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新生涯学習制度における認定理学療法士制度(案)
ようやく待っていた新生涯学習制度における認定理学療法士制度(案)が発表されました.
現在,認定理学療法士を取得されている方にとっても更新がどうなるか,今後認定理学療法士を取得予定の方にとっても取得に必要なハードルがどのように設定されているかは非常に気になるところだと思います.
今回は新生涯学習制度における認定理学療法士制度(案)についてみていきたいと思います.
認定理学療法の資格の定義(到達目標)と位置づけ
目的
認定理学療法士制度は,特定分野において,より質の高い理学療法学の実践ができることにより,国民に高水準の
理学療法学を提供できる理学療法士として認知してもらうことを目的とする
定義(到達目標)
特定の理学療法分野においてより水準の高い理学療法を安全かつ適切に実践できるレベル
対象と要件
登録理学療法士を有する会員の中で,所定のカリキュラム等を修了し,本会が行う認定試験に合格した者
位置づけ
・幅広い総合的な生涯学習(登録理学療法士の更新)を基盤とした認定理学療法士の資格を付与する制度とする
・主として臨床現場に従事する会員が、特定分野の専門性を高めるキャリア開発プログラムとする
認定理学療法士の認定分野がかなり増える?
今回発表された認定理学療法士の骨格を見て驚きました.
認定分野がかなり増えております.
認定領域は基本分野と臨床分野に分かれております.
基本
物理療法,補装具,疼痛管理,解剖学,生理学,病理学,運動学,運動療法,福祉用具,医学・理学療法教育,社会福祉,ほか
赤字が現行の認定理学療法士制度における分野ですが,解剖学や生理学などかなりの分野が増えることが予測されます.
あくまでここに示されたものはすべての分野が作られるものではなく今後の広がりを示すものとされております.
臨床(疾患A)
脳卒中,脊髄障害,神経筋障害,脳外傷,低酸素脳症,神経難病,パーキンソン,末梢神経損傷,認知症,精神,ほか
赤字が現行の認定理学療法士制度における分野です.
認知症が追加されたのは時代のニーズに合ってますね.
臨床(疾患B)
運動器,徒手療法,切断,スポーツ理学療法,骨折・変形,脊椎・脊髄疾患,靭帯損傷,リウマチ,ロコモティブシンドローム,腰痛・肩こり,関節痛,手の外科,足の外科,ほか
赤字が現行の認定理学療法士制度における分野です.
ロコモ,手の外科,足の外科,関節痛なんていうのもかなり専門性の高い分野ですので,必要性は高いですね.
臨床(疾患C)
循環,呼吸,代謝,狭心症・心筋梗塞,心不全,閉塞性動脈硬化症,慢性閉塞性肺疾患,呼吸不全,肺炎,睡眠
時無呼吸症候群,糖尿病,肥満,骨粗しょう症,腎不全,肝不全,排尿・排泄,妊産婦,ほか
いわゆる内部障害系ですがかなりバラエティに富んだ内容となっております.
臨床(疾患D)
発達障害,新生児,脳性麻痺,二分脊椎,先天性疾患,精神運動発達遅滞,知的障害,ほか
いわゆる小児分野ですが,これまたかなり様々な疾患が挙げられております.
臨床(疾患E)
褥瘡・創傷ケア,がん,リンパ浮腫,熱傷,生活習慣病,臓器移植,ほか
がんリハやリンパ浮腫といった理学療法士の職域拡大の方向性を示す内容が含まれております.
臨床(障害)
咀嚼・摂食・嚥下,サルコペニア・フレイル,廃用症候群・老年症候群,高次脳機能障害,歩行,加齢,他
摂食・嚥下,サルコペニア・フレイルなんていうのは非常にタイムリーな認定領域ですね.
臨床(病期・施設)
ICU,急性期,回復期,介護施設,訪問,通所,障害者施設,放課後デイ,機能訓練,行政機関,地域包括支援
センター,保健所・保健センター,特別支援学級・学校,ほか
たしかにこれまでの認定理学療法士の分野というのは病期や職場の特性が考慮されておりませんでしたので,こういった分野も必要ですね.
