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認定理学療法士症例報告レポート記載例 代謝
このブログの中でも数回に分けて取り上げさせていただきましたが,2021年以降,日本理学療法士協会の認定理学療法士制度は大きく変わることが明らかにされております.
そのため昨年度もものすごい数の認定理学療法士受験者数となりました.
今年度もまたかなりの数の理学療法士が認定理学療法士取得に向け,試験を受けることが予測されます.
認定理学療法士取得に当たっては,ポイント・症例報告レポート・認定試験といった3つのハードルをクリアする必要があります.
症例報告レポートに関してはどういった形式で記述すべきかといったご質問をいただきますが,具体例のようなものも出されていないのが現状です.
今回は認定理学療法士(代謝)症例報告レポートの記載例をご紹介させていただきます.
症例報告を記載する前に審査指標項目を把握しよう
症例報告の審査に関しては審査指標項目というのが決められております.
認定理学療法士(代謝)に関しては,以下の5つのポイントが審査指標項目となっております.
実は認定理学療法士(代謝)に関しては,審査指標項目が認定理学療法士(呼吸器)や認定理学療法士(循環)と同じなのです.
闇雲に記載するのではなく,まずはこの審査指標項目を把握することが重要です.
1.事例・症例の疾患もしくは状況課題が申請認定領域として適切に選択されているか,および事例・症例紹介・経過・(現)病歴が的確かつ明確に述べられている
まずは当然ですが,糖尿病等の代謝障害を合併したクライアントを対象としているかといったところです.
代謝障害というと肝疾患や糖尿病をはじめとする膵臓の障害などが挙げられます.
特に明らかな疾病が無くとも,例えば糖尿病予備軍に対して予防的な介入を行った場合でも,この代謝領域における状況課題として妥当だと考えることができます.
2.評価および問題点が的確かつ明確に述べられているか
評価結果をもとに問題点を抽出できているかどうかがポイントとなります.
評価結果は客観的である必要がありますので,できるだけ数値で表せるような尺度を用いて評価を行うことが重要です.
一般的な血液検査結果はもちろんですが,血糖値やHbA1Cといった血糖に関するデータは必須となるでしょう.
またCGMや血清Cペプチド,CPR index(インスリン分泌能) ,BUN,クレアチニン,eGFR(推算糸球体施過量) も合わせておさえておきたいところです.
さらに病態と機能低下,あるいは機能低下と能力低下を関連付けた上で問題点を抽出することが重要となります.
理学療法士の視点で記述することが重要ですので,最終的には日常生活動作と関連付ける視点も重要です.
特に血糖コントロールに関しては在宅復帰後のセルフマネジメントも重要となりますので,アドヒアランス等も考慮した上で問題点を抽出することが重要となります.
3.介入内容が十分に的確であり明確に述べられているか
評価から導き出された問題点に対してどういった介入を行ったのかを具体的に記載します.
この介入内容が評価から導き出した問題点とかけ離れたものであれば審査は低い点数となってしまうでしょう.
介入ありきではなく評価ありきでどういった介入を行ったかを記載することが重要です.
4.結果・成果が客観的かつ的確であり,明確に述べられているか
評価結果は客観的である必要がありますので,できるだけ数値で表せるような尺度を用いて評価を行うことが重要です.
可能であれば初回介入時の客観的データと照らし合わせながら,記述できるとよいでしょう.
5.考察において論理的であり明確に述べられているか
具体的には疾病と機能低下,あるいは機能低下と日常生活を関連付けた上で問題点を抽出した流れ,そして問題点に介入を行ったことでどのような結果・成果が得られたかを論理的に記述します.
ここで日々の臨床の中で頭の中で行っているクリニカルリーズニングを言語化することが重要となります.
認定理学療法士事例・症例報告サマリー用紙不適切な記入の例
こんなのはNGですので,気をつけましょう.
