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理学療法士・作業療法士のための上手な質問の仕方
理学療法士・作業療法士がクライアントの評価を行う上では,クライアントからさまざまな情報を収集する必要があります.
情報収集の方法の1つとしてクライアントに質問するといった行動が挙げられます.
効率的に情報を収集するためにどのような質問の仕方が有効でしょうか?
今回は理学療法士・作業療法士のための上手な質問の仕方について考えてみたいと思います.
情報収集のために必要な質問
理学療法士・作業療法士はクライアントから情報を得るためにさまざまな質問をします.
例えば,リハビリテーションに期待することは何か,手術後の痛みはいつどこがどのように出現するのか,昨日の運動療法後の疼痛はどうであったか,ご家族の方は在宅復帰についてどう考えておられるか,職場復帰に際してどのような動作が必要かなど質問の内容も多岐にわたります.
したがって効率的に情報を収集できるよう質問ができることが重要です.
理学療法士・作業療法士が質問をする場合には,質問の方法を変えることによって,限られた時間でも必要としている情報を効率的に引き出すことが可能です.
質問形式
まず重要となるのが質問形式です.
質問形式は大きく分類するとオープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンに分類できます.
オープン・クエスチョンとは?
オープン・クエスチョンとは開かれた質問といった日本語訳があてられますが,「はい・いいえ」で答えられる質問ではなく,質問された人が自由に答えることができる質問形式です.
例えば「今日は膝の痛みはどんな具合ですか?」と質問をした場合には,クライアントは「今日は昨日に比べたら楽です.でも歩き出すと,やっぱり傷口がチクチク痛くなりますね」とかそういった回答をされます.
オープン・クエスチョンの場合には,自由度の高い答えが引き出せますので,時間がある場合には,相手の言葉でいろいろな情報を引き出す方法が有効です.
しかしながら時間のない場合や,的を射ていない回答になりがちなクライアントの場合には注意が必要です.
クローズド・クエスチョンとは?
クローズド・クエスチョンとは閉ざされた質問といった日本語訳があてられますが,「はい・いいえ」で答えられる質問形式です.
「今日は痛みがありますか」と質問をした場合には,「はい,あります」,「いいえ,今日はありません」と答えることができます.クローズド・クエスチョンの場合は,時間のない場合には非常に便利な方法です.
クローズド・クエスチョンのデメリットとしては,答える回答に自由度がありませんので,この質問形式が続くと質問されている側が尋問を受けているような気持ちになり,自分の言いたいことが回答できず不満が残りやすいといった点が挙げられます.
質問をする際の注意点
質問に答える準備状態を作る
誰でも予期していない質問を突然されたらびっくりするでしょう.
質問をする際には,相手が質問を受け取ることができる準備状態を作ることが重要です.
例えばクッション言葉の利用が有効です.
クッション言葉とは,理学療法士・作業療法士がクライアントの状況に配慮して心の準備状態を作るための潤滑油的な言葉のことを指します.
質問する際には,その質問によってクライアントがどのような気持ちになるのかを想像するとともに,相手の性格や状況に応じて使うクッション言葉に配慮しましょう.
聞きにくいことを聞く場合
「ちょっとお伺いしにくいことなのですが,よろいでしょうか」
「お話しにくいことかもしれませんが,お聞ききしてもよろしいですか」
「もしお話したくなければ,お答えいただかなくてもけっこうなのですが…」
クライアントが話の途中である場合
「すみません,お話の途中で申し訳ありませんが,今のお話でもう1つ伺っておきたいことがあるんですが,よろしいですか」
「あの,今のお話に関連して,お聞きしてもいいですか」
「ところで.ちょっと伺ってもよろしいでしょうか」
本来,話の腰を折ることは失礼な行為ですが,時間的な制約や状況によって,クライアントが話をしている最中に介入せざるをえない場合もあります.
そのような場合は,クッション言葉を効果的に使って失礼のないようにしましょう.
クライアントが何かに集中している場合
「すみません,今ちょっとお時間いただいてもよろしいですか.実は,○○についてお伺いしておきたいことがありまして…」
「○○さん,○○の最中にすみません,お尋ねしたいことがあるのですが」
「お忙しいところ申し訳ございません,伺っておきたいことがありまして,少しお時間よろしいでしょうか」
繰り返しされる同じ質問に注意する
医療を受けている患者さんは,他の部門でも同じ質問をされている可能性があります.
繰り返し同じことを聞かれるのはストレスになるものなので,またこの質問かとクライアントが思う状況はできれば避けるようにしましょう.
しかしながら,以下のような理由によってあらためて聞くことで新たな情報が得られる可能性があることを頭に入れておきましょう.
例えば,情報が更新されている場合もあります.
確認の意味で質問したことにより,新たな情報が得られることもあります.
またクライアントによって質問の答えを変えている場合もあります.
看護部門で看護師に対しては「自分ではできない」と言っているのに,リハビリ部門で理学療法士・作業療法士には「できる」と回答するなどの情報の差があれば,そこから考えられる理由が評価につながります.
さらに直接情報を得ることで,本音がわかる場合もあります.
書面上に記載されている活字では分からない言葉以外の微妙なニュアンスから,これまでの情報とは異なる本音が明らかになる場合もあります.
クライアントによっては「またその質問ですか,さっきも聞かれました」などとストレートに言われる方もおり,聞くことが申し訳なくなる場合もありますが,上記のようなことを勘案した上で,理学療法士・作業療法士の視点から考えたいことがあるものですから,状況を教えてもらえませんかなどと理学療法士・作業療法士が質問する意味を伝えましょう.
答えていただいた情報がヒントになり,新たな質問が生まれ,それによって重要な情報を引き出すことができるということは少なくありません.
今回は理学療法士・作業療法士のための上手な質問の仕方について考えてみました.
皆様も日々,なんとなくクライアントにさまざまな質問をされていると思いますが,質問の方法について改めて見直してみると新たな発見があるかもしれませんね.
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