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理学療法士の視点で膝蓋骨脱臼の病態を考える
膝蓋骨脱臼は理学療法士がリハビリテーションを行うことの多い疾病の1つです.
特に膝蓋骨脱臼の理学療法では,動的なアライメントに着目した上で再発予防を目的とした介入が重要となります.
また膝蓋骨脱臼を受傷したクライアントに対して理学療法を行う上では,膝蓋骨脱臼の病態を十分に理解しておくことが重要となります.
今回は理学療法士の視点で膝蓋骨脱臼の病態を考えてみたいと思います.
膝蓋骨脱臼がなぜ起こるのか?
これまでにさまざまな研究にて膝蓋骨脱臼がなぜ起こるのかが検討されておりますが,明確な根拠は得られていないのが現状です.
いずれにしても,膝蓋骨が外側へ逸脱しやすい何らかの特徴が膝蓋骨脱臼の大きな原因であると考えられております.
機能解剖学的要因
膝関節は生理的に外反位であり,膝蓋骨には外方への力を生じるため.外方への運動を関節の適合性や内側膝蓋大腿靱帯(medial patellofemoral ligament:MPFL),内側広筋などで制動する必要があります.
大腿骨滑車や膝蓋骨の形成不全によって,膝蓋大腿関節の適合性が低下すると,膝蓋骨は外側へ偏位しやすくなりますので,こういった解剖学的な要因が膝蓋骨脱臼の1つの原因と考えられます.
膝蓋骨脱臼が起こりやすいかどうかを確認する為には,膝関節のQ-angleを確認することが重要となります.
このQ-angleが増加することで,膝蓋骨への力が外方へ作用しやすくなりますので,Q-angleが大きいクライアントほど膝蓋骨脱臼が起こりやすいと考えられます.
特にQ-angleは男性よりも女性で大きいことが明らかにされております.
そのため男性よりも女性に起こりやすいのが膝蓋骨脱臼の1つの特徴になります.
また膝蓋骨脱臼を考える上では内側膝蓋大腿靱帯(medial patellofemoral ligament:MPFL)といった組織に注目することが重要です.
MPFLは膝蓋骨の内側支持機構の第1因子であり,特に30°以下の膝関節伸展域では軟部組織による外側への制動の50%以上を担うとされております.
MPFLは内側広筋の付着部でもありますので,MPFLが弛緩することで筋による制動機能も低下すると考えられます.
運動学的要因
膝蓋骨は大腿四頭筋のバランスよい収縮によって上方に牽引され,大腿骨滑車に適合しております.
内側広筋に機能不全が起こると,膝蓋骨の内方への牽引力が低下します.
一方で外側広筋や大腿筋膜張筋といった外側軟部組織の過緊張によって,膝蓋骨は過度に外方へ牽引されることとなります.
したがって膝蓋骨脱臼を考える上では,内側広筋の機能不全や外側軟部組織のtightnessに着目することが重要となります.
バイオメカニクス的要因
膝関節の運動中の姿勢もまた,膝蓋骨の外方への力に影響します.
運動中に膝関節が過度に外反,外旋すると,膝蓋骨はより外方に牽引されやすくなります.
膝蓋骨脱臼の病態
膝蓋骨脱臼の受傷の特徴として,ポップ音が挙げられます.
膝蓋骨脱臼が起こる際には,ポップ音とともに膝蓋骨は大腿骨滑車面から逸脱します.
通常は膝関節の伸展運動に伴い自然整復されることも多いといった特徴があります.
また完全脱臼ではMPFLは損傷します.
大腿骨側での損傷が多く,大腿骨内頼部に腫張と疼痛を訴えることが多いです.
まれではありますが外傷性の脱臼の場合には,膝蓋骨側で剥離損傷や骨折を伴う場合もあります.
また大腿骨内側上頼部や関節内に強い腫張が出現し,関節内には血腫を伴うのも大きな特徴です.
症状
一番目立った症状としては膝くずれ(giving way)が挙げられます.
膝蓋骨が外側に脱臼すると,大腿骨滑車から逸脱し膝を支持できなくなるため,膝がガクッとなり脱力する「膝くずれ」が起き,転倒することもあります.
またMPFLが損傷により機能不全となることで,膝蓋骨は過度に外方に動きやすくなります.
当然ながら可動域制限や荷重制限も起こりますが,これらはいずれも膝蓋骨のマルトラッキングによって生じる疼痛によるものだと考えられます.
今回は理学療法士の視点で膝蓋骨脱臼の病態を考えてみました.
動的アライメントや筋活動など膝蓋骨脱臼予防を果たす上では考慮すべきことは多いですが,理学療法士だからこそ介入できる部分も多いと思います.
適切な評価を行った上で,再発予防に向けた介入を行いたいものです.
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