- 字数が不足している,または字数が多すぎる(1症例につき全体の文字数は 1,000~1,200 程度)
- 書式が古い(HP に掲載の最新の書式で作成してください)
- 客観的評価項目や数値が不十分である(検査結果に単位が記載されていることが望ましい)
- 開始時所見や終了時(報告時)所見の理学所見が不十分
- 考察について内容が経過報告になっていて,考察になっていない(ただ客観的データを並べるだけではダメです)
認定理学療法士症例報告レポート記載例 代謝
診断名・障害名:Ⅱ型糖尿病,陳旧性心筋梗塞,脂質異常症,高血圧症
年齢:60歳代後半
性別:男性
区分:外来
病歴
10年前,5年前の2度にわたり,下壁梗塞のため,他院にてPCI施行となる.
今回,狭心症状の再燃のため,かかりつけ医を受診したが,,PCIは困難と判断され,血糖コントロール目的で当院へ外来通院することとなった.
その後眼科を受診し糖尿病性網膜症は否定されている.
営業担当で徹夜することが多く,運動習慣は無く,炭酸飲料・せんべい・菓子パン・果物・飴などを好んで摂取していた.
評価
初回介入時の体重は77.8kg(BMI26.5),空腹時血糖は162mg/dL,HbAIcは8.3%,CPR index(インスリン分泌能) は3.15,BUN(尿素窒素) は134mg/dL,クレアチニンは1.13mg/dL,eGFRは51mL/min/1.73cm2であった.
DPP-4阻害薬,ビグアナイド剤,冠血管拡張薬,抗血小板薬,脂質異常症用薬,降圧薬カルシウム拮抗薬),β遮断薬を内服中であり,インスリン治療は不要な状況であった.
内服アドヒアランスは比較的良好であった.
膝伸展筋力左右平均はl.95Nm/kg,片脚立位保持時間は94秒,FRT:39.0cm,6分間歩行距離は531m(共通訴えあり)であった.
体組成検査(インピーダンス法)では除脂肪量は55.0kg(骨格筋量:30.0kg),体脂肪量は22.0kg(体脂肪率:28.7%),基礎代謝量は1.548kcalであった.
運動の必要性に関する理解は良好であったが,狭心痛出現に対する恐怖心が強く運動を実践できない状況であった.
問題点
#1.血糖コントロール不良(インスリン抵抗性増大)
#2.労作時の狭心痛
#3.運動実践に対する恐怖心
介入内容
立位でのウォーミングアップ(10min)の後に,自転車エルゴメータ(50W×5min),トレッドミル(3.5km/h傾斜10%×15分),臥位・座位でのクーリングダウン(10min),自主トレーニング指導を行った.
運動強度の決定に当たっては,胸部症状の有無に加えBorgScaleを使用し,ATを超えないよう運動強度を微調整した.
徐々に連動習慣が身についてきたが,運動する時間帯が食前だったため血糖値がピークとなる食後1時間に運動開始時間を変更するよう指導し,運動中・運動直後の低血糖症状にも留意した.
介入結果
8週間(週2回)の理学療法介入の結果,体重74.7kg,(BMI25.5),空腹時血糖は141mg/dL,連動直後の血糖は130mg/dL(食後1時間),HbAlc は6.7%まで改善が得られた.除脂肪量は55.0kg(骨格筋量:30.2kg)となり,体脂肪量は19.7kg(体脂肪率26.3%)まで減少した.
膝伸展筋力には大きな改善はなったが,6分間歩行距離は636mまで改善した.また至適運動強度に関する理解も向上し外来理学療法痺実施日にも自主的に運動を行えるようになった.
考察
本症例は筋力,バランス能力には特別問題はなく,連動耐容能低下も軽度であった.
しかしながら労作時の狭心症状に加え,血糖コントロール不良であり,インスリン抵抗性が高いことが高血糖の原因と考えられた.
インスリン抵抗性の改善のために有酸素運動実践の必要性は理解していたが,運動中の狭心症状に対する不安感が強く,非監視下での運動実践が困難であった.
自転車エルゴメータやトレッドミルなどの定量的な強度設定の可能な運動様式でBorg Scaleを用いながら試適運動強度を学習できたことで運動習慣にも変化が見られ,8週間の介入で,HbAlcは6.7%まで改善したものと考える.
今回は認定理学療法士(代謝)症例報告レポートの例をご紹介させていただきました.
私なりに仮想症例で記載してみたものの不十分なところもあると思います.
あくまで1つの参考にしていただけると嬉しいです.
その他にも認定理学療法士に関する記事をまとめておりますので是非参考にしていただければと思います.
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