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ホールドアンドリラックス(Hold and relax)法を用いたストレッチングって有効なの?
理学療法士・作業療法士がクライアントに対してストレッチングを行う機会は多いと思います.
ストレッチングにも様々な方法が存在しますが,理学療法士・作業療法士が行う機会の多い方法としてホールドアンドリラックス(Hold and relax)法が挙げられます.
ただこのホールドアンドリラックス(Hold and relax)法の有効性については可動域をアウトカムした報告は多く存在するものの筋のstiffnessに着目した効果検証は十分になされておりません.
今回はホールドアンドリラックス(Hold and relax)法を用いたストレッチングが筋のスティフネスに対して有効か否かを明らかにした研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Biology (Basel). 2021 Feb 5;10(2):126. doi: 10.3390/biology10020126.
Comparison of the Acute Effects of Hold-Relax and Static Stretching among Older Adults
Masatoshi Nakamura 1 2, Shigeru Sato 1, Ryosuke Kiyono 1, Kaoru Yahata 1, Riku Yoshida 2, Taizan Fukaya 1 3, Andreas Konrad 4
Affiliations expand
PMID: 33562673 DOI: 10.3390/biology10020126
今回ご紹介する論文は2021年に掲載された新しい論文です.
本邦で行われた研究です.
中村先生の研究は本当に臨床に生かせるものが多く助かりますね.
研究の背景
Various stretching techniques are generally recommended to counteract age-related declines in range of motion (ROM) and/or increased muscle stiffness. However, to date, an effective stretching technique has not yet been established for older adults.
加齢による関節可動域(ROM)制限や筋スティフネスを改善するために,一般的には様々なストレッチングの方法が推奨されております.
しかしながら高齢者に有効なストレッチ方法につちえはまだ確立されていないのが現状です.
研究の目的
Consequently, we compared the acute effects of hold relax stretching (HRS) and static stretching (SS) on dorsiflexion (DF) ROM and muscle stiffness among older adults.
この研究では高齢者の足関節背屈(DF)ROMおよび筋スティフネスに対するホールドアンドリラックス(Hold and relax)法とスタティック・ストレッチの急性効果を比較することを目的としております.
研究の方法
Overall, 15 elderly men and nine elderly women (70.2 ± 3.9 years, 160.8 ± 7.8 cm, 59.6 ± 9.7 kg) were enrolled, and both legs were randomized to either HRS or SS stretching. We measured DF ROM and muscle stiffness using a dynamometer and ultrasonography before and after 120 s of HRS or SS interventions.
対象は高齢男性15名と高齢女性9名(70.2±3.9歳,160.8±7.8cm,59.6±9.7kg)とし,両足をホールドアンドリラックス(Hold and relax)法を用いたストレッチングを行う群とスタティック・ストレッチングを行う群に無作為に割り付けております.
ホールドアンドリラックス(Hold and relax)法を用いたストレッチングまたはスタティック・ストレッチング介入の120秒前と120秒後に,ダイナモメーターと超音波検査を用いて足関節背屈可動域と筋スティフネスを評価しております.
研究の結果
Our multivariate analysis indicated no significant interaction effects, but a main effect for DF ROM. Post-hoc tests revealed that DF ROM was increased after both HRS and SS interventions. Moreover, multivariate analysis showed a significant interaction effect for muscle stiffness. Post-hoc tests revealed that muscle stiffness was decreased significantly after only SS intervention.
多変量解析の結果,有意な交互作用は認められませんでしたが,DF ROMには主効果が認められました.
事後検定により,足関節背屈可動域はホールドアンドリラックス(Hold and relax)法を用いたストレッチングとスタティック・ストレッチングの両方の後に増加し手おりました.
さらに多変量解析では,筋スティフネスに関しては有意な交互作用が示され,事後検定では筋スティフネスはスタティック・ストレッチング介入のみで有意に減少しております.
研究の結論
Taken together, our results indicated that both HRS and SS interventions are recommended to increase ROM, and SS is recommended to decrease muscle stiffness in older adults.
以上の結果から,ホールドアンドリラックス(Hold and relax)法を用いたストレッチングとスタティック・ストレッチングの介入は関節可動域を増加させるために推奨され,スタティック・ストレッチングは高齢者の筋硬直を減少させるために推奨されることが示唆されます.
非常に興味深い研究ですね.
ホールドアンドリラックス(Hold and relax)法を用いたストレッチングは可動域改善には有効ということですが,筋のスティフネスを向上させるにはスタティック・ストレッチングが必要ということですね.
この研究結果からもわかるようにホールドアンドリラックス(Hold and relax)法は筋のスティフネスを向上させるというよりはIb抑制を使って筋の緊張を軽減させるために有効な方法だと考えられますね.