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なぜ訪問リハビリテーションを卒業できないクライアントが多いのか?
来年度の診療報酬改定では医療保険における訪問リハビリテーションにもメスが入れられようとしておりますが,訪問リハビリテーションと言えば問題となるのが,いつまで継続するのかといった問題です.
何年も目標の無いまま訪問リハビリテーションが継続されているケースも少なくないと思います.
今回はなぜ訪問リハビリテーションを卒業できないクライアントが多いのかについて考えてみたいと思います.
訪問リハビリテーションを卒業できないクライアントが多い原因
訪問リハビリテーションを卒業できないクライアントが多い原因は大きく分類すると3つに分類できると思います.
①理学療法士・作業療法士側の問題
②クライアント側の問題
③制度上の問題
この3つです.
今回はこの3つの側面から,訪問リハビリテーションを卒業できないクライアントが多い原因について考えてみたいと思います.
理学療法士・作業療法士側の問題
訪問リハビリテーションで問題になるのが目標をもって理学療法士・作業療法士が関わっているかといった点です.
平成24年の調査によると,訪問リハビリテーションの中で理学療法士・作業療法士が提供するプログラムの第1位が関節可動域運動なのです.
ちなみに通所リハビリテーションでも第3位といった衝撃的なデータがあります.
とりあえず腓腹筋のストレッチをなんとなく行うというような伝統的な訪問リハビリテーションの入り方があるほどです.
これではクライアントの理学療法士・作業療法士への依存を作るだけで,訪問リハビリテーションからの卒業といった議論にはなりにくいですよね.
回復期リハビリテーション病棟におけるなんちゃってリハが問題視されておりますが,このままだと生活期における訪問リハビリテーションにも今後もメスが入れられ続ける可能性が高いですよね.
クライアント側の問題
クライアント側の問題としてはどうでしょうか?
クライアント側の問題として大きいのは訪問リハビリテーションを卒業後にリハビリテーションに継続に取り組める場があるかないかといった問題です.
通所なんかがその1つだと思われますが,通所は苦手,絶対に利用したくないといった利用者の方も少なくありません.
昨今,地域に広がっている通いの場なんかも訪問リハビリテーションを卒業後の社会参加の場だと考えられますが,特に重度の方になればなるほど,現状の地域の通いの場では受け入れが難しいといった状況にあるのは明らかです.
つまり訪問リハビリを卒業できないクライアントは,他に依存先がないから卒業ができないといった考え方もできます.
こう考えるとわれわれ理学療法士・作業療法士もクライアントの依存が過大にならないような関わり方というのが求められます.
事業所の経営的な問題
事業所の経営的に考えた場合に,訪問リハビリテーションからの卒業というのはどうでしょうか?
経営的に考えると,ケアマネージャーや訪問リハビリテーションを担当する理学療法士・作業療法士にそもそも卒業という観念が無い可能性もあります.
単純な話で,クライアントが訪問リハビリテーションから卒業すれば,仕事無くなっちゃいますからね…
それは簡単に卒業できないわけですよ.
せっかく営業して勝ち取った訪問リハビリテーションの仕事を簡単に数ヵ月で終了してしまうと,経営的にも苦しくなるのは目に見えているわけです.
またケアマネージャーの視点で考えてみると,訪問リハビリテーションが卒業できるくらいクライアントの能力に改善が得られて,介護度が改善していくと経営的には,要支援の利用者が増えて報酬は半減してしまいます.
例えば介護度が軽減して訪問リハビリテーションを卒業させることができれば,何らかの加算がつくとかそういったシステムにしない限り,ケアマネージャー側も訪問リハビリテーションに携わる理学療法士・作業療法士側も積極的に訪問リハビリテーションを卒業させようといった気にならないのが実際だと思います.
自分たちの生活かかってますからね…
今回はなぜ訪問リハビリテーションを卒業できないクライアントが多いのかについて考えてみました.
①理学療法士・作業療法士側の問題,②クライアント側の問題,③制度上の問題といった3つの側面から考えてみましたが,こう考えてみると,訪問リハビリテーションの卒業が増えないわけですね.
根本的なところから見直さないとこの問題は解決しない気がしますね.
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