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うつ病は歩くと改善する?
厚生労働省の調査によるとうつ病の罹患者数は1984年に11万人であったのに対して,2002年には55万人となり,2010年には70万人とすごい勢いで増加しております.
われわれ理学療法士・作業療法士が対象とするクライアントの中にもうつ病を合併したクライアントというのは珍しくなくなってきております.
今回はうつ病を改善するためになぜ歩くことが重要なのかについて理学療法士の視点で考えてみたいと思います.
なぜうつ病が増えているのか?
現代はストレス社会と言われるように何かとストレスが多いこともうつ病が増えている一因です.
しかしながらもう一つはうつ病という概念が世間で一般的になり,精神科を受診する日本人が増えたこともまたうつ病が増えた原因だと考えられます.
つまり昔はうつ病であってもきちんと診断がなされていなかった方も多かったわけです.
うつ病の増加とともに増えているのが抗うつ薬の処方です.
うつ病をはじめとする精神疾患の治療といえば第一選択として薬物療法を考える医療者がほとんどだと思います.
そのため抗うつ薬として用いられることの多いSSRIとSNRIの処方数は劇的に増えており,これが医療費を増加させる一因にもなっております.
一時的に抗うつ薬を使用するのは問題ありませんが,ただ漫然と抗うつ薬を飲み続けている方が多いのも実際です.
歩けば抗うつ薬から卒業できる
あまり知られていないことですがうつ病というのは身体活動量を増やすことで症状を軽減することができます.
うつ病というのは脳内のセロトニンやノルアドレナリンが不足した状態なわけですが,歩くことでこれらのホルモンを脳内で増やすことができます.
ただ難しいのはうつ病のクライアントというのは歩くことも含めて何もやる気がしなくなっている方が多いので,なかなかこういった方に自発的に歩いてもらうというのは難しいわけです.
こういった場合には第三者が半強制的にでも歩くという行為を行ってもらうように促す行為も非常に重要です.
抗うつ薬というのは長期間使用し続けてしまうと依存が生じてやめたくてもやめられなくなってしまいます.
最近は精神科領域で活躍する理学療法士が増えてきておりますが,身体活動量を増やすことはうつ病だけでなくさまざまな性心疾患の症状改善に対して非常に有効なのです.
1日に5分,10分でも歩くことができれば薬を徐々に減らすことができる場合が多いのです.
そういった意味で理学療法士が果たす役割というのは非常に重要です.
理学療法士も知っておきたい歩くことの意義
なぜ人が歩くのかを考える際に理学療法士・作業療法士であれば,生活における移動手段としてとか,歩くことで筋力低下や関節可動域制限といった廃用症候群を予防・改善することができると考える方が多いと思います.
実は歩くことにはこういった身体機能の改善以外にも多くの意味があります.
歩くことによってセロトニン・ノルアドレナリンを放出させることができれば,抗うつ薬を処方するのと同じくらいの効果があるわけです.
理学療法士がクライアントとただ歩いているだけでは専門家としてどうかといったような意見もよく耳にしますが,この歩くだけでも非常に多くの意味があるわけです.
重要なのはわれわれ理学療法士がきちんとこういった意義を知った上でクライアントやクライアント家族に歩く意義を説明するといったことではないでしょうか?
外から見ればただ散歩しているように見えても,わかって行っているのとわからずに何となく付き添って散歩しているのでは意味が全く異なるわけです.
今回はうつ病を改善するためになぜ歩くことが重要なのかについて理学療法士の視点で考えてみました.
皆様も改めて歩くことの意義を見直し,なぜ歩くことが重要なのかをクライアントに伝えていくのも理学療法士の重要な役割の1つではないでしょうか.
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