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理学療法士・作業療法士にレポートは必要ない?
理学療法士・作業療法士の臨床実習は転換期を迎えており,従来型の担当制の実習形式からクリニカルクラークシップ形式での実習形式へと実習形式を変更しながら実習指導が行われるようになってきております.
クリニカルクラークシップ形式での臨床実習の特徴として,理学療法士・作業療法士の臨床実習の中で伝統的に行われてきた症例レポートを課さないといった点が挙げられます.
でも理学療法士・作業療法士にとって本当にレポートって必要ないのでしょうか?
今回は理学療法士・作業療法士にとってのレポートの必要性について考えてみたいと思います.
理学療法士・作業療法士にレポートは必要ない?
まず考えてみたいのが実際に理学療法士・作業療法士資格を取得してからのことです.
理学療法士・作業療法士も症例の理学療法経過や作業療法経過をサマライズして他施設の理学療法士・作業療法士へ情報提供するといった機会は少なくないと思います.
サマリーとか情報提供書とか呼ばれる書類を作成する際にはクライアントの情報をわかりやすく統合してまとめる力が必要となります.
もちろん症例レポートのように何十枚もの報告書を作成することはありませんが,クライアントの特徴をわかりやすくまとめるといった意味では症例レポートの作成と共通したエッセンスがあると思います.
したがって理学療法士・作業療法士として仕事をする上ではレポート作成能力は必要であると考えられます.
文章が書けない理学療法士・作業療法士が多い
これは自戒も含めてということでご理解いただきたいのですが,理学療法士・作業療法士の中でもまともに文章が記述できない人も多いのです.
われわれ理学療法士・作業療法士の業界では治療技術やハンドリングスキルは得意だけど,文章を書くのが苦手といった方は少なくないと思います.
第3者に自身の考えを伝える上では,正しい文章を作成する能力が必要となりますので,文章を作成するトレーニングを学生時代に十分に行うというのは非常に意義のあることだと思います.
臨床実習中にレポートを書く必要はない
私自身は理学療法士・作業療法士の学生も文書作成能力を向上させるために,症例レポートも含めて多くレポートを作成する経験をするべきだと考えております.
一方でこのレポート作成を実習中に行う必要は全くないと考えております.
実習中にレポート作成に時間をとられ睡眠時間が削られてしまうと,実習の目的であるクライアントに触れる時間に集中できず,本来実習中にクライアントを通じて学ぶべきことが学べなくなるわけです.
これでは本末転倒です.
また残念ながら臨床実習指導を行う理学療法士・作業療法士の多くが,レポート作成に関して指導を行える能力を備えていないのが実情ではないでしょうか.
それであれば大学教員のように多くの論文を書いた経験のある理学療法士養成校の先生にレポート作成の指導をしてもらった方が効率的なわけです.
臨床の理学療法士・作業療法士でコンスタントに原著論文を書いている人ってかなり限られておりますので,レポート作成は養成校の先生にお任せするといったクリニカルクラークシップ形式での実習というのは理にかなっていると考えられます.
レポート廃止に関する反対意見
しかしながらレポート廃止に関して反対意見も多く聞かれます.
「自分は学生時代は100枚以上レポート書いたんだから」とか,「レポートが無くなると実習が楽すぎる」とか,「レポートが無いとどのくらい学生が理解できているかわからない」とか,「レポートが無くなると理学療法士・作業療法士の質が下がる」いろいろな意見があります.
そもそも時代の変化に合わせて実習も変わるべきです.
「自分は学生時代は100枚以上レポート書いたんだから」
⇒伝統的に行ってきたから現代の実習生にも自分たちの時代の課題を課すというのはナンセンスです.
「レポートが無くなると実習が楽すぎる」
⇒実習が楽でもいいじゃないですか,学ぶべきことをOJTで学んでもらえれば実習として成立するわけです.
こういった自分は苦労したのだから学生は苦労するのが当然的な考え方そのものが間違っていると思います.
「レポートが無いとどのくらい学生が理解できているかわからない」
⇒学生の理解度をレポートでしか評価できないというのは残念です.
しっかりと学生と対話すれば理解度は把握できるはずです.
「レポートが無くなると理学療法士・作業療法士の質が下がる」
⇒少子化の影響を考えれば,レポートがあっても無くなっても質は下がるでしょう.
今回は理学療法士・作業療法士にとってのレポートの必要性について考えてみました.
理学療法士・作業療法士の実習はもう数年で完全にクリニカルクラークシップ形式での実習へ転換される予定です.
レポート作成に苦しむ学生さんが減るのはいいですね.
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