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ノルディックウォーキングは方法によってダイエット効果が変わる?
先日もノルディックウォーキングについてご紹介させていただきました.
ノルディックウォーキングは支持基底面を広げるといった利点に加え歩行姿勢を改善させるといった利点が挙げられますが,通常のウォーキングよりもダイエット(減量)効果が高いことも明らかにされております.
ノルディックウォーキングにはノルディックポールの使用方法によって2つの歩行パターンが考えられます.
この歩行パターンによっても得られるダイエット(減量)効果が異なることが明らかにされております.
今回はノルディックウォーキングの歩行パターンについて考えてみたいと思います.
diagonal style
ノルディックウォーキングにおけるポールの使い方は,踏み込んだ足とは対側の手に持ったポールを,身体後方に向けて斜めに突く方法が基本となります.
この歩行様式はdiagonal styleと呼ばれます.
diagonal style によるノルディックウォーキングは,ポールを使用しない一般的なウォーキングと比較して,上肢の筋活動が高く,それに伴って下肢の筋活動は低くなりますが,酸素摂取量つまり消費エネルギー量が高いことが報告されております.
またノルディックウォーキングに関するSystematic Reviewによると,一定期間のノルディックウォーキングの実施で安静時心拍数と血圧の低下がみられ,全身持久性の改善による体力の向上がもたらされるとともに,QOLも向上することが明らかにされております.
本邦でも特別な運動習慣のない健常な高齢者に対して12週間のノルディックウォーキングを指導したところ,上・下肢の筋力と柔軟性,および全身持久性が改善したと報告されております.
したがってノルディックウォーキングは有酸素性運動という側面のみならず,筋力トレーニング・柔軟性トレーニングの効果が期待できる複合運動であると考えられます.
defensive style
一方で本邦では従来のポールの使い方とは異なり,踏み込んだ足とは対側の手に持ったポールを身体前方で突く歩き方が腐朽しております.
これはdefensive styleまたはポールウォーキングと称されます.
diagonal styleによるノルディックウォーキングがポールを突く動作を推進力として利用するのに対し,defensive styleは前方にポールを杖のように突く歩行様式です.
このようなポールの使用方法によって歩行時の支持基底面を広げることで,より安定した歩行が可能となるとされております.
主には虚弱高齢者や歩行障害がある方向けのノルディックウォーキングの方法として考案された歩行様式です.
高齢者においてdefensive styleによるノルディックウォーキングは前額面上での歩行安定性が,通常のウォーキングよりも高かったと報告されております.
このdefensive styleによるノルディックウォーキングは,当初はリハビリテーションの手段として用いられておりましたが,最近では子どもから大人までの一般市民や高齢者のQOL向上を目的とし,多くの方がこの歩き方を推奨しております.
diagonal styleとdefensive styleの違い
一番気になるのはdiagonal styleとdefensive styleの違いです.
今回は地域在住の中高齢者を対象に,屋外でのノルディックウォーキングによる生理応答の違いについて検討した報告をご紹介させていただきます.
歩行距離・速度についてはdiagonal styleが有意に高いことが明らかにされております.
またノルディックウォーキング中の筋活動は,上腕三頭筋においてdiagonal styleがdefensive styleよりも有意に高く,ポーリング力ならびにポールの力積もdiagonal styleがdefensive styleよりも有意に高かったと報告されております.
これはdiagonal styleがポールを突く動作を推進力として利用していることがその理由だと考えられます.
これらからみれば,単位時間内ではdiagonal styleが速く移動でき,かつ上腕の働きもdefensive styleより大きくなる歩き方といえるでしょう.
一方で,エネルギー消費量はdiagonal styleよりもdefensive styleの方が有意に高い結果となっております.
ポールを使用した歩行では通常のウォーキングよりも床反力の減速成分が,diagonal styleで12.6%減少し,defensive styleで8.2%の減少であったと報告されております.
ポールを後方につき推進力として利用するdiagonal styleは,杖のように前方で突くdefensive styleより減速成分が小さく,歩行効率が良くなるものと推察できます.
つまりdefensive styleはdiagonal styleに比べて歩行効率が低くなるために,反対に歩行中のエネルギー消費量が高まっていることが考えられます.
したがって消費エネルギー量だけをみればdiagonal styleよりもdefensive styleがダイエット(減量)を考える場合には有用であると考えられます.
今回はノルディックウォーキングの歩行パターンの違いが消費エネルギー量に与える影響について考えてみました.
何を目的とするかによってウォーキングの方法も変わってくるということをご理解いただけたかと思います.
理学療法士がダイエット(減量)を目的としてノルディックウォーキングの指導を行う場合には,defensive styleが有効であると考えられます.
参考文献
1)Shim JM, Kwon HY, et al:Comparison of the effects of the walking with and without Nordic pole on upper extremity muscle activation. J Phys Ther Sci 25: 1553-1556, 201
2)Sugiyama K, Kawamura M, et al: Oxygen uptake, heart rate, perceived exertion, and integrated electromyogram of the lower and upper extremities during level and Nordic walking on a treadmill. J Physiol Anthropol 32: 2, 2013
3)Tschentscher M, Niederseer D, et al:Health benefits of Nordic walking: A systematic review. Am J Prev Med 44: 76-84, 2013. 4)青木利彦,渋谷高明,他:ジャパニーズスタイルのノルディックウォーキングにおける下肢機能特性.住友病院医学雑誌41:7-20,2014
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