思いますが,場合によってはアイシングを行わないのが正解ということもありそうですね.