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理学療法士が考える効果的なダイエット(減量)のためのコツ
ダイエット(減量)に重要なNEATって知ってますか?
NEET(Not in Education, Employment or Training)という言葉は最近耳にすることが少なくなってきましたが,就学・就労・職業訓練のいずれも行っていないことを意味する用語で,本邦におけるNEETの増加は一時社会問題にもなりました.
効果的にダイエット(減量)を行うためには,NEETではなくNEAT(non-exercise activity thermogenesis)を増やすことが重要となります.
今回は効果的にダイエット(減量)を行う上で重要となるNEATについて考えてみたいと思います.
身体活動と熱産生の割合
効果的にダイエット(減量)を行う上では,われわれの身体活動と熱産生(エネルギー消費)について理解をしておく必要があります.
ヒトは熱を産生することでエネルギーを消費するわけですがこの熱産生というのは大きく分類すると4つに分類できます.
①身体活動(運動)
これは意識的に行う「運動」によるエネルギー消費です.
スポーツやウォーキングなどで消費するエネルギー量を指します.
おそらくエネルギー消費というとこの身体活動(運動)によるエネルギー消費を創造する人が多いと思います.
しかしながらアスリートのようなかなりの運動量を有する対象を除けば,一般的に0~5%と小さいわけです.
例えば30分のウォーキングを行った場合のエネルギー消費は約100kcalですが,この中から基礎代謝を除けばウォーキングで得られる消費エネルギー量は70kcal程度にしかならずこれは全消費エネルギー量の約3%程度にすぎません.
②身体活動(生活活動)
これは意識的に行う「運動」以外の身体活動によるエネルギー消費です.
例えば姿勢を保持しているだけでもエネルギーを消費しますし,通勤時の歩行,家事,庭仕事など,スポーツやウォーキングのようないわゆる運動と意識して行っていない活動でもわれわれは多くのエネルギーを消費していることになります.
この生活活動によるエネルギー消費がNEATです.
生活活動(仕事・家事・移動)を中心としたNEATが消費エネルギー量に占める割合は大きく,全体の25~35%を占めます.
先ほどの意識的に行う運動の5~7倍というわけです.
日本人におけるNEATは減少傾向にあり,自動車保有台数の増加や技術革新によってもたらされた家事に伴う身体活動の減少などが原因として考えられております.
ルンバなんていうお掃除ロボットのがその代表ではないでしょうか.
③食事誘発性熱産生
これは栄養素の消化・吸収・蓄積に伴うエネルギー消費ですが,おおよそ10%程度を占めます.
これは生活習慣によって大きく変化するものではありません.
④基礎代謝
基礎代謝は消費エネルギー量の50~70%を占めます.
非常に大きいです.
基礎代謝もいくつかに分類できるのですが,大きく分類すると臓器(脳・肝・心・腎)でのエネルギー消費が基礎代謝全体の60%程度,骨格筋でのエネルギー消費が20%程度,その他のエネルギー消費が20%程度です.
この中で運動や生活習慣で増加させることができるのは骨格筋でのエネルギー消費のみです.
基礎代謝を増やすことでやせやすい体を作りましょうなんてことがよくいわれますが,この際によく出てくるのは筋肉量を増やそうといった話です.
筋肉量を増やせば基礎代謝が増え,消費エネルギー量が増えるわけですが,実際には全消費エネルギー量から言うと骨格筋の代謝で消費できるエネルギー量は10%程度です.
骨格筋1kgあたりの基礎代謝量への影響は13kcal程度にすぎません.
骨格筋1kgの肥大を得るのが容易ではないことを考えると,筋量増加によるエネルギー消費量増加効果は小さいわけです.
意識的に行う運動に比較すれば骨格筋の代謝によって消費できるエネルギー量は多いわけですが,NEATに比べれば非常にわずかなエネルギー消費だということがわかると思います.
効果的にダイエット(減量)するためには?
身体活動により増加可能な熱産生エネルギーの半分以上をNEATが占めるわけですので,ダイエット(減量)を目的として消費エネルギー量を増やすためにはNEATを増やすことが効率的なわけです.
もちろん身体活動では全消費エネルギー量の50%程度しかコントロールしか行えないことを考えると,摂取エネルギーの調整,食事療法が非常に重要であることが改めて理解できるでしょう.
NEAT研究の紹介
このように消費エネルギー量を増やすためにはNEATを増やすことが重要になるわけですが,NEATに関しては科学的にも多く検証がなされております.
肥満者(n=10)では正常体重者(n=10)に比較し,立っている時間が約2時間半短く,NEATにおける消費エネルギー量が約350kcal少ないことが明らかにされております.
その後肥満者(n=10)のエネルギー摂取を抑制し(体重平均8kg減少),正常体重者(n=10)のエネルギー摂取量を増加させ(体重平均4kg増加),再度同様の検討が行われております.
その結果,以前に認めた1日約350kcalのNEATの差は体重変化の後も維持されていたと報告されております.
すなわち肥満者では体重が減少した後もNEATは少ないままであり,正常体重者では体重が増加した後もNEATは高いままであったとされております.
つまりNEATの多寡は現在の体重に影響を受けているのではないということです.
例えば体重が多いから動けないのではないということになります.
今回は効果的にダイエット(減量)を行う上で重要となるNEATについて考えてみました.
効果的にダイエット(減量)を行うためにはNEATを増やすことが重要です.
理学療法士もダイエット(減量)を目的として指導を行う際には,いかにしてNEATを増やすかを考えることが重要となります.
次回は具体的なNEATの増やし方について考えてみたいと思います.
参考文献
1)Levine JA,et al: Interindividual variation in posture allocation:possible role in human obesity.Science307:584-86 . 2005
2)Eric Ravussin:A NEAT Way to Control Weight? . Science307:530-31 . 2005
3)佐々木誠一,他:肥満エネルギーバランスと身体活動の効果,臨床スポーツ医学24:58-66
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