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IBM SPSS Statistics 27は効果量の出力が可能に
最近は統計学的検定を行った場合には,有意確率・95%信頼区間と合わせて効果量を算出するのが一般的になってきております.例えば対応のないt検定(2標本t検定)を行った場合には,rやdといった効果量を算出することになります.
これまでのSPSSでは効果量を算出することができませんでしたので,検定を行った後にひと手間必要でした.
今回は効果量が算出できるようになりより便利になったIBM SPSS Statistics 27をご紹介させていただきます.
IBM SPSS Statistics 27
2020年6月に統計解析のスタンダードソフトウェア「IBM SPSS Statistics」の最新バージョン「IBM SPSS Statistics 27」がリリースされました.
2019年4月から14カ月のリリースとなりました.
SPSSといえば1968年の誕生から52年目,歴史のあるソフトですし,理学療法士・作業療法士をはじめ使用している医療職種が多いと思います.
バージョンも27となった最新のSPSS Statisticsでは,基本パッケージのBase Systemに従来オプションモジュールであったデータ準備・評価モジュール「SPSS Data Preparation」とブートストラップ法を実行する「SPSS Bootstrapping」が統合されました.
また新機能として「検定力分析(Power Analysis)」機能が追加され,効果量も設定のダイアログも追加され昨今の効果量が求められる学術シーンなどに対応できるようになりました.
また従来拡張機能として登録されていた「コーヘンの重み付けカッパ(カッパ係数)」が可能となりました.
SPSSでは効果量が算出できなかった
これまでのSPSSでは効果量を算出することはできませんでしたので,検定の際に出力される自由度やt値といった統計量を使用して効果量をエクセル等を使って別に計算する作業が必要でした.
今回のSPSS Statistics27では効果量がチェックすれば自動的に出力されますので,これは非常に便利になったと言えるでしょう.
今や効果量って公表するのが常識になってますし,Rに関して言えば効果量が自動出力されるコマンダーが多く存在しますので,SPSSくらいの高価なソフトであれば出力は標準搭載してほしいと思っておりましたのでこれは嬉しすぎます.
SPSSってマイナーチェンジが多かったですが今回のリリースは価値ある変化が多くてうれしいです.
ところで効果量って何?
効果量というのはデータの単位に依存しない標準化された効果の程度を表す指標です.
先ほど男女間における体重差の大きさを95%信頼区間を用いて考察いたしました.
例えばある研究では男女間の体格差をアウトカムを体重(kg)を用いて検討を行っていたのに対して,ある研究では男女間の体格差を,BMI(kg/cm2)をアウトカムとして検討を行っていたとします.
この場合にはアウトカムの単位が異なりますので2つの研究の間でどちらが男女間の体格差が大きいのかを単純比較することができません.
このように単位の異なる研究から得られた効果の比較や人数の異なる研究から得られた効果を比較する際に役立つのが効果量という指標です.
特にrという効果量と,dという効果量の2種類が代表的です.
rもdも計算方法が異なるだけで意味は同一なのですが,rは0~1(もしくは0~-1)の範囲をとるので理解しやすく,差の検定ではrが用いられることが多いです.
「検定力分析(Power Analysis)」機能が追加された
これもありがたいですね.
検出力分析も使用機会が増えてます.
事前にサンプルサイズを設計してから研究を行うのが当たり前になってきておりますので,これもありがたいですね.
これまではG*powerなんかのソフトを使用してSPSSとは別のところで計算を行う必要がありましたが,今回のリリースで簡単にサンプルサイズを計算できるようになりました.
今回のリリースは本当にかゆいところに手が届くバージョンアップが多くてとても助かります.
今回は効果量が算出できるようになった上に,検出力分析が可能となりより便利になったIBM SPSS Statistics 27をご紹介させていただきました.
これは早めにバージョンアップした方が良いでしょうね.
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