目次
新しい大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021では人工骨頭置換術の脱臼発生率はやや減少
理学療法士・作業療法士であれば脱臼予防のための日常生活指導を行うことも多いと思います.
理学療法士・作業療法士の皆様は,先日改訂された大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021をご覧になられましたか?
今回は新しい大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021では人工骨頭置換術の脱臼発生率はやや減少しているといったお話です.
大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2011の人工骨頭置換術・人工股関節全置換術の脱臼発生率
新しく改訂された大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021ですが,実は10年間も改訂されていなかったんですね.
ずっと脱臼発生率についても2011年のガイドラインの数値が用いられていたことが多かったと思います.
大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2011では人工骨頭置換術の脱臼発生率は2-7%と報告されており,前方アプローチと比較して,後方アプローチで発生しやすいことが示されております.
大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021の人工骨頭置換術・人工股関節全置換術の脱臼発生率
大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021の脱臼発生率は1.0~5.6%と報告されており,前方アプローチと比較して後方アプローチで発生しやすいと記述されております.
またdual mobility cupを使用した場合にはさらに脱臼発生率が減少することも記載されております.
2011年のガイドラインでは2~7%,2021年のガイドラインでは1.0~5.6%となっておりますので1%くらい減少したことになりますが,印象としてはもう少し減少しているのではないかといった思いを持っておりました.
印象としては大きく減少していない
上述したようにガイドラインは10年ぶりに改訂されましたが,残念ながら大きく脱臼発生率は減少しているとはいえない結果だと思います.
日本のデータだともう少し減少している印象ですけどね…
もちろん病院や術者にもよるのでしょうが…
そもそも本邦のデータだけを集めたメタ解析論文がありませんので,このあたりが影響しているのでしょうね.
脱臼予防のための日常生活指導
少なくとも最近は闇雲になんでもかんでも制限する医療機関は少なくなっていると思います.
脱臼に関連する要因というのは何も日常生活の過ごし方だけではありません.
アプローチは勿論,dual mobility cupといった新しいインプラントも出てきております.
オフセット長,外方開角,骨頭径等さまざまな要因が脱臼発生要因として挙げられます.
理学療法士・作業療法士であればオフセット長,外方開角,骨頭径といった術中要因を十分に把握したうえで,クライアントに対して脱臼予防のための日常生活指導を行う必要がありますね.
参考文献
1)Max P L van der Sijp, et al. Surgical Approaches and Hemiarthroplasty Outcomes for Femoral Neck Fractures: A Meta-Analysis J Arthroplasty 2018 May;33(5):1617-1627.e9. doi: 10.1016/j.arth.2017.12.029.
2)Samuel T Kunkel, et al. A systematic review and meta-analysis of the direct anterior approach for hemiarthroplasty for femoral neck fracture. Eur J Orthop Surg Traumatol. 2018 Feb;28(2):217-232.
今回は新しい大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021では人工骨頭置換術の脱臼発生率はやや減少しているといったお話でした.
個人的には脱臼発生率は大きくは減少していないなといった印象でありましたが,執刀医としっかりとコミュニケーションを取って適切な日常生活指導を行えるようにしたいですね.