目次
膝OAにおけるリハはTKA・THA移行へのリスクを軽減できるのか?
理学療法士・作業療法士が人工膝関節全置換術例や人工股関節全置換術例の理学療法・作業療法に携わる機会は多いと思います.
人工膝関節全置換術や人工股関節全置換術の原因となる変形性膝関節症例や変形性股関節症例においては,人工関節全置換術を行うことなく保存的に症状に寛解が得られることが理想です.
しかしながら,われわれ理学療法士・作業療法士が提供する変形性膝関節症例や変形性股関節症例に対するリハビリテーションというのは人工関節全置換術移行へのリスクを低減できるかどうかは不明であります.
今回は,変形性関節症例における早期のリハビリテーション介入が人工膝関節全置換術・人工股関節全置換術移行へのリスクを軽減できるのか否かを明らかにした報告を紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Medicine (Baltimore). 2019 May;98(21):e15723. doi: 10.1097/MD.0000000000015723.
Can early rehabilitation after osteoarthritis reduce knee and hip arthroplasty risk?: A national representative cohort study.
Chen WH, Tsai WC, Wang HT, Wang CH, Tseng YT.
今回ご紹介する論文は2019年に掲載された新しい論文です.
研究の目的
This retrospective cohort study evaluated the effects of different frequencies of physical therapy intervention on the total knee arthroplasty (TKA) and total hip arthroplasty (THA) risk of osteoarthritis (OA) patients.
研究デザインは後ろ向きコホート研究となっております.
後方視的に変形性関節症例に対することなる理学療法介入の頻度が,人工膝関節全置換術および人工股関節全置換術のリスクに与える影響を評価しております.
研究の方法
We sampled 438,833 insurants from Taiwan National Health Insurance Research Database for patients diagnosed as having OA during 2000 to 2013. OA who received physical therapy within in the first year of OA diagnosis were divided based on the number of sessions they received in that first year: >24, 13-23, and <12 sessions.
対象は2000年から2013年にかけて変形性関節症の診断で台湾国立健康保険研究データベースに登録された438,833例となっております.
台湾国をあげた非常に大規模な研究となっております.
変形性関節症の診断から1年以内に理学療法を実施したクライアントを1年間に24セッション以上理学療法を受けた群,13-23セッション理学療法を受けた群,12セッション以下の理学療法セッションを受けた群に分類しております.
研究の結果
The results revealed that the TKA and THA incidence rates among patients aged 60 to 80 years were respectively 3.5% and 0.9% in the >24 cohort and 4.9% and 1.4% (all P < .001) in the comparison cohort. Moreover, the HRs of TKA and THA in the >24 cohort were 0.77 (0.67-0.87, P < .001) and 0.71 (0.53-0.96, P = .024), respectively. By contrast, no significant differences were noted between the 13-23 and <12 cohorts and their respective comparison cohorts.
結果ですが,60~80代の症例においては,24セッション以上の理学療法セッションを受けた症例における人工膝関節全置換術・人工股関節全置換術移行割合はそれぞれ3.5%,0.9%であり,対照群では4.9%,1.4%でありました.
さらに人工膝関節全置換術および人工股関節全置換術発生のハザード比は24セッション以上の理学療法疽受けた群で0.77(TKA),0.71(THA)でありました.
一方で13~23セッションの群と12セッション以下の群では有意差は見られませんでした.
研究の結論
In conclusion, our study results indicated that elderly patients aged 60 to 80 years who underwent >24 physical therapy sessions within 1 year of receiving an OA diagnosis exhibited reduced of TKA and THA risks.
この研究結果から,60~80歳の変形性膝関節症例が人工膝関節全置換術・人工股関節全置換術へ移行しないためには24セッション以上の理学療法を受けることが重要であると考えれます.
今回は,変形性関節症例における早期のリハビリテーション介入が人工膝関節全置換術・人工股関節全置換術移行へのリスクを軽減できるのか否かを明らかにした報告を紹介させていただきました.
われわれ理学療法士・作業療法士にとっては非常に心強い結果ですが,結局のところどういった介入を行うのかが重要であることは言うまでもありません.
コメント