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担当理学療法士・作業療法士を変えてください問題
昔からよくあることだと思いますが,クライアントから担当している理学療法士・作業療法士を変更してもらえませんかといったような訴えを聞くことが私自身も年に数回はあります.
クライアントからすれば1日でも早く機能回復を果たし,社会復帰を望んでいるわけですから,理学療法士・作業療法士が提供するリハビリテーションサービスに満足できず,担当者の変更を要望する気持ちもわからなくはありません.
一方で担当変更を言い渡された理学療法士・作業療法士のモチベーションの低下というのも図りしれません(クライアントが満足するサービスを提供できないのだから担当変更は当然だといった考えもあるかもしれませんが…).
今回は担当理学療法士・作業療法士を変えてください問題について考えてみたいと思います.
患者権利意識の向上
私が臨床実習を行っていた20年前にはクライアントの権利意識というのは今ほど高いものではありませんでした.
クライアントも理学療法士・作業療法士にリハビリテーションを行っていただいているといった意識の方が多く,担当している理学療法士・作業療法士を変更してほしいといったような訴えはほとんどありませんでした.
日本では医療行為の価格が診療報酬で定められ,点数表に収載されている医療行為については,妥当な金額で受けられることを国が保障しています.
しかし診療報酬では同じ医療行為であれば,誰が提供したかは反映されず,新人でもベテランでも同じ診療点数を請求することになります.
患者や家族の立場で考えると,提供されたサービスの質を判断することはとても難しく,価格が正しいかどうかは判断できません.
どの理学療法士・作業療法士が行っても同じ価格であれば,より質の高いサービスを受けたいと考えるのが,消費者からすれば当然の心理だと思います.
複数の理学療法士・作業療法士が関わる機会が増えた
回復期リハビリテーション病院をはじめ,1人のクライアントに対して複数の理学療法士・作業療法士が関わる機会が増えたのも,この担当理学療法士・作業療法士を変えてほしいといった問題と関連していると思います.
昔は理学療法士・作業療法士が少なかったので理学療法士・作業療法士が休暇を取得する際には,担当しているクライアントも休みになることが多かったのです.
理学療法士・作業療法士が休暇を取得した場合に,他の理学療法士・作業療法士に依頼して理学療法・作業療法を行ってもらうといったような体制で業務を行えるようなマンパワーを備えた施設はほとんどなかったわけです.
それが昨今は365日体制でリハビリテーションサービスを提供する施設が増え,自分が担当しているクライアントを他の理学療法士・作業療法士に代理でお願いするといった機会は日常茶飯事です.
1人の理学療法士・作業療法士だけが担当していると,クライアントからすればリハビリテーションってこんなもんなんだで終わってしまいますが,複数の理学療法士・作業療法士が関わることで,理学療法士・作業療法士は比較されることになるのです.
この理学療法士・作業療法士の比較というのはサービスの質の向上を考えると,クライアントにとっても理学療法士・作業療法士にとって良いことだと思いますが,こういった複数の理学療法士・作業療法士が関わること自体が,担当理学療法士・作業療法士を変えてほしいといった問題を引き起こしていることも確かです.
理学療法士・作業療法士間の関係性にもヒビが
理学療法士・作業療法士とすれば担当を変更してほしいとクライアントから訴えられたら,それはそれで大きなショックですし,代理で担当となった理学療法士・作業療法士との人間関係にヒビが入ってしまうこともあるでしょう.
そのため担当理学療法士・作業療法士の変更というのは,非常に慎重に取り扱うべき問題だと思います.
そのため担当を変更してほしいと言われるような理学療法士・作業療法士が十分に研鑽していないのだから仕方ないと簡単に片づけられる問題ではないことも多いと思います.
人なので合う合わないは必ずある
またこの問題はクライアントと理学療法士・作業療法士の相性に起因するところもあると思います.
当然ながら,人と人ですので合う合わないが必ずあります.
クライアントを評価した上で適切なアプローチを行っていても,担当理学療法士・作業療法士を変更してほしいと訴えられる場合もあるでしょう.
もちろんクライアントの性格に合わせて接することができるかどうかというのも理学療法士・作業療法士に求められるスキルの1つだとは思いますので,自分とは合わないクライアントにもうまく合わせられるような対応の仕方を学ぶことも重要です.
今回は担当理学療法士・作業療法士を変えてください問題について考えてみました.
おそらくどこの職場にもある問題だと思いますが,組織としては可能な限り理学療法士・作業療法士間の能力のバラツキを減らし,全体の底上げを図ることが最も重要な課題となるでしょう.
上述したように,診療報酬では同じ医療行為であれば,誰が提供したかは反映されず,新人でもベテランでも同じ診療点数を請求することになります.
そう考えるとやはり組織全体としての底上げが必要でしょうね.
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