褥瘡ケアで理学療法士だからできること 

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 褥瘡ケアで理学療法士だからできること 

皆様は認定理学療法士性制度の中に領域として褥瘡の領域があるのをご存知でしょうか?

実は認定理学療法士の中でも認定理学療法士(褥瘡)を取得している理学療法士は最も少ないことで知られております.

最近は総合病院であっても皮膚科の常勤医が常駐している病院が少なくなっており,WOC認定看護師やコメディカルが中心となって褥瘡ケアにあたっている医療機関も少なくありません.

今回は理学療法士の視点で褥瘡ケアについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 褥瘡とは? 

まずは基本的なところから考えてみたいと思います.

褥瘡は,圧迫やずれ力などの外力により皮膚や皮下組織が阻血状態になることで引き起こされます.

そのため,褥瘡予防・管理では圧迫やずれ力などの外力の排除もしくは減少させることが重要となります.

外力を排除もしくは減少させなければ,どんなによい治療を実施しても褥瘡は治癒しません.

たとえ治癒したとしても再発の危険性が高くなってしまいます.

褥瘡の治療を熱傷の治療にたとえると理解しやすいです.

熱湯に指を入れ,熱傷を患ったクライアントがいて,特効薬を塗布したとします.

そのクライアントが家でまた熱湯に指を入れれば熱傷はいつまで経っても治癒しないことは理解できると思われます.

熱傷患者の熱湯に指を入れる行為が褥瘡患者の外力にあたります.

それゆえに褥瘡治療は外力の排除もしくは減少がもっとも重要となります.

 

 

 

 褥瘡ケアにおける理学療法士の役割 

褥瘡予防・管理を実施するうえでの理学療法士の役割は,評価・予防・治療の 3 つです.

評価には褥瘡発生リスクを層別化する「褥瘡発生リスク評価」と,創面を見てどの程度の重症度であるかを判断する「重症度評価」があります.

これに加え理学療法士は基本的動作能力や高次脳機能検査,片麻痺機能検査,感覚検査,関節可動域検査などの検査を用いることができるため,双方から判断し評価することができます.

予防は前述した通り,外力の排除もしくは減少させることが重要となります.

そのためには適切なポジショニングと動作指導が重要となります.

治療は物理療法を用いて参画することが可能です.

評価・予防・治療は独立したものではなく,互いに関連し合っているといった点も重要です.

褥瘡部を評価してポジショニングを実施しなければ,どの外力が原因かわからず想像でポジショニングを行うことになります.

またポジショニングを実施した後に褥瘡部を評価しなければ,そのポジショニングが外力の排除もしくは減少に適切だったかを判断することはできません.

治療も同様に,褥瘡部分を評価していなければ適切な時期に物理療法を実施できているのかわからないし,物理療法後に褥瘡部を評価しなければ適切な物理療法を実施できているのか判断できません.

また適切な治療を行っているにもかかわらず外力の排除もしくは減少を実施していなければ治療効果は乏しくなり,適切な外力の排除を行っていても間違った治療をしていれば褥瘡部は治癒しないわけです.

したがって評価・予防・治療のすべてが相互に作用しあって適切なケアとなります.

 

 

 

 

 予防と環境調整 

予防と環境調整には圧迫とずれ力の管理が重要となります.

この圧迫とずれ力の管理は安静時と動作時があります.

ベッド上や車椅子上では安静時の圧迫やずれ力の管理が重要となり,マットレス・クッションの選定やポジショニングが基本となります.

動作時の圧迫とずれ力に関しては,関節運動時や体位変換時,車椅子駆動時などがあり,動作指導や環境調整が重要となります.

理学療法士の知識の基盤には運動学があります.

この関節運動学はポジショニングを提案するうえで大変重要な知識となります.

たとえば股関節は臼関節であり,3 軸の動きが可能であることを知っている状態でポジショニングを行えば,大転子部の体圧が高い場合は股関節を回旋させることにより圧を分散させることができます.

脊椎の捻じれについても同様です.

それゆえにポジショニングの基本知識は運動学であり,運動学の知識があれば関節がどの方向に動き,それをどのように利用すれば体圧分散が可能になるかが想像できるわけです.

 

例えば,半側臥位時にベッドと接している側の大転子部の圧が高い場合,股関節を内旋させ,ベッドと大腿部の間にクッションを挿入することで広い殿部で圧を受けることができます.

また半側臥位を取ったときに,骨盤部分と胸郭部分に捻じれが生じていれば椎間関節に負担がかかることも容易に想像できます.

したがって骨盤部分と胸郭部分の捻じれが生じないようにクッションを挿入するだけで快適な体位を保持できるようになります.

 

次に動作時の圧迫とずれ力の管理についてですが,理学療法士が日常的に行っている関節可動域運動を行う場合には注意が必要です.

仙骨部に褥瘡を有する患者の場合は股関節の動きに配慮すべきです.

仰臥位で行うとベッドと皮膚の間にずれ力を発生させる可能性があるため,仰臥位で実施する場合は細心の注意が必要となります.

側臥位で実施した際は両側の股関節を同時に屈曲させてしまうと創部の面積を拡大させてしまいますので,反対側の股関節を伸展位で行う必要があります.

また大転子に褥瘡を有する場合は股関節を屈曲させると骨突出部と皮膚の間にずれ力を発生させてしまいます

これはポケットの原因となるため注意すべきです.

このようにどの角度でずれ力が大きくなるのかを把握しておくことが重要となります.

動作時にはこのずれ力が大きくなってしまうわけですが,もちろん褥瘡保有者も臥位から座位へ姿勢を変えていく必要があります.

この際には最低限の股関節屈曲可動域は必要となります.

そのため褥瘡治癒と活動性とは相反する関係ではあるが,理学療法を進めていく必要があります.

70 度以上の屈曲が困難であればティルト・リクライニング車椅子を活用するのも1つの方法です.

さらに最近はフィルムドレッシング材の活用により面積の増大を最小限に抑えることができるとの報告もあります.

 

 

 

 

 褥瘡の治療 

予防については上述したとおりですが,実は褥瘡治療においても理学療法は重要な役割を果たします.

治療手段のひとつに物理療法があります.

褥瘡治療における物理療法として,日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドライン2015では,水治療法,電気刺激療法,近赤外線療法,超音波療法,電磁波刺激療法,振動刺激療法が推奨されているなかでも電気刺激療法は推奨度が B ランクであり,行うように勧められております.

褥瘡の中でも皮下組織を超える褥瘡は深い褥瘡と定義され,治癒までに相当な期間を要します.

この皮下組織を超える褥瘡を治癒するには,組織の修復が必要であり,肉芽形成が必須の条件となります.

電気刺激療法は,深い褥瘡の治癒に欠かせない肉芽の基盤となる線維芽細胞の遊走,増殖,分化に期待できます.

電気刺激療法による創傷治癒メカニズムについて説明いたします.

一般的には,修復にて創傷が治癒するときには,肉芽の基盤となる線維芽細胞を創底に集積させ,増殖することで肉芽が形成され,創縁と創底の段差が解消されます.また,線維芽細胞が筋線維芽細胞に分化することで創が収縮します.そして創面を周囲の表皮細胞が遊走し,細胞増殖により上皮化し創が治癒します.

したがってまずは肉芽の基盤となる線維芽細胞を創底に集積させることが必要となります.

線維芽細胞を創底に集積させるためには,陽極帯電している線維芽細胞を陰極側へ引き寄せることが必要となります.

 


 

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