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なんちゃってリハビリという言葉を聞いたことはありませんか?
日本理学療法士協会に所属されている方であれば(所属されていなくても),「なんちゃってリハビリ(理学療法)」という言葉を耳にされたことがある方は多いと思います.
「なんちゃってリハビリ(理学療法)」は読んで字のごとく,「リハビリ(理学療法)もどき」ということですが,現状のリハビリテーション(理学療法)で問題視されている「なんちゃってリハビリ(理学療法)」というのはいったいどのようなことを指すものでしょうか?
今回は理学療法士・作業療法士の皆様も気になる「なんちゃってリハビリ(理学療法)」について考えてみたいと思います.
「なんちゃってリハビリ(理学療法)」のもとは?
この「なんちゃってリハビリ(理学療法)」という言葉が生まれたのは,日本理学療法士協会の半田会長が厚生労働省の診療報酬担当者と意見交換をする場であったようです.
診療報酬改定に関して協議している中で,この「なんちゃってリハビリ(理学療法)」という言葉が出てきたようです.
日本理学療法士協会の半田会長は,数か月前にも厚生労働省の中でその言葉を別の職員から聴いていたそうです.
そして日本理学療法士協会の会長は後に「この言葉の裏側には,リハビリテーション医療に対する不信感が強くあることを,よくよく理解する必要があります」と発言しております.
具体的に何を指しているのでしょうか?
具体的には以下の3つに集約されます.
- リハビリテーション医療全体としての目的意識の欠如
- リハビリテーション職の知識・技術不足
- リハビリテーション科としてのチーム医療の崩壊
まずは昨今の理学療法士の目的意識の欠如,知識・技術不足です.
クライアントに提供するリハビリテーションサービス(理学療法)の内容が,歩行練習ではなくお散歩になってしまっているとの指摘がなされました.
また腰を擦るなどのマッサージ行為が多く見られることについても言及されております.
急性期や回復期でもクライアントに歩行練習を行う機会は多いと思います.
理学療法士はクライアントが理解しやすいよう二「お散歩しましょう」いう言葉で歩行練習を行うことも少なくないと思います.
これの何が問題なのでしょうか?
日本理学療法士協会の半田会長がある病院の視察をした際に,クライアントの前を理学療法士が歩いていたそうです.
これは「お散歩」という言葉だけではなくまさに,「実情として散歩でしかない」という印象を受けたそうです.
また半田会長は,「我々理学療法士はクライアントに運動をさせるのではなく,運動療法を行うからこそ診療報酬が得られるのだ.散歩でもなく,歩行でもなく,歩行練習をさせるからこそ診療報酬をいただけるのだ.単位の水増しのためのお散歩,これで基本的動作能力に関する専門職といえるのか?」といった指摘がなされております.
また視察の中で日本理学療法士協会の半田会長が気になることがもう一つあったそうです.
それは回復期病棟のハビリ室を覗くとことのほか静かであったようです.
けっしてクライアントがいないわけではなく,多くのクライアントがベッド上臥位で,リハビリ職は背中や腰をさすっているわけです.
その状況下でリハビリ室に活気があふれることはあり得ません.
私自身もマッサージ的行為をすべて否定する気はありませんが,それに終始している現状があることが大きな問題だと思います.
こういった状況の原因はいくつか考えられますが,その根幹として単位数によってリハビリテーション医療が評価されるシステムが挙げられます.
回復期リハビリテーション病棟で充実加算を算定するためには,新人の理学療法士であっても一人のクライアントに3~4 単位の理学療法を実施しなければならない状況となりました.
結果としてマッサージで時間を費やすといった状況が生まれているのだと思います.
マッサージについてはすべて不要とは思いませんが,要は目的です.
どのような基本動作・日常生活動作を獲得するためにマッサージが必要なのかを再考する必要があります.
ただクライアントの慰安のために,クライアントに依頼されたからマッサージをしているというのでは「なんちゃってリハビリ(理学療法」と言われてしまっても仕方ありません.
歩行練習はどう考えれば良いのか?
屋外歩行練習については以前にも取り上げさせていただきましたが,私自身は屋外歩行練習=散歩だからNGとは考えておりません.
重要なのは目的だと思います.
何のために屋外歩行練習をするのか,また億無い環境と異なるとどのように歩容が変化するのか,屋内での歩行に見られない特徴をきちんと評価する必要があります.
さらに歩行距離が長くなった時に,歩容がどのように変化するのか,耐久性はどうかといったさまざまな視点を持って屋外歩行練習を行えば,これは散歩とは次元の異なるものとなります.
何も考えていない理学療法士は歩行させることが歩行練習だと考えている場合が多いわけですが,われわれは専門職として歩行を評価し,トップダウン形式でそこから臨床推論し,必要な機能を改善させるといった当たり前のことができていない理学療法士が多いのが,このような「歩行練習=散歩」といった大きな原因ではないかと思います.
今回は理学療法士・作業療法士の皆様も気になる「なんちゃってリハビリ(理学療法)」について考えてみました.
私自身もこの記事の作成を通じて,当たり前ですが「なんちゃってリハビリ(理学療法)」を提供してしまわないように目的を持ってリハビリテーション(理学療法)を行っていく必要があるなと感じました.
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