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理学療法士・作業療法士の関わり方が不適切だとノセボ効果でクライアントの機能・能力が低下する
理学療法士・作業療法士の皆様も,プラセボ効果という言葉はよく耳にされると思います.
理学療法や作業療法を行う上では,真の効果に加えてプラセボ効果を考慮することが重要となります.
このプラセボ効果をうまく利用することができれば,理学療法・作業療法の効果を高めることができます.
プラセボ効果については以前にもご紹介させていただきました.
今回はこのプラセボ効果に相反する概念であるノセボ効果についてです.
理学療法士・作業療法士はこのノセボ効果を生じさせないように介入を行う必要がありますが,ノセボ効果を発生させないためには実は理学療法士・作業療法士の関わり方がものすごく重要です.
理学療法士・作業療法士の関わり方が不適切だとノセボ効果でクライアントの機能・能力が低下してしまうことさえあります.
今回は理学療法士・作業療法士の関わり方とノセボ効果について考えてみたいと思います.
プラセボ効果(プラシーボ効果)とは?
プラセボ効果というのは薬品開発では必ず考慮する必要があります.
薬品開発においては,このプラセボ効果を排除するためにダブルブラインド(二重盲検法)といって開発中の薬と全く効果の無い薬を2つのグループに分けた対象者に割り付けてその効果を検証するのが一般的です.
対象者のみならず,処方する側の医師もそれが本当の薬なのか,偽薬なのか判らない環境で処方するので二重盲検法と呼ばれるのですが,処方する側も薬を服用する側もバイアスがかからないようにしたにもかかわらず,ある一定数の方には全く効果が期待できない偽薬であっても,なんらかの効果がでてしまうことがありこれをプラセボ効果と呼びます.
プラシーボ効果と呼ぶ方も多いですが,placebo を日本語化しているだけですので,プラセボでもプラシーボでも同じです.
ノセボ(ノセーボ)効果
次に今回のテーマであるノセボ効果についてです.
ノセボ効果の正式名称はnocebo effectですが,これもプラセボ同様にノセーボ効果と呼ぶ人もいます.
ノセボ効果で良く例に挙げられるのが,医師から行われるインフォームドコンセントの中のマイナスな情報がクライアントの治療効果に影響を及ぼすといったものです.
例えば人工膝関節全置換術を行う場合には,術前にインフォームドコンセントが行われますが,そこでは深部静脈血栓症に伴う肺塞栓症による死亡リスクや,全身麻酔に伴う死亡リスクなどマイナスの情報も詳細に説明がなされる場合が多いです.
もちろんこういった有害事象の確率はかなり低いわけですが,実際に医師から説明を受けるとこのマイナスの情報ばかりが頭の中を駆け巡ってしまうということも少なくありません.
確かに非常に低い確率の合併症ではあっても,100%起こらないとは断言できません.
確率的に100万人に1人しか起こらない副作用であっても,100万人が治療を受ければ1人は合併症を引き起こして死亡に至ってしまうということになります.
こういった情報を過大解釈してしまうとその後の治療効果にも負の影響が及びます.
理学療法士・作業療法士の言葉とノセボ効果
理学療法士・作業療法士で考えてみると,例えばクライアントが「私の運動麻痺はどの程度回復しますか?」といった問いかけをした場合に理学療法士が「ここまでしか回復しませんよ」とか「歩行ができるまでになるのは無理ですね」なんて回答してしまうと,ノセボ効果が生じる可能性は高いです.
われわれ理学療法士・作業療法士の言葉がクライアントに及ぼす影響って非常に大きいです.
逆に「ここまでの回復の方が多いですが,それ以上に回復した方も私は過去に経験したことがあります」とか,「一人で歩行できるようになるのは時間がかかるかもしれませんが,奥さんと一緒に歩行するところまではいけそうですよ」といったような少し肯定的な説明ができればノセボ効果は小さいものとなるでしょう.
要は同じようなことを説明していても,説明の仕方1つでクライアントのその後の治療効果にプラスの影響を及ぼすこともあれば,マイナスの影響を及ぼすこともあるといったわけです.
物理的に100%回復することが困難と思われる場合であっても,できると信じてリハビリテーションに取り組み,トレーニングの量が増えれば,元々目的としていた動作の獲得は困難であっても,1つ下位の動作の獲得は容易になるといった経験は理学療法士・作業療法士であれば誰しも理解できるところだと思います.
今回は理学療法士・作業療法士の関わり方とノセボ効果について考えてみました.
理学療法士・作業療法士が誤った情報をクライアントに提供してはまずいですが,できるだけポジティブにクライアントの意欲を引き出すような説明をして,できるだけノセボ効果を生じさせないような関わり方をしたいですね.
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