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10,000歩歩きましょうって指導は間違い?
理学療法士がクライアントの身体活動量を向上させるために指導を行うことは多いと思います.
身体活動量に関する指導の中で,昔から身体活動量の1つの目安として10,000歩といった目安が使用されることが多いと思います.
ただこの10,000歩って本当に意味があるのでしょうか?
今回は身体活動量の目安となる10,000歩について再考してみたいと思います.
高齢女性の歩数と死亡率の関連性が明らかに
今回の記事の元になるのが,NEW YORK POSTに掲載されていたハーバード大が発表した新たなウォーキングに対する研究結果です.
この研究結果はJAMAに掲載された論文が元になっております.
参考文献は記事の下方をご参照ください.
この研究は,60歳前後から100歳前後の女性約16,000人を対象とした4年間に渡る前向き観察研究です.
この研究では歩数,歩行スピードに加えて生活習慣や既往歴・合併症などについて調査が行われております.
この研究によって非常に興味深い事実が明らかになったのです.
4年間の実験中に504名の死亡が確認されております.
毎日平均して4400歩程度歩いていた女性たちはその半分ほどしか歩いていない女性たちと比べて死亡率が格段に低い結果でありました.
また非常に興味深いのは7500歩以上の歩行をしていた高齢者は概ね全例が,死亡率が低い結果でありましたが,一方で7,500歩歩行していた群と10,000歩歩行していた群で死亡率に明らかな差はありませんでした.
当然ながら年齢やその対象者の健康状態などにもよりますが,60歳~100歳前後の女性であれば4400歩~7500歩が死亡率の低下に繋がる目安と考えて良さそうです.
この研究結果から理学療法士の運動指導を変える必要がある
10,000歩は歩くことが健康に有害に作用するわけではありませんが,10,000歩歩いても7,500歩でも死亡率に差が無いのであれば,まずはハードルを下げて7,500歩を目標にする指導方法が適切だと考えられます.
もちろん普段から10,000歩歩いている場合には,それで良いわけですが,毎日10,000歩歩かないといけないといったのは迷信だったわけですね.
10,000歩って区切り良いですし,万歩計なる身体活動量を測定する機器の名称からもわれわれ日本人は10,000歩におどらされてきたところがあるわけですが,この10,000歩を何も疑いを持たずに目標として指導していた理学療法士が多いのも事実だと思います.
最も重要なのは継続
例えば10,000歩を3日間継続しても3日坊主で終わるよりは,5,000歩でも1カ月継続できる方がよっぽど価値があるわけです.
その方の性格にもよるのでしょうが,気負いすぎて目標を高く設定してしまうとやはり長続きしません.
皆様もこの記事をきっかけに自分自身の身体活動量の目標設定やクライアントへの運動指導の際の参考にしてみてください.
文献
1)Lee IM1,2, Shiroma EJ3, Kamada M4, Bassett DR5, Matthews CE6, Buring JE1,2. : Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women. JAMA Intern Med. 2019 May 29. doi: 10.1001/jamainternmed.2019.0899. [Epub ahead of print]
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