なぜ,理学療法士・作業療法士の卒後教育が必要なのか?

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なぜ,理学療法士・作業療法士の卒後教育が必要なのか?

人が少なかった時代には理学療法士・作業療法士も資格を取得すれば一人前として多くのクライアントを担当させてもらっていたわけですが,最近はそんなことはありません.

最近は半年かけて新人教育を行う施設も少なくありません.

また昨今は理学療法士・作業療法士の社会性や学力低下が問題視されており,このような背景から以前よりも卒後教育の重要性が高くなってきていると考えられます.

 

 

 

卒後教育の変化

卒後教育に変化をもたらしたのは,養成施設卒業時の到達目標が変化してきたこと,臨床実習教育環境に変化がもたらされたこと,理学療法士の職域が拡大されてきたこと,といった3つのが挙げられます.

以前は養成施設卒業時の到達目標のミニマムは,「基本的理学療法を独立して行えるレベル」,つまりは「即戦力」というものでした.

基本的理学療法とは,複雑な障害像を呈しない一般的な疾患に対して,理学療法が実践されることです.

その到達目標が,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則の改正に伴って,臨床実習時間が減少していることに加え,資格を持たない実習生が体験できる臨床行為も制約されてきている点から,協会の「臨床実習教育の手引き第5版(2007年改訂)」でも,臨床実習教育の到達目標が,それまでの「基本的理学療法が独立して行える」から,「ある程度の助言・指導のもとに,基本的理学療法を遂行できる」に変更されたわけです.

また養成校の教員を除く会員を対象とした「卒業直後における新人の実務実施レベルの現状調査」の結果によると,多くの助言を要する新人理学療法士が年々漸増しており,新人理学療法士の能力低下が危惧されていることを表していると考えられます.

特に臨床実習環境の変化は,社会的背景が大きく影響しています.

在院日数の短縮化が常識となり,より効率的かつ効果的理学療法の介入が求められ,臨床実習指導への比重は減少しました.

さらには介護保険の導入により地域・在宅へと職域が拡大し,その需要はますます大きくなり,養成校の数も急増しました.

そうして量的には確実に充足してきているものの肝心の教育の質については必ずしも向上しているとは言い難い状況です.

また,実習生の数が増加の一途をたどっているにもかかわらず,受け入れる実習施設と実習指導者の数が追い付いていない現状があり,実習指導者の要件や養成方法についても議論されてきたわけですが,結局のところ抜本的改善策は講じられることなく経過してきている中で,カリキュラムの大綱化により多様化した養成校ごとに到達水準の異なった学生を受け入れなくてはならない状況です.

 

職域の拡大としては,それまでは医療の中での存在であった理学療法が,介護保険の導入により地域・在宅へ,さらには健康寿命の延伸のための予防を促し参加を進めていくことが求められるように変化してきました.

学校・産業保健領域を含む地域社会の健康増進,疾病・変調の予防や再発予防,妊産婦死亡率の軽減,認知症予防,メンタルヘルス変調の対策,遺伝子診断・治療,再生医療,ロボットを含めた医工連携などの最先端科学技術との融合,就労支援・復職支援を含めた参加・活動の向上についても,街づくりと連動した形での取組が推進されると期待されております.

先の東北,熊本の震災や茨城の水害等における理学療法士の活躍は承知のとおりであり,災害時における理学療法士への期待も,とても大きなものとなっております.

以上のような視点か考察すると,「基本的理学療法が独立して行える」という到達目標は卒後教育へと委ねられたことになり,理学療法士の質の担保の観点や拡大された職域や社会から期待されていることに応えられるためにも,卒後教育は重要な位置づけになったと考えられます.

したがって卒後教育の中核を担うであろう職場内教育に対して課せられた責務は,より一層重くなっていると言えるでしょう.

 

 

 

社会に認められる理学療法士・作業療法士になるために

少子高齢化などにより,理学療法士・作業療法士の職域は広がり,いろいろなところで必要とされてきております.

社会が理学療法士に求めているものは,社会保障制度を効果的,効率的に運用する中で個々人のニーズに応じた健康寿命をいかに延伸できるかということです.

そのためには,まず理学療法士という仕事を,もっと社会に認識してもらう必要性があります.

「リハビリの人」ではなく,「理学療法士」というものをもっと外部へ発信し,専門職としての認知度を上げるべきです.

そして,評価(Evaluation)に基づいたE-PDCAサイクル(E:evaluation,P:plan,D:do,C:check,A:action)の「理学療法マネジメント」に則り,質の高い理学療法を提供できること,それには安心・安全な(品質が問われる)理学療法の提供が求められることになります,

Evaluationとしての評価能力と,適切な評価に基づいた,機能的帰結の予後予測能力,判断力を高める必要があります.

さらには機能の回復という治療医学における位置づけと,疾病と機能不全を予防するという,大きな意味での保健医療の中での理学療法士の独自性(専門性)をきちんとアピールすることが重要だと思います.

地域医療連携を推進でき,職場や組織,個人(自己)のマネジメントができ,少ない情報から変化を捉える(患者・利用者,学生の「何かいつもと違う」に気づく)感性をもつ人材,そんな社会に認められる理学療法士になるための卒後教育を,自己研鎖とともに職場や地域,都道府県理学療法士会,協会が連携し,実施していく必要があります.

 

 

 

さいごに

最後に,草創期の諸先輩方の思いを次の50年へと繋げ,時代の流れに呑み込まれず,社会に認められる理学療法ができる,社会に認められる理学療法士になるためには,卒前教育から卒後教育への切れ目のない教育が必要です.

理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則が改訂されましたが,この改定では「質」がkey wordとなっております.

改めて原点回帰,評価を中心とした理学療法・作業療法マネジメントが求められているのだと考えられます.

指定規則の改定以降,養成校での教育や臨床実習教育に関する議論が多いですが,卒後教育についても改めて考える必要があるでしょう.

 

 

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