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目標設定支援管理シートを作成しない理学療法士・作業療法士が増えている
数年前の診療報酬改定で目標設定支援管理シートなるものが登場しました.
昨今は診療報酬上のリハビリテーション関連の書類というのは増える一方でわれわれ理学療法士・作業療法士の間接業務も増加しております.
この目標設定支援管理シートですが作成しなければ疾患別リハビリテーション料が減算されてしまうわけですが,最近はこの目標設定支援管理シートを作成しない医療機関も増えております.
今回は目標設定支援管理シートを作成しない理学療法士・作業療法士が増えている件について考えてみたいと思います.
目標設定支援管理シートの算定要件
まずは基本的な目標設定管理シートの算定要件について確認したいと思います.
目標設定支援管理シートですが,医師およびその他従事者が共同して作成することとなっております.
基本的には医師が患者または患者家族に対して説明を行う必要があります.
さらに医師は説明を受けた患者や患者家族が説明に対してどのように受け止めたかを診療録に記載する必要があります.
同時に患者に署名をもらい,原本のシートは患者に交付します.
写しを診療録に添付すれば基本的な流れは終了です.
要介護認定を受けている全ての患者に行う必要がある
この目標設定管理シートの対象ですが,基本的に介護保険を持っている全ての患者に対して行う必要があります.
忙しい医師が全ての作業を全患者に行うのって不可能に近いですよね.
特に病床数が300を超えるような総合病院では,医師は手術や外来業務に追われ,とてもシートを作成して一人一人に説明している時間なんてありません.
また要介護認定受けている患者から署名をいただくのも時間がかかりますし,コロナ禍においては家族に説明して署名を得るのも一苦労です.
電話や郵送なんてもっと手間がかかります.
結果的に目標設定管理シートを作成したとしても説明まで行うとなると不可能に近いです.
10%の減算を許容する
上述したような理由から目標設定支援管理シートをはなから作成することなく,10%の減算を受け入れている病院も少なくありません.
10%の減算というのは運動器であれば1単位当たり165円,1人の理学療法士の受け持ち患者全例が要介護認定を受けていて起算日から一定に日数を経過していたとすれば20単位の取得で1日当たり3300円減算ということになります.
仮に理学療法士が20名勤務していれば1日当たり66000円,月にすると20日労働換算で132万円の計算になります.
あくまで全例を対象とした計算なので数字が大きくなりすぎているところもありますが,けっこうな金額ですよね.
ただこの煩雑な作業を行うくらいなら10%は目をつぶろうという病院が多いのも実際です.
10%減算の許容は厚生労働省の思惑通り
10%減算を許容するというのは実は厚生労働省の思惑通りなんですね.
結局のところ疾患別リハビリテーション料は据え置きにしておいても,この制度のおかげで多くの医療機関のリハビリテーション料が減算されますので,医療費の削減につながるわけです.
目標設定支援管理シートという煩雑な制度を作った厚生労働省の勝利と言えるでしょう.
今回は目標設定支援管理シートを作成しない理学療法士・作業療法士が増えている件について考えてみました.
目標設定支援管理シートに限らず,今後医療費を削減する目的で厚生労働省はさらに煩雑な仕組みを作ってくることは間違いありません.
医師の過重労働を減らすといった目標が掲げられている一方でこういった制度が次々に生み出されております.
タスクシフティングもどこまで進むのか分かりませんが,次回の改定ではこういった煩雑な仕組みが生まれないことを祈るばかりです.
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