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骨強度は骨量と骨質によって決まる
本邦も著しい高齢化に伴う骨脆弱性を基盤とする骨粗鬆症性骨折が増加しております.
骨粗鬆症性骨折を理解するためには骨橋度といった概念を理解する必要があります.
今回は骨強度(骨量・骨質)について考えてみたいと思います.
骨強度とは?
骨強度はハイドロキシアパタイトとコラーゲンの構成成分である骨量(骨密度)と骨質に依存します.
一般的には骨量は骨の硬さを反映し,いわゆるコンクリートブロックにたとえるとわかりやすいです.
コンクリートブロックは形を変えず頑丈なイメージがありますが,アスファルトの上に落とすと簡単に粉砕します.
これと同じように骨が仮に骨量だけで構成されている場合には,転倒したらすぐに骨折をしてしまうことになります.
骨質は強さを反映し,いわゆる鉄筋のようなものをイメージするとわかりやすいです.
しなりや粘りに優れますが,それだけでは変形してしまいますので,骨が仮に骨質だけで構成されている場合には,立位や歩行は困難となります.
また骨質もまた加齢の影響を受けるため,たとえ骨量が同じ程度であったとしても,高齢になるほど骨折の発生率は増加することとなります.
つまり骨というのは,コンクリートブロックである骨量と,鉄筋である骨質とがバランスよく組み立てられていることで,支持性・安定性・粘弾性に優れるわけです.
骨質の形成は,骨の内構造にあたるコーゲン架橋の適度な厚み,配列環境・微細構造・骨代謝回転速度・石灰化度などの影響を受けます.
わかりやすく表現すると“善玉コラーゲン”と“悪玉コラーゲン”と表現することができます.
善玉コラーゲンは基質の架橋結合が安定しているのに対し,悪玉コラーゲンは骨基質の架橋結合が変化して,脆く壊れすいのが特徴です.
また悪玉コラーゲンは骨芽細胞の機能や,細胞外コラーゲン基質に影響する酸化ストレス,糖化ストレス,オステオカルシンの減少によって増加することが知られております.
ここからは骨質に影響を与える酸化ストレス・糖化ストレス・オステオカルシンについてご説明いたします.
つまり骨強度は骨量だけではなく骨質についても考慮する必要があります.
そのため高齢者の4大骨折はたとえ骨量が正常値であっても注意深く観察する必要があります.
酸化ストレス
酸化ストレスを増加させる因子には,加齢・閉経糖尿病・慢性腎不全・生活習慣病などが挙げられます.
最近ではアミノ酸の一種で動脈硬化の危険因子である血中ホモシトステインの濃度が高くなると,酸化ストレスが増加することが指摘されております.
糖化ストレス
糖化ストレスを増加させる因子には血糖値の上昇,たんばく質の機能障害などがあり,これらが結合すると(メイラード反応),終末糖化産物(AdvancedGlycationEndproducts; AGEs)という糖化ストレス発症の基になる物質ができてしまいます.
また糖尿病の発症に関与しているペントシジンの高値は,糖化ストレスを増加させることが指摘されております.
オステオカルシン
オステオカルシンはビタミンKが不足すると減少すろとされております.
さらに骨芽細胞の機能が低下すると石灰化度は減少し,コラーゲンの微細構造を脆くさせます.
運動が骨強度に与える影響
運動と骨橋度の関係ですが,骨形成を促通するには骨が0.1%程度たわむ物理的なストレスが必要とされます.
ウォーキング,軽いランニング,軽い跳躍運動などによる長軸方向への負荷は,骨に対して適度な荷重圧となります.
なかでも水中ウォーキングは、浮力によって荷重圧は軽減しますが,身体の筋収縮を必要とするため骨に対して適度な刺激となります.
骨は力学的負荷をかけるほど,骨強度が増していきます.
ただし骨強度が低下している高齢者にとっては,脆弱性骨折やストレス骨折の引き金となるため,段階的に負荷量を高めていく必要があります.
脊柱起立筋・大腰筋のような椎体問を直接圧縮する筋が弱化しても,同じ機序で骨強度は低下します.
今回は今回は骨強度(骨量・骨質)について考えてみました.
骨粗鬆症骨折を受傷した高齢者を担当した際には,身体機能や動作能力の改善にとどまることなく,二次性骨折を予防する観点で取り組むことが重要です.
その際には骨橋度(骨量・骨質)について十分に理解しておく必要があるでしょう.
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