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理学療法士・作業療法士の需要推計
平成31年4月5日に厚生労働省から理学療法士・作業療法士の需要推計が発表されました.
以前から理学療法士・作業療法士の供給過多が様々なところで取り上げられていたわけですが,今回は厚生労働省からきちんとしたデータに基づいた推計が行われたわけです.
今後われわれ理学療法士・作業療法士が仕事を続けていく上では需要と供給のバランスが今どういった状況にあるのかについては把握しておく必要があります.
今回は今回出された理学療法士・作業療法士の需要推計について考えてみたいと思います.
理学療法士・作業療法士の供給の推計
まずはじめに理学療法士・作業療法士の供給に関して推計がなされております.
推計の方法もかなり複雑ですが,医師の供給推計の方法を参考に過去の名簿登録者数,入学定員数,国試受験率,
国試合格率,名簿登録率,就業率から供給を推計しております.
以下の内容は「医療従事者の需給に関する検討会 理学療法士・作業療法士分科会(第3回)」からの引用となっております.
理学療法士・作業療法士の性年齢階級別就業率
この供給推計の中から就業率は理学療法士・作業療法士の現在における就業率を性別・年齢別に算出したものです.
理学療法士・作業療法士ともに20代から50代までの男性理学療法士・作業療法士は90%程度が就業しております.
女性理学療法士・作業療法士に関しては,出産や育児の関係だと思われますが,30代に入って10%程度就業率が低下するものの80%程度は就業していることがわかります.
看護師の就業率に比較しても理学療法士・作業療法士の就業率は高いと言えるでしょう.
つまり資格を取った人が増えるとそれだけ新しく資格を取得した人が働く場所が無くなると言えるでしょう.
夜勤がありませんし,最近は訪問リハビリを中心に短時間勤務も増えておりますし,女性にとっても働きやすい職業だと言えます.
その分,供給が過多になりやすいといった捉え方もできます.
理学療法士・作業療法士の供給数推計
最終的な供給推計の結果がこちらになります.
理学療法士で見ると2018年の段階で15万人弱の有資格者数が,2026年には20万人を超え,2040年には30万人を超える,つまり現在の2倍の数になることが予測されます.
一方で作業療法士はというとその増加率は理学療法士ほど著しいものではなく2040年には10万人を超えることが予測されますが,その数は今の1.5倍程度ということになります.
つまり今回は理学療法士・作業療法士の需要推計がなされておりますが,圧倒的に不要になる可能性が高いのは理学療法士であると考えられます.
理学療法士・作業療法士の需要推計
需要に関してもかなり複雑な計算で①医療分野,②介護分野,③その他と分野を複数に分けた上で需要の推計がなされております.
さらに医療分野では入院医療・外来医療・在宅医療と分野を分け,入院医療については一般病床・療養病床に加え精神病床も含めた需要の推計がなされております.
さらに働き方改革に合わせて時間外労働に関してもこの需要推計に組み込まれておりますので,私としては指摘するポイントが見当たらない推計だと考えております.
需要というのは供給以上に推計が難しいわけですが,私のような素人では到底思いつかないような推計方法で分野別に推計がなされており,さすが厚生労働省といった推計となっております.
この推計をどこまで信じるかは置いておいて,ここまでの推計というのは素人では難しいだろうといったことはと理解いただけると思います.
理学療法士・作業療法士の需要・供給のバランス
これが最終的に出された理学療法士・作業療法士の需要供給のバランスです.
この推計によると現段階で理学療法士・作業療法士の供給数は需要数を上回っており,2040年頃には供給数が需要数の約1.3倍となる結果となっております(理学療法士は約1.4倍,作業療法士は約1.2倍).
これだけ見るといやいやこの領域には理学療法士・作業療法士がまだまだ不足しているなどといった印象を持たれる方も多いと思いますし,現状で養成校を卒業した理学療法士・作業療法士学生がおおよそ入職できるわけですので,まだまだ需要が供給に追い付いていないのではないかと考えられる方が多いと思います.
このあたりはあくまで推計ですので,何とも言えませんが,一つ言えるのは需要の伸びと供給の伸びの傾きが明らかに異なるということです.
これからは高齢者が増えるから理学療法士・作業療法士を必要とする人が増えるなどといった話しをたまに耳にしますが,そもそも高齢化率は増加しても高齢者数は増えません.
いくら需要が増えると言っても理学療法士・作業療法士の供給数の伸びはその需要を上回るほど過剰であるといったことをこのグラフから読み取ることができるでしょう.
理学療法士学校養成施設の入学定員の年次推移
一番の問題は理学療法士養成校の入学者数の推移です.
平成11年から平成21年までの増加率はおそろしいですね.
実はここ数年は大きく変化していないわけですが,この定員数を減らして供給数を減らさないと大変なことになりそうですね.
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の年齢区分
今のところ病院にしても施設にしても勤務する理学療法士・作業療法士の半分が20代といった状況です.
これが20年後の2040年にはどうなるかわかりますか?
40代の理学療法士・作業療法士がかなりの数になるわけです.
全ての理学療法士・作業療法士が今と同等の昇給を受けられるでしょうか?
答えは見えてますね…
今後の理学療法士・作業療法士養成数の検討の方向性
理学療法士の需給推計(案)においては,2040年頃には供給数が需要数の約1.4倍となる結果となっております.
作業療法士の需給推計(案)においても,2040年頃には供給数が需要数の約1.2倍となる結果となっております.
近年、学校養成施設数,その定員は増加し続けてきていますが,養成施設出身者の国家試験合格率が低下傾向にある等,養成の質の低下を指摘する意見があります.
以上を踏まえて,将来の需給バランスを見据えると,学校養成施設に対する養成の質の評価,適切な指導等を行うこと等により,計画的な人員養成を行うことが必要ではないかと結論付けております.
この推計をどこまで信じるかは置いておいて,ここまでの推計というのは素人では難しいだろうといったことはと理解いただけると思います.
また一番重要なのは理学療法士・作業療法士の供給数の伸びはその需要を上回るほど過剰であるといった点です.
われわれの生活を守る上でも早めに養成校の入学者数を制限するなどの対策を講じないと,今の20代の理学療法士・作業療法士の将来が心配でなりません.
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