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20分未満の理学療法・作業療法では1単位は請求できない
タイトルを見て,当たり前じゃないかと思われた方がほとんどだと思いますが,診療報酬上は疾患別リハビリテーションに関わらず,われわれ理学療法士・作業療法士はクライアントに対して20分以上理学療法ならびに作業療法サービスを提供することで1単位を算定することができます.
一昨年,1単位20分以上の問題に関して群馬県の公立病院で2,000件を超す診療報酬の不適切請求があったとして,計2,086件,金額にして約1,720万円を返還することとなったのは記憶に新しいと思います.
昔から情報収集・記録の時間を20分に含めてよいのかとか,移動時間はどうするのかとか,クライアントがトイレへ行っている時間はどうするのかとかそういったところってけっこう病院によって運用が異なったり,グレーにされたりといったことが多いと思います.
今回は1単位を取得する際の基本的な考え方について整理しておきたいと思います.
せっかくの報酬を返還することにならないように皆様の施設でも徹底が必要です.
1単位を取得するには必ず20分以上
まずは基本的なところですが,リハビリテーションの実施時間については,クライアントとマンツーマンで理学療法・作業療法を行った時間が重要となります.
1単位は20分以上ですので,仮に19分30秒では1単位を請求することはできません.
もし30分のサービスを提供したのであれば,その場合は1単位を請求して,残りの10分はサービスということになります.
このあたりは皆様も異論ないところだと思います.
マンツーマンでの実施が基本
マンツーマンでの実施が基本ですから,同時間に2名のクライアントに20分以上の理学療法・作業療法を提供したとしても,これでは診療報酬上の単位を請求することはできません.
1名はサービスで1名は請求するといった運用がなされているところもあるかもしれませんが,マンツーマンでない時点で請求ができないと考えた方が良いでしょう.
そもそもマンツーマン対応していないところの方が少なくなってきているとは思いますが,いまだに複数に同時対応して単位を請求されている施設があるとすればアウトですね.
もちろん同時間に2名のクライアントに20分以上の理学療法・作業療法を提供して,記録上の時間だけをずらすといったやり方も監査で不正が発覚すればアウトです.
2人の理学療法士・作業療法士が同時間に介入した場合には?
マンツーマンが基本ではありますが,介助量がどうしても多くて複数の理学療法士・作業療法士が介入をすることが有効な場合もあると思います.
このような場合には,1名の療法士のみが単位を請求すれば問題はありません.
間違っても2名の理学療法士・作業療法士が同時間で請求を行ったり,別時間で請求を行うのはアウトです.
要はサポートでかかわった理学療法士・作業療法士の関わりはサービスということになります.
経営的に考えれば,2名以上が関わる場合には,理学療法士(または作業療法士)と助手や学生といった組み合わせでかかわることが望ましいでしょうね.
病室からリハビリ室への移動の時間は?
これは解釈が難しいところです.
例えば歩行器での病棟内移動が自立している方が病室からリハビリ室に歩行器を使って移動する際の時間を診療報酬の20分以上に含めてよいのでしょうか?
実はまだこのあたりはグレーだと思いますし,皆さんのモラルに委ねられるところだと思います.
歩行器で自立はしているけども長距離歩行中の歩容を評価しているといったような理由を無理矢理つければ認められないこともないでしょう.
また歩行器で自立している人に対して,杖で病室からリハビリ室までの移動を行うというようにすれば,これは移動の練習として捉えても問題ないでしょう.
車椅子の場合どうでしょうか?
急性期においては,座位をとるだけでも大きな意味があるケースも少なくありません.
車椅子移動の際も適切なリスク管理の下で離床していると考えれば時間に含めても問題ないでしょう.
このように移動時間に関しては非常にグレーな状況ですが,重要なのは目的だと思います.
ADLとか病棟リハビリといったような概念を考慮すれば,他者が納得できるような視点で説明ができれば移動時間を時間に含めることは現状では問題ないと考えられます.
情報収集や記録の時間は含めてよいか?
まう診療録への記録の時間を単位算定に係る時間に含めてよいかといった点ですが,これはアウトですね.
群馬県の公立病院ではこの点を指摘されて返還請求が下っておりますので,記録の時間は含められないと考えた方が良いでしょう.
情報収集はどうでしょうか?
確かにわれわれ理学療法士・作業療法士にとってクライアントの情報を収集する作業は必須です.
ただこれは理学療法・作業療法サービス提供の前に準備として行われるものであって,情報収集の時間を単位の時間に含めることはできないと考えた方が良いでしょう.
リハビリテーション実施計画書を作成いたしますので,全般的な情報収集はその点数に含まれていると考えた方が良いでしょう.
日々の情報収集に関してはサービスということになります.
リハビリ中断・中止の場合は?
クライアント状況や診療上の都合によって,リハビリが中断していしまうということもあるでしょう.
例えばクライアントがトイレへ行くということは多いと思います.
これは時間に含めてよいでしょうか?
基本的には離脱時間を除いた時間がリハビリ実施時間となりますので,離脱時間を除いて20分以上の理学療法・作業療法を提供しないと1単位が算定できないということになります.
ただしトイレ動作の評価や練習といった形式で,実際にわれわれ理学療法士・作業療法士がクライアントの排泄動作に付き添って,動作を評価したりアドバイスをすれば,これは練習時間に含めても良いでしょう.
既に排泄動作が自立している場合には離脱時間を除く必要があると考えた方が良いでしょうね.
中止の場合はどうでしょうか?
例えばリハビリ中に意識が消失してしまった場合や,他科受診のために呼ばれてしまったといったようなケースです.
この場合には,中止までに実施した時間が20分に満たない場合には,単位を算定することができません.
今回は1単位を取得する際の基本的な考え方について整理しておきたいと思います.
せっかくの報酬を返還することにならないように皆様の施設でも徹底が必要です.
こう考えると1日18単位の取得って簡単なことではないですよね.
若手の理学療法士・作業療法士の方は上司から単位取得に関して指導を受けることも多いと思いますが,まずは1単位のルールに関して職員間で正しい共通認識を持つことが重要です.
そうでないとテキトーに仕事をしている理学療法士・作業療法士だけが定時に終わって評価されるといったことになってしまいます.
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