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2週間の膝装具装着が膝蓋大腿関節痛症例の運動恐怖に与える影響
疼痛に関する様々なエビデンスが報告され理学療法士・作業療法士の疼痛の捉え方もここ10年ほどでかなり変化しました.
昨今では,疼痛を慢性化させる要因は痛みの強度だけでなく,心理的要因が大きく関与していることが周知されてきております.
その中でも運動恐怖(患部を動かすことへの恐怖心)は,日常生活動作の悪化や運動障害に起因し,慢性疼痛発症の危険因子とされています.
運動恐怖というのは,「動かすと痛くなりそうで怖い」または「損傷をしそうで動かすのが怖い」といった感情を表現するものです.理学療法士・作業療法士もクライアントの運動恐怖を軽減させることが,疼痛に対するアプローチの1つとなりますが,この運動恐怖に対するアプローチに関してはまだ報告も少ないのが現状です.
今回は2週間の膝装具装着が膝蓋大腿関節痛症例の運動恐怖に与える影響を調査した報告をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Arch Phys Med Rehabil. 2019 Dec 10. pii: S0003-9993(19)31433-9. doi: 10.1016/j.apmr.2019.10.190. [Epub ahead of print]
Two Weeks of Wearing a Knee Brace Compared With Minimal Intervention on Kinesiophobia at 2 and 6 Weeks in People With Patellofemoral Pain: A Randomized Controlled Trial.
Priore LB1, Lack S2, Garcia C1, Azevedo FM1, de Oliveira Silva D3.
今回ご紹介する論文は2020年に掲載された新しい論文です.
研究の目的
To investigate the effect of a knee brace compared with minimal intervention on self-reported kinesiophobia and function, objective function, and physical activity level in people with patellofemoral pain (PFP).
この研究では膝装具の装着が最小限の介入と比較して膝蓋大腿関節痛症例の自覚的な運動恐怖,身体機能,客観的な運動機能・身体活動レベルに与える影響を明らかにすることを目的としております.
研究デザイン
Single-blind randomized controlled trial (1:1), parallel.
研究デザインは単純盲検無作為化比較試験となっております.
研究対象
Individuals with PFP (N=50).
研究対象は膝蓋大腿関節痛を有する50例となっております.
メインアウトカム
Primary: kinesiophobia (Tampa Scale for Kinesiophobia). Secondary: self-reported function (Anterior Knee Pain Scale), physical activity level (International Physical Activity Questionnaire), and objective function (forward step-down test). Outcomes were assessed at baseline (T0), at the end of the intervention (2wk) (T1), and at 6 weeks after baseline (T2).
主要アウトカムは運動恐怖(TSK)とし,副次的なアウトカムとして患者立脚型の運動機能(AKP scale),身体活動量(IPAQ),
客観的な運動機能として(前方への降段テスト)をベースラインおよび介入から2週後,ベースラインから6週後に評価しております.
介入方法
Participants were randomly assigned to 1 of 2 interventions groups: (1) use of knee brace for 2 weeks during daily living, sports, or painful tasks (brace group) and (2) educational leaflet with information about PFP (leaflet group).
研究対象者を日常生活・スポーツ活動・疼痛が生じる活動中に膝装具を装着する装具装着群と,膝蓋大腿関節痛に関してリーフレットを用いて教育的指導を行う教育群の2群に無作為に割り付けております.
研究の結果
The knee brace reduced kinesiophobia in people with PFP compared with minimal intervention with moderate effect size at T1=mean difference (95% CI) -5.56 (-9.18 to -1.93) and T2=-5.24 (-8.58 to -1.89). There was no significant difference in self-reported and objective function and physical activity level.
結果ですが,膝装具装着群で教育群に比較して有意に運動恐怖が軽減しており,効果量も中等度を示しました.
患者立脚型評価や客観的運動機能,身体活動量に関しては両群間で有意差は認めませんでした.
研究の結論
The knee brace improved kinesiophobia immediately after intervention (at 2wk) and at 6-week follow-up in people with PFP compared with minimal intervention. A knee brace may be considered within clinically reasoned paradigms to facilitate exercise therapy interventions for people with PFP.
膝装具の装着は膝蓋大腿関節痛を有する症例の運動恐怖を即時的に軽減させることが明らかとなりました.
今回は2週間の膝装具装着が膝蓋大腿関節痛症例の運動恐怖に与える影響を調査した報告をご紹介させていただきました.
機能面に関しては主観的・客観的な身体機能に相違はありませんが,運動恐怖に明らかな改善が得られているというのは興味深いですね.
運動恐怖が強い症例に関しては装具装着を勧めて,運動恐怖を軽減するアプローチも慢性疼痛への移行を予防する上で有益だと思われます.
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