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変形性膝関節症に対する超音波療法って効果あるの?
変形性膝関節症に対して理学療法士が関わる上で温熱療法をはじめとした物理療法の活用というのは欠かすことができません.
温熱療法として用いられることが多いのはホットパックをはじめとする表在温熱ですが,最近はソノフォレシスとよばれるようなモダリティが登場したことで超音波療法に注目が集まっております.
今回は変形性膝関節症に対する超音波療法に関するシステマティックレビューならびにメタアナリシスを行った研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Clin Rehabil. 2019 Dec;33(12):1863-1875. doi: 10.1177/0269215519866494. Epub 2019 Aug 5.
Effects of therapeutic ultrasound for knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis.
Wu Y1,2, Zhu S1,2, Lv Z1,2, Kan S3, Wu Q1,2, Song W1,2, Ning G1,2, Feng S1,2.
今回ご紹介する論文は2019年12月に公開されたばかりの新しい論文です.
研究の目的
To assess the effectiveness and safety of therapeutic ultrasound with sham ultrasound on pain relief and functional improvement in knee osteoarthritis patients. As phonophoresis is a unique therapeutic ultrasound, we also compared the effects of phonophoresis with conventional non-drug ultrasound.
この研究では変形性膝関節症例における超音波療法の有効性(疼痛軽減・機能改善)を明らかにすることとなっております.
またソノフォレシスの効果について,通常の薬物療法非使用の超音波療法と比較する形で検討が行われております.
ちなみにソノフォレシスというのは皮膚に超音波を照射することによって薬物優秀を促進する方法で,ここ数年論文が増えている物理療法の方法論の1つです.
文献レビューの方法
Randomized controlled trials comparing therapeutic ultrasound with sham ultrasound in knee osteoarthritis patients were included. Phonophoresis in the experimental and control groups were compared through conventional ultrasound, and corresponding trials were also included. Two reviewers independently identified eligible studies and extracted data. Risk of bias assessments and therapeutic ultrasound safety assessments were also performed.
まず超音波療法を行った群と超音波療法のシャム刺激を行った群の比較を行った無作為化比較試験を取込基準としております.
ソノフォレシスにかんしてはソノフォレシス超音波照射を行った群と通常の超音波療法を行った群を比較した論文を取込基準としております.
2名のレビュアーが独立して評価を行っております.
バイアスリスクの評価や超音波療法の安全性についても合わせて評価が行われております.
研究の結果
Fifteen studies including three phonophoresis-related studies with 1074 patients were included. Meta-analyses demonstrated that therapeutic ultrasound significantly relieved pain (P < 0.00001) and reduced the Western Ontario and McMaster Universities (WOMAC) physical function score (P = 0.03). In addition, therapeutic ultrasound increased the active range of motion (P < 0.00001) and reduced the Lequesne index (P < 0.00001). Subgroup analysis of phonophoresis ultrasound illustrated significant differences on the visual analogue scale (P = 0.009), but no significant differences on WOMAC pain subscales (P = 0.10), and total WOMAC scores were observed (P = 0.30). There was no evidence to suggest that ultrasound was unsafe treatment.
ソノフォレシスに関連する3つの論文を含む15研究,1074例が最終的なメタアナリシスの対象となりました.
メタアナリシスの結果,超音波療法は有意に疼痛軽減に寄与し,WOMAC身体機能スコアを有意に改善させるといった結果でありました.
加えて超音波療法は自動関節可動域を有意に改善させておりました.
ソノフォレシスに関するサブ分析ではソノフォレシスの有意な疼痛軽減効果が確認されておりますが,機能改善効果は明らかにされておりません.
また超音波照射による危険性が高いといった科学的根拠も無いといった結果でありました.
研究の結論
Therapeutic ultrasound is a safe treatment to relieve pain and improve physical function in patients with knee osteoarthritis. However, phonophoresis does not produce additional benefits to functional improvement, but may relieve pain compared to conventional non-drug ultrasound.
超音波療法は安全な物理療法手段であり,変形性膝関節症例における疼痛軽減や身体機能改善に有用であることが明らかとなりました.
しかしながらソノフォレシスに関しては疼痛軽減には有効であるものの,通常の超音波照射と比較した場合の機能改善効果は確認されなかったといった結果であります.
今回は変形性膝関節症に対する超音波療法に関するシステマティックレビューならびにメタアナリシスを行った研究論文をご紹介させていただきました.
この結果をみると理学療法士も積極的に変形性膝関節症例に対して超音波療法を活用していく必要がありますね.
表在温熱と異なりプローブ操作に関してマンパワーを要する点が超音波の一番の難点ですが,その点を考慮しても疼痛軽減が得られるのであれば活用すべきですね.
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