臨床(公衆衛生)
介護予防,健康・増進,地域理学療法,産業保健,学校保健,地域保健,国際保健,環境・災害保健,ほか
公衆衛生分野もいろいろな分野が増えそうですね.
臨床(管理)
臨床教育,学校教育,管理運営,医療安全,ケアマネジメント,障害相談,サービス管理,医療政策,物品管理,保険外サービス,ほか
管理といってもマネジメントも多様になってますもんね.
保険外サービスなんかがここに上がっているのを見ると時代なと感じます.
臨床(学際)
ウィメンズ・メンズヘルス,再生医療,緩和ケア,家族ケア,靴,プライマリケア,運動処方,障がい者スポーツ,学校体育・部活動,保健指導,ほか
ウィメンズヘルスや再生医療なんていうのも非常に時代のニーズにマッチした領域ですね.
認定理学療法士の取得要件
<前提条件>
登録理学療法士を有する
まずは前提条件として登録理学療法士を取得していることが条件になるようです.
<取得要件>
・各分野でのカリキュラム(40コマ(60時間)以上60コマ(90時間)上限)を受講し試験に合格する
① 指定研修カリキュラムの受講 10コマ
② 臨床認定カリキュラムの受講必須:10コマ 選択:4コマ以上
③ 日本理学療法学術研修大会への参加 1回
④ 理学療法士講習会の受講 2日間(1日間×2本もしくは2日間×1本)
⑤ 筆記試験に合格すること
・臨床認定カリキュラムの必須10コマは,協会が定めた「科目名・到達目標・キーワード」に則して,運営を担える病院・施設や養成校を教育機関として,全国各地で実施していくこととしてはどうか.
講習会の受講に加えて,日本理学療法学術研修大会への参加,理学療法士講習会の受講 2日間といったところが新しい要件ですね.
日本理学療法学術研修大会への参加なんていいうのは日本理学療法学術研修大会への参加者が少ないことを考慮した誘導にも思えます.
これだけみると認定理学療法士資格に関してはこれまでより著しくハードルが上がったといった印象は受けませんが,やはりカリキュラムの受講時間が長くなったといった点が一番のハードルでしょうか.
認定理学療法士(基礎)が無くなる?
認定理学療法士(ひとを対象とした基礎領域),認定理学療法士(動物・培養細胞を対象とした基礎領域)は専門理学療法士の基礎分野へ移行されるようです.
以降の方法がどのようになるのかは非常に気になりますが,認定理学療法士の趣旨からすれば基礎領域というのは認定理学療法士には向かない内容だという判断なのだと思います.
認定理学療法士の更新制度
最後に現在認定理学療法士を取得されている方の更新要件です.
<共通>
・研修時間をポイントに換算する
・30分間=0.5ポイントを最小時間とする
・更新研修の受講を必須とする
・更新回数で永久付与
更新回数が5回を超えると永久付与となるといった案のようです.
こうなるとこれまでの更新回数が含まれるのかどうかも気になりますね.
5回といっても5年×5回ですので永久付与までに25年かかることになりますね(笑)
<認定理学療法士 5年間100ポイント>
① 当該年度の更新対象者であること
② 事例・症例・事業(またはレビューレポート)等の登録を必須とする
*事例・症例・事業(またはレビューレポート)等の登録 最低10例=10ポイント(最大80例まで可)
③ 専門的臨床技能の維持・研鑽のための活動における90ポイントの取得
今回は新生涯学習制度における認定理学療法士制度(案)についてみていきたいと思います.
あくまで案ですのでこれからパブリックコメント等で修正される可能性もありますが,認定理学療法士制度はドラスティックな変化は無い印象ですので,登録理学療法士の研修時間等を考えるとこのままの案で決まりそうな気もします.
いずれにしても今後の動きから目が離せませんね.
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