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人工膝関節全置換術にどのくらい医療費がかかるか知っていますか?
理学療法士・作業療法士が人工膝関節全置換術後のリハビリテーションに携わる機会は多いと思います.
人工膝関節全置換術といえば経年的に手術件数が増加してきておりますが,人工膝関節全置換術に要する医療費も増加している状況にあります.
われわれ理学療法士・作業療法士としても人工膝関節全置換術後にどのくらいの医療費がかかるかを知っておく必要があると思います.
今回は人工膝関節全置換術に要する医療費について考えてみたいと思います.
人工膝関節全置換術に要する医療費は200~300万円
まず人工膝関節全置換術後に要する医療費は人工膝関節手術に要する手術料,インプラントにかかる費用,入院費,リハビリテーション料などに分類できます.
人工膝関節全置換術の手術手技料は37,690点ですので,医療費にすると376,900円ということになります.
これに加えてインプラントに要する費用が50~60万円程度かかります.
さらには入院料やリハビリテーション料まで含めると200万円~300万円が必要となります.
本邦では高額療養制度が設けられておりますので,高額医療の還付は税金から行われます.
つまりクライアント自身の自己負担は高額医療費で10万円で済みます.
ということは税金分で200~300万円から10万円を差し引いた金額から支払われていることになります.
つまり人工膝関節全置換術が1件行われると,200~300万円の税金が使われることになります.
手術のタイミングが早期化している
理学療法士・作業療法士であれば初期の変形が小さいうちに変形性膝関節症に対して適切なリハビリテーションを行えば,手術を回避できる可能性が高いことはご存じだと思います.
単純な話ですが膝関節伸展筋力が向上すれば(Q-angleによる大腿四頭筋の牽引方向を考えれば明らかです),内反変形の進行を予防することが出来ますし,加えて体幹や股関節周囲筋の筋力トレーニングによって,膝関節内反モーメントが軽減されるといったデータも存在します.
つまりは筋力が向上すれば人工膝関節全置換術が不要になる症例も存在するわけです.
7割以上は手術が不要かもなんて話もあるくらいです.
ただ特に関東や関西といった都会では,整形外科医による患者の取り合いが起こっているのも事実です.
手術のタイミングを逃すと他の医療機関で手術をされてしまう可能性が高いといったこともあって,より軽症の段階で人工膝関節全置換術が行われるようになってきております.
さらにインプラントの耐久性が長くなったこともまた手術のタイミングを早期化させている一因だと思われます.
変形性膝関節症も生活習慣病の1つ
人工膝関節全置換術に至る疾病にもさまざまな原因が考えられます.
代表的なのは一次性変形性膝関節症です.
これは主に肥満による膝関節への力学的負荷の増加が原因と考えられております.
なかには骨壊死やリウマチなどの炎症性関節症や外傷後の関節症のような二次性変形性膝関節症が原因となって人工膝関節全置換術を余儀なくされる場合もあります.
本邦では変形性股関節症の場合には先天的な形態的な要因が関節症の原因の大部分を占めるわけですが,変形性膝関節症の場合には生活習慣を中心とした後天的な原因で手術が必要になるケースが多いわけです.
こう考えると自己管理ができないクライアントに対して200~300万円もの税金が投じられることになり,自業自得だし,人工膝関節全置換術は自費(医療保険適応外)で行ってはどうかといった話も浮上してくるわけです.
長期的に見れば介護予防にも繋がり介護費用の軽減につながる?
ただ変形性膝関節症が進行すると移動能力は低下し,結果的には要介護状態に陥る可能性は高いです.
手術によって200~300万円の税金が使われても,その後の介護に必要な費用(これも大部分が税金)を考えれば,早期に手術を行った方が結果的に使用する税金が少なくて済むといった考え方もできます.
今回は人工膝関節全置換術に要する医療費について考えてみました.
除痛効果が著しく術後の成績も向上してきている人工膝関節全置換術ですが,けっこうな医療費がかかるわけですね.
われわれ理学療法士・作業療法士としては適切な保存療法を行い,少しでも手術を回避するための戦略が必要でしょうね.
とはいっても初期の変形性膝関節症のリハビリテーションそのもののオーダーが少なかったり,初期の段階ではそもそも医療機関を受診しないクライアントがほとんどですので,このあたりを変えるような何かしらの仕組みが必要でしょうね.
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