加齢に伴う筋委縮が起こりやすいのは大腰筋,起こりにくいのはヒラメ筋

介護予防
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 加齢に伴う筋委縮が起こりやすいのは大腰筋,起こりにくいのはヒラメ筋 

われわれ理学療法士・作業療法士の対象の多くは高齢者です.

われわれは何らかの疾病を有する高齢者を対象として理学療法・作業療法を提供することが多いわけですが,疾病を考える前にそそもそも高齢者は加齢に伴って筋機能や筋特性が変化しているといった点に注意が必要です.

高齢化が加速度的に進む昨今,今後ますますわれわれ理学療法士・作業療法士が対象とするクライアントの高齢化も著しいものとなることが予測されます.

また介護予防事業では明らかな疾病は無く加齢による機能低下のみを有する高齢者を対象に理学療法士・作業療法士が運動指導を行うこともあるでしょう.

したがってわれわれ理学療法士・作業療法士も加齢に伴う筋機能低下の特性について把握しておく必要があります.

そんな中で今回は加齢に伴って筋機能や筋特性はどのように変化するのかについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 

 加齢に伴う筋機能・筋特性の変化 

まず筋力についてですが,一般的には20~30歳代をピークとしてそれ以降減少し,50歳代から低下の割合が高くなっていき,80歳代までに30~50%低下するとされております.

また加齢による筋量の減少,筋力の低下は上肢筋より下肢筋で著しいことも明らかにされております.

収縮速度が速いtypeⅡ線維(速筋線維)の方が,typeⅠ線維(遅筋線維)よりも加齢によって優位に萎縮することもわかっております.

そのため瞬発的に筋力を発揮する能力である筋パワーの方が最大筋力よりも加齢に伴う低下率が大きいわけです.

筋力の低下率が1年あたり1~2%程度であるのに対して,筋パワーの低下率は1年あたり3~4%とされております.

また加齢に伴う骨格筋の質的変化は量的変化(サルコペニア)よりも比較的早期の段階から生じることも明らかにされております.

つまり筋萎縮・サルコペニアといった目に見える変化以上に,筋内脂肪の増加のような質的な変化が先に生じるということになります.

 

 

 

 

 

 

 加齢による下肢・体幹筋の筋萎縮 

われわれ理学療法士・作業療法士からするとどの筋の筋委縮が起こりやすいのかといった点も気になるところです.

加齢による下肢筋の筋萎縮について,若年女性の筋厚平均値を100とした場合の高齢女性の筋厚若年比を求めた研究では,最も低い値を示したのは大腰筋であり,加齢による筋萎縮が著しいのは大腰筋であることが報告されております.

ご存じのとおり大腰筋は速歩や走行の際に大きな筋活動が求められます.

しかしながら高齢になると速歩や走行を行う機会が少なくなりますので,大腰筋の廃用性筋萎縮が書字やすいものと考えられます.

さらにヒラメ筋の筋厚は若年者と高齢者とで有意差が認められず,ヒラメ筋は加齢による筋萎縮が少ないことも明らかにされております.

ヒラメ筋の筋蘇生を考えてみるとtypeⅠ線維の割合が86.4%と下肢筋の中でも非常に高いわけです.

そのため加齢の影響を比較的受けにくいと考えられます.

加齢に伴う体幹筋の筋萎縮についても明らかにされておりますが,若年女性と高齢女性の背筋群・腹筋群の筋厚平均値を比較した報告によると,内腹斜筋と外腹斜筋が最も低値を示し,加齢による筋萎縮が腹斜筋群で著しいことも確認されております.

一方で多裂筋や腹横筋などの体幹深部筋については若年女性と高齢女性とで大きな差は無く,腹横筋や多裂筋といった深層筋はtypeⅠ線維で主に構成されていることから,加齢による影響が少ないと考えられます.

このように加齢に伴う筋委縮と筋線維タイプには蜜な関係性があると考えられます.

 

 

 

そんな中で今回は加齢に伴って筋機能や筋特性はどのように変化するのかについて考えてみました.

冒頭でも述べたように,われわれ理学療法士・作業療法士が加齢に伴う筋機能低下の特性について把握しておくことで,高齢者の加齢に伴う機能低下に対して適切なアプローチが可能となると思います.

近年の老年分野のAgingに関連する報告は目覚ましいものがあり,今後も注目しておく必要があるでしょう.

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