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膝関節半月板はどんな役割を果たしているのか?
理学療法士が半月板損傷のクライアントを担当する機会は少なくありません.
最近では関節鏡視下での手術が増えておりますので,高齢者から若年者まで術後の症例を担当することもあるでしょう.
半月板損傷のクライアントに対して理学療法を行う上では,半月板の役割を十分に理解しておく必要があります.
今回は半月板の役割について考えてみたいと思います.
半月板の重要性
膝関節は,股関節と足関節の中間にある荷礪関節で,全身からの影響を強く受ける関節です.
そのため,可動方向の限定されている膝関節は,全身からの影響によって荷電と関節運動の複雑な組み合わせが生まれます.
また様々なメカニカルストレスを繰り返し受けることで疼痛が出現することが多くなります.
下肢は知覚情報を主に運動を行うことが多く,様々なレセプターを介することが非常に重要であり,正常な知覚情報を得ることで円滑な動きの獲得につながると考えられます.
膝関節を治療するにあたり,関節へのストレスの軽減と関節運動の円滑性は非常に重要です.
この関節へのストレス軽減と関節運動の円滑性を高める役割を担うのが半月板です.
半月板は,関節の適合性向上と荷重分散,膝関節運動の円滑性と支持性,感覚の受容器,関節液の分散と吸収の機能をもち,非常に重要な役割を担っています.
半月板損傷は,スポーツや事故などの強い外力が加わることで受傷するケースや,日常生活での軽微な機械的ストレスが繰り返されることで受傷するケースなど,受傷機転も多岐にわたります.
半月板の損傷形態や要因を即解し受傷の背景を考え介入することが,より良い治療結果に結びつきます.
そのためにも半月板の機能を知り,様々な検査から複合的に治療の方向性を検討していく必要があるわけです.
半月板の構造
半月板は大腿脛骨関節内に存在し,内側半月板と外側半月板に分けられます.
タイプⅠコラーゲンを多く含む線維軟骨で形成され,円周状に配列する環状線維と少量の放射状線維から構成されます.
放射状線維は関節包から発生し,環状線維を結びつける役割を担い,剪断力に抗されます.
環状線雑は放射方向への移動を制限し,荷重による圧縮ストレスを円周方向へのストレスに分散します.
これらの構造により半月板は多様なストレスに対応できる構造になっています.
内側半月板と外側半月板の椛造と機能は異なっており,これが膝関節の運動に大きく関わります.
内側半月板はC型,外側半月板はO型の形状をしており,内側半月板は脛骨内側プラトーを60%程度,外側半月板は外側プラトーを80%程度被覆しています.
内側半月板は,外側半月板に比べると大きいのですが,半月板の幅は狭くなっています.
内側半月板は前方の幅に対して後方の幅は倍近くに大きく,外側半月板は前後の差は少なくなっています.
また内側半月板は外側半月板に比較して厚く,荷重軸が内側を通ることに対して荷重に適合しています.
半月板の硬さは耳の基部の軟骨の硬い部位と同じような硬さをしているといわれています.
半月板による膝関節の適合性向上と荷重分散
膝関節は非常に不安定な骨椛造をしています.
歩行中の膝関節にかかる圧迫ストレスは通常,安静時の2~3倍に遠し,等速度膝関節伸展連動では体嘔の9倍のストレスが生じるといわれています.
正常な半月板は内外側のコンパートメントにおいて外側では70%程度,内側では50%程度の荷重を伝達しており,荷重分散の役割をもっています.
また膝関節が屈曲するごとに関節の接触面は後方に移動,大腿脛骨関節の接触面積は減少し,半月板との接触面積が拡大します.
半月板の荷重分散の役削は伸展位に比べて屈曲位のほうがより重要になります.
半月板切除に変形性関節症に移行するケースが多く報告されており,半月板の荷重分散に関わる影響は大きいと考えられます.
しかしながら一方で半月板を全切除した症例でも,疼痛がなく歩行可能な症例やスポーツ復帰をしている症例なども経験します.
またごく一部の切除術後より数カ月で関節軟骨破壊に移行する症例なども報告されております.
したがって半月板の荷重分散の機能を,全身との関係性から生じる膝関節への負担をとらえ,理学療法を行うことが重要と考えられます.
関節運動の円滑性
半月板は前角と後角で脛骨プラトーに付着しています.
内側半月板の前角は前十字靭帯脛骨付着部の前方に付着していて,外側半月板の前角は前十字靭帯胖骨付着部の後方に強固に付着しています.
外側半月板の前角の一部は前十字靭帯の線維に移行していることがあります.
後角は後十字靭帯脛骨付着部の前方に付着していて,内側半月板後角に比較し外側半月板後角は内側の前方に付着しています.
内側半月板はC型をしていて,前角と後角の直線距離が長く,外側半月板はO型をしていて前角と後角の直線距離が短くなっています.
内側半月板は付着部の直線距離が長いため,制動性が乏しく可動は直線状に動きます.
外側半月板は付着部の直線距離が短いため可動性に富んでいて,弧を描くように可動します.
また内側半月板は内側側副靭帯深層に付着していて,両半月板の前方を連結する横靭帯や,半月板と膝蓋骨を連結する半月膝蓋靱帯,後方では半月板と大腿骨を連結する半月大腿靭帯などがあります.
今回は半月板の役割について考えてみました.
半月板の役割を理解する上では,荷重分散機能,円滑性を考慮する必要があります.
改めてですが理学療法士にとっても半月板って重要な組織だということが理解できます.